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お礼と尾行と娼館と

時間がかかりすぎたな

もう夕方になってるとは

「ごめん那美さん、時間かけすぎたね」

「ううん、大丈夫神至くんすごい楽しそうにしてくれてたし私もじっくり見れたから」

「ありがとうおかげでいい経験が出来たよ」


気を使わせてしまったかな

本当はもっと回りたい店とかもあっただろうに

申し訳なくなってしまう


「気にしなくていいんだよ、私は楽しかったからね」

「顔に出てたかな」

「うん結構しっかり、いつもよりなんだか表情が暗く見えたからね」

「そんなに顔に出てるとはよく見てるんだね」

「そ、そうかな?神至くんいつもなんだか楽しそうだったり、澄ました表情が多いからなんかいつもと違うなぁって思っただけなんだけど」


少し慌てたように口早に喋る那美さんに笑ってしまう

「な、なんで笑うの?」

「いや、那美さんもそんなふうに慌てることもあるんだなぁって思って」

「私だって慌てることくらいあるよ?」

「そうだよね、俺も今日だけでも学園で見れない那美さんの色んな顔が見れて楽しかったよ」

「そ、そうかな」

夕日に照らされた顔が赤く色づいている

ここは他の区画と違って夕日がよく入る位置になるようだ。そんな事を考えいると那美さんが夕日の方向に向けて歩き出した


「最後に行きたいところがあるんだけどいいかな?」

「うん、大丈夫だよ」

商業区画の街に続くと反対側の道を進んでいく

舗装はされてるが周囲は森の様な感じになっている

木々の立ち並ぶ落ち着いた雰囲気だ


「この先に何かあるのかい?」

「島の端っこに繋がってる道でね夕焼けの綺麗なスポットがあるんだよ」

「へぇそんなところがあるんだ」

「すごいんだよ遮るものが何もないから綺麗な夕日が見えてね、周りもなんだかキラキラして見えるの」

「それは楽しみだね」


森の中という自然とは真反対の人工的な舗装道路を進む

鳥の囀りと羽音、偶に姿を見せる小動物に少しばかり癒される

こうしてみるとこの島かなり異質なんだな


四つの区画に分かれそれぞれが特徴を持った街並みを築き上げている

校舎を中心として学生に必要な建物が立ち並ぶ学園区画

敷地としては一番小さいが中世のヨーロッパ風の建物が多く建っている貴族区画

雰囲気こそ貴族区画に近いもののその性質が真反対の冒険者区画

そして現代の魔導技術を集めたような商業区画

その外れにあるこの森のような場所ほかの区画にもあるんだろうか


間違いなくジジイの趣味なんだろうけどもう少し統一感を持たせても良かったんじゃないかなと思う

まぁ自分の智的欲求を満たすためだけに作り上げたんだろうからこうなるのも納得も行く

納得はしても理解はできないけどな


「神至くん?聞いてる?」

「あっ、ごめん聞いてなかった。ちょっと考え事してて」

「良かった急に黙り込むからどうかしたのかと思っちゃったよ」

心配そうにこちらを覗き込む顔が俺の返事を聞いてホッとしたように笑う


「この島なんか異質だなと思ってね」

「うーんそうかな?」

「小さい島に時代というか在り方の違うものがたくさん詰め込まれているからね。統一感が欲しいなって思って」

「なるほど確かにそう言われてみればそうかも」

「面白いと思った物をとりあえず詰め込みました!って感じするんだよね」

「子供の時の宝箱みたいな感じなのかな」

「あ、いいねその表現なんかしっくりくるよ」

「私は人形とか集めてたなぁ。神至くんはなにか集めてたりした?」

「俺はどうだったかな、魔石とか集めてたかも」

「子供というより大貴族の収集みたいな感じだね」

「あはは確かに子供っぽくないかも」


本当は10歳より前の記憶がないから実際の所どうだったのかなんてわからない。当時の事を考えるとしょうがないとは思うが俺は一体どんな子供だったのだろうか

無い記憶に思いを馳せると体にある古傷が疼く、記憶はなくとも体は覚えているというこだろう


「あっ神至くんそろそろ森を抜けるよ」

那美さんのその言葉に視線が前に向く、震える体を見られなくて済みそうだ


森を抜けると夕日の光を強く感じ少し目を閉じる

手をかざし光を抑えながら目を少し開いてみると壮観だった

視界全てを覆うオレンジ色、結界によって地上と同じ状態を作っているからこそできる芸当だ

舗装された道の先は海岸沿いのフォトスポットや公園のように丁寧な造りになっていてランドマークと言ったらいいのだろうか捩じれた柱のような構造物も立っている

辺りを見回してみると先客がちらほらと離れた場所にいるのも見て取れる


「綺麗なところだね」

素直な感想が口から零れる

「でしょ?前はね一人になりたいときここに来てたんだ。」

「呪いが解ける前のお話かな?」

「うん、私あの頃自信もなくて、何も上手く行かなくて変な事ばっかり考えるようになってたんだ。だから何も考えないでただ綺麗な夕焼けを見るためだけにここに来てたの」

過去を憂うような少し物悲し気な話だが声色は明るい、何より夕日に照らされた彼女の横顔は笑顔で自信に満ちたものだった


「でも神至くんのおかげでそれも無くなって、今はただこの景色を楽しむだけにここに来るようになったんだ」

「そうなんだね」


少し前に歩き夕日と俺の間に立つようにして那美さんが振り向く

「そうだよ。君のお陰で私は変われたの。だからお礼になるかどうかはわからないけど、ここのこの景色を見せてあげたかったんだ」

「十分お礼になってるよ」

「良かった!気に入ってくれたら嬉しいな」


逆光で少し暗く見えるが満面の笑みでこちらを見てくる事にこちらも頬が緩む

風で少し舞う黒髪も夕日に照らされてキラキラと輝いて見える

その姿に見惚れてしまう

朝から彼女と会った時から震えていた俺の体はもう震えなくなっていた


「そうだ那美さんこれあげるよ」

「これは?」

見惚れたことを誤魔化すように空間魔法に収納していたプレゼントを取り出し那美さんに渡す

「今日案内してもらったお礼ということで」

「えぇ!お礼で案内したのにお礼なんてもらっちゃっていいの?」

「うん、お礼だと受け取りにくかったらただのプレゼントとして受け取ってもらえると嬉しいな」

「ありがとう!開けてもいい?」

「もちろん」


丁寧に包装を開けていく、包装袋の中には白い木箱入っていて先ほどのアーティフェクス魔工房の名前が彫られていた

「神至くんこれって」

「そうさっきパストスさんの所でもらった魔道具。俺が込めた魔法が入っているよ。そうだ包装持ってるから開けてごらんよ」

那美さんから包装袋を受け取り木箱を開けてもらう


「わぁ、すごい───」

魔石のみで加工された白銀のブレスレット

細身であるのに中心となる部分には月の装飾が施されていてそれを覆う様に花と蔓が巻き付いたようなデザインをしている

ブレスレットを腕に通し夕日に反射させながら眺める那美さん

美人は絵になるねこういうの


「コレ、本当にもらってもいいの?」

「もちろん、まぁただでもらったものだからあんまり恰好はつかないけどね」

「そんな事ないよ、この魔道具神至くんが魔法込めたんだよね?」

「そうだよ」

「どんな魔法を込めたのか聞いてもいいかな」

「うん。魔法の吸収と蓄積そして放出の三種類かな」

「ま、魔法を三種類も・・・さすがだね神至くん」

あれ?ちょっと引かれてる?


「魔石の性能が良かったからね3種類も込められたのはパストスさんの技量に寄るのが大きいよ」

「へぇそうなんだ・・・ありがとう!神至くん」

もう一度眺めた後に今日一番の笑顔でお礼を言ってくる

その顔が見れただけで満足かな


「さて、今日はそろそろ解散にしようか暗くなっちゃうからね」

「あの、神至くん!」

「ん?何かな」

「あの、あのね!もし良ければなんだけど」

先程よりも赤くなった顔にモジモジとした態度何か言いたいこと事があるみたいだ

「ゆっくり落ち着いてで大丈夫だよ」

「う、うん。わ、私と───「うおあ!押すなフィークス!」へっ?」

「ん?」

ドサドサという音が那美さんの言葉を遮り止めてしまった

振り返って見ると俺の後ろの茂みからからディルと深於さん、その上にフィークスが重なるようにして倒れ込んでいた。


わー、重そー


「おぉぉ重い、重いぞフィークス」

「ちょっとフィークスくん早く起きて重いぃ」

「プゴォ、ごめんプゴ」

ずっと着いてきてたのは分かってたけどこのタイミングで出てきたか


起き上がり体制を整えた所で那美さんから声が上がる

「なんでみんないるの!?」

「アハハー、奇遇ね那美」

「ホ、ホントダコンナトコロデアウナンテー」

「プゴォ」

みんな話し方がカタコトになっている

出たくて出てきたって訳じゃなさそうだな


「つけてたな?」

「なっ!?何のことかしら?」

分かってはいたけど一応聞いておく

変に声が裏返ったから意図的に尾行してたのは間違いなさそうだな、多方昨日の話を聞いて気になって着いてきたってところだろう


「もう!なんで着いてきてたの!」

「その2人を街で見かけて、えっと気になってね、つい。アハハー」

「ソウナンダヨー」

「ソウプゴネー」


嘘がバレバレすぎるなこの3人

その後那美さんに正座させられしっかり叱られているのを暫く眺める羽目になった

それと那美さんを怒らせるのは辞めようと心に決めた瞬間だった


「もうすっかり暗くなっちゃったね」

「そうだね、帰ろうかと言いたいところだけど、俺ちょっと寄るところあるからみんな先に帰っててよ」

「そうなの?」

「うん、寮も違うからね。送っていきたいところだけど今日のところはここで解散で」

「分かった、じゃぁみんな帰りながらまたオナハシしようか」

「まだするの!?」

「あぁ、足がまだ痺れてるんだけど」

「プゴォ、これ以上は堪忍プゴ」

「ダメ、まだ怒ってるからね」

正座させられて足が痺れているであろうみんながヨロヨロと立ち上がりゾンビのように那美さんに着いていく

姿が見えなくなるまで見送ると入れ替わるように茂みから2人出てきた

「アルテ、ティリファやっぱりつけて来たのか」

「ええ、と言ってもアナタ気づいてたでしょう?」

「デートの様子見をさせていただきました」

「それで?どうだったかな」

先程の3人と比べて堂々としてるな


「及第点としておきますわ」

「魔工房での時間が長すぎるように感じましたが、魔導具に魔法を込めていたのなら妥当かと、しかしデートで作業に没頭するのは如何なものかと」

「そっか勉強になるよ、アレは俺もちょっとやっちまったと思ったからね」

「それで?どうして送らずに残ったんですの?」

「私達が着いてきているのを確認するためではありませんよね?」

「あぁ、それはもちろん」

2人から今日のデートの評価を聞いたところで意識を切り替え真面目なものにする


「2人とも仕事だ、あと一人つけてきてる子がいるその子の足止めを頼みたい武力行使はなるべくなしで」

「あらそちらも気付いていましたのね」

「私たちから距離を置いてはいるようですが朝からずっといる方ですね」


話が早くて助かる

「そうだ、俺個人をつけてる感じだから多分Bクラスの子だとは思う」

「例の月末の試験ですわね」

「仔細は把握していますか?」

「グループ戦で勝ち星の多いクラスの勝利ってことくらいは」

「ふむアレのことは知らないようですわね」

「アレって?」

「月末の試験で勝利したクラスは負けたクラスに対して一つだけ要求できるんです」

「どんな事でも?」

「はい」

なるほどそういう事か

端末を握る手に少し力が入る


「俺は行くとこあるから任せていいな? 」

「何やら合点が言ったような顔をしてらっしゃいますが話は後で聞かせてくださいますね?」

「ああ」

「ではその様に」

それだけ言うと2人が消える

正確には消えたように見える速さで走り去ったんだが


2人が居なくなった後、一人で目的地に向かう

場所は商業区画と冒険者区画の間でこの学園島の端にある娼館だ


別に欲求不満とかじゃない

その道のプロに任せるのが1番早いと思ったからだ


何故娼館なのかと聞かれれば端末にカリオスから調査依頼の結果が届いたからという他ない

ディル達が説教を受けている間に届いたためデートに支障が無かったのが救いだ


結論から言えばBクラス担任の黒井は自分の請け負ったクラスの生徒を使い学内に格差を作り、イジメられ弱った生徒を手篭めにする。その後に娼館に売り飛ばしていたらしい

年間で数人だが黒井が赴任してからの年数からそこそこの数がいる事も分かっている

そして例の3人組は共犯と言ったところ。他の学年、それどころか卒業生の中にも共犯はいそうだがひとまずはアレだけとなっている


この学園が実力を重視しているが故に実力不足により退学した生徒の事は基本的にノータッチみたいだ

学園に入ってからという物やる事為すことの殆どが学生の領域を超えている。あんのクソジジイ後でぶん殴ってやる


ちなみに追加の調査は有料らしい、せいぜいボッタクられるとしよう



歩く事小一時間尾行は巻けたようだ2人に感謝だ

辿り着いた娼館は最高級もいい所の豪華絢爛な装飾に包まれた建物

店名は『性拳(カラミティ・フィスト)

自分の2つ名を店名にするのは如何ものだろうか、いやまぁ当て字の性に関しては違うんだが・・・


人通りは少ない、今のうちに入ってしまおう

中に入った瞬間強烈な香水の匂いに鼻が捩れる

キッツイな


「アラァ?随分と若いお客さんねぇ学生さん?君にはまだ早いわよぉ」

「どうも」

出てきたのはやたらと露出の激しい格好をした俺より少しばかり年上の女性

身体が震えるのを抑え込む


少し周りを見回して様子を見る、うん他に客はいないな

「それでぇ?このお店にどぉんな用事かしらぁ?」

「表の客じゃないんだごめんね」

「───へぇそう、からかってる?」

先程までの妖艶な雰囲気が代わり殺気を放つ、手を裏に回しナイフか何かを握っているのだろう、流石本職と言ったところか判断は早いが、殺気はもうちょい隠した方がいいかなぁ


ここは表では娼館裏では暗殺系の依頼を請け負っているところだ。とはいえ殺気マシマシなのに依頼したら首が飛びかねない


「ゲンコツババアいるでしょ?あれ出してもらえば分かるよ」

「あらぁ、ダメよそんな言い方したらタコ殴りじゃすまないわよ」

「大丈夫だよ」

ゲンコツババアという発言に毒気を抜かれた、というかその呼び方を知っていたのだろう殺気が収まり元の話し方に戻った


「マスター呼んでくればいいのかしか?」

「その必要は無いさね、よく来たねクソガキ」

「おうまだ生きてたかゲンコツババア」

俺が言い切るのと同時に音よりも早く拳が飛んでくるのを避ける

年齢に似合わぬ拳速に背中に冷や汗が流れる

良かったぁ避けられて


「相変わらずだな」

「お前さんの口の利き方もねぇ、養父に似て欲しくないとこばっかり似て嫌だねぇ」

「すっごぉいキミ、マスターの攻撃避けれるんだ」

「このクソガキに格闘教えたのは私だからねぇ、この程度能力を制限した状態でも避けられるさね」

「起こりが見えるからなそりゃ避けるさ、当たったら死ぬし」


前は攻撃の起こりすら見えなくて何度死にかけた事か───って何時のことだったか

失った記憶は消えたわけではないのだろう封印してるだけでもしかしたら何かのきっかけでパって思い出したりして

あと伝えてないのになんで能力制限してんの分かるんだよ相変わらずの化け物だなこのババア


「クソガキ何してんだい着いてきな」

「わりぃちょっとばかし昔の事を」

「何も覚えちゃいないだろうに、どうだい殴って思い出させてあげようか?」

「はははっ!冗談は年齢だけにし───うぉぉぉ」

ギリギリ捌ける速さの拳がミニガンの掃射レベルに襲ってくる。その全てが急所や関節、人の体を破壊する為に放たれている


「女性に年齢の話するんじゃぁないよ」

「へい」

「うわぁキミ命知らずだねぇ」

出迎えてくれたお姉さんがドン引きしているのが分かる、それもそうだこの化け物はコレでも元Sランクの冒険者なのだから


大人しく着いて行くと奥のテーブルに案内される

「座りなクソガキ、アンタ他の子がココに入らないように見張ってな」

「はぁい、じゃあね坊や」

お姉さんが出ていくとババアの声色が変わる


「さてどうしたんだい力人、私のところに来るなんて、あのクソ野郎をぶちのめすのかい?」

「すまん、どっちの事を言ってるのかわかんねぇんだけど」

「どっちもだよアンタの養父でも、学園のクソジジイでもねヒッヒッヒ」

「それは願ってもない話だけど今はどっちでもない、この辺にある他の娼館に着いてどれくらい分かる?」

「ある程度はねぇ、そういう話をするって事は遊びたい店でもあるのかい?」

揶揄うように言葉を投げてくる


「んなわけ、俺の状況知ってるだろうに」

正直体の震えが止まらなかったあのお姉さんを分けてくれたのは助かったな

口悪く煽ったのも体の震えを誤魔化すためもあった、おかげでただのヤバいやつで済む


「それであたしに何をさせたいんだい?」

「後でカリオスからリストを送らせるからその全員を買い取って欲しい、実費は後で全額俺が持つ」

「ほぉそりゃまた随分と粋なことを考えるねぇ何があったんだい?」

俺はBクラス担任の黒井の話をした

その全てを黙って静かにゲンコツババアは黙って聞いていた


「お前さん英雄かなにかになるつもりかい?」

「んな事しねぇよ面倒臭い、俺はただ気に食わないやつをぶちのめしたいだけだ、そこに人質なんて取られることがあると面倒だろ?」

「変な所の言い回しまで似て来たねぇ、まぁ分かったお前さんがそれでいいと言うなら手伝ってやるわい。この厄災魔拳(カラミティ・フィスト)のオルフィリア・()()()の力が必要ならねぇ」

なんで俺の周りはこう言う言い回しばかり好むかねぇ

ハゲ鬼がこの間やらかしたばっかりなんだぞ

まぁその辺は置いといて身内が学園にいることは知ってるのか?いや反応見る感じ知らないかもな


「ゲンコツババア1つ聞いてもいいか?」

「なんだい?改まって」

「アンタの身内、俺のクラスに多分いるんだけど知ってた?」

「・・・ホゥ」

眼光が鋭くなり瞳が赤く輝く

いや実際に赤くなってる訳じゃないがそんなイメージだな、同時に壁に少し亀裂が入るレベルで殺気を放出する


「脅しじゃなくて確認だよ、あの子が身内なのか確認したいだけだ」

「おっとすまないねぇ、歳とると感情の制限が上手くできないんだよヒッヒッヒ。クリムって名前ならアタシの孫だよ」

「あぁやっぱりかぁ、実技の手合わせした時に感じたあの立ち回りはそうだよなぁ」


数少ない魔拳士だからすぐに気が付いた

魔拳士とは深於さんと違い拳に直で魔法を纏わせて戦う特殊な戦闘スタイルだ。本来魔法を肉体に直接付与するやり方はかなりの負担を伴うのだが、普通は耐性というか才能を持っている人にしかできない

無理をすれば誰にでもできるが、その場合一撃を放った直後に拳が消えてなくなるだろう

それはともかく呪いの事は伝えない方が良さそうだなそんな事したら学園の一部が消し飛ぶ

・・・・一部ならいい方か?


「孫の事は任せてもいいかのかねぇ?」

「そこは問題ないけど魔拳に関してはアンタから教えてあげて欲しいかな。専門じゃないし俺」

「ふむ確かに、力人のスタイルは剣術ベースだし本気出したらアレだしねぇ」

「だろ?」


「ついでに才のありそうな子を摘んでもいいのかい?」

「娼館に引き抜くのはやめろよ」

「ヒッヒッヒ学生をこっちの道に堕とす程落ちぶれちゃいないよ、望む子がいるなら別だけどねぇ。魔拳の修行ならいくらでも受けてあげるから伝えときな」

「月末の試験は間に合いそうにないからその後でいいか?ジジイには俺から話通しとくし、実技講師やってるから特別講師増やすくらいいいだろ」

「あいよ、今日の話どっちも請け負ってやるさね」


「じゃあ頼むわ、俺はそろそろ帰るあんまり遅れるとアルテとティリファに怒られる」

「ココにいる時点で死ぬほど怒られるだろうに」

「大丈夫だろ、用があったのはゲンコツババアだし他に用はないどころか娼館としての利用なんて無理だしな」

「相変わらずだねぇ、うちの子一人摘んでくかい?今なら若い子いっぱいいるよ。出口見張らせてる子とかね」

「いらんいらん」

虫を追い払うように手を振り断る


「なんならアタシが相手してやってもいいんだよ」

「アホかババアふざけんな、俺に新しいトラウマ刻みつけるつもりか!」

「ヒッヒッヒ、アンタが健全に。とまでは行かなくてもちゃんと育ってるのが分かって良かったよ。いい男になったじゃないか」

「なんだよいきなり、まぁ褒め言葉として受け取っておくよ」

それだけ伝えると転移陣を用意してくれたので大人しく使わせてもらって寮に帰った


寮に帰った後俺はどこかの3人組のように正座でお叱りを受けることになった

ティリファに娼館の香水の匂いを嗅ぎ付けられそのまま言い訳する間もなくお説教が始まった

残念ながら今日俺は眠ることは叶わなそうだ


その後数時間一方的に叱られ続けて解放されたのは時計の針が深夜の12時ちょうどを回った頃だった


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