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仲間と塔とふたりの秘密

大鬼に案内され二階の応接室に通された

この部屋は案外匂いが漂ってこないから獣人の子たちも安心して滞在できそうだ


「それで登録出来たんだろ?どうせジジイに報告して終わりなんだからあのまま解散でも良かったと思うんだが」

「まぁそう言うなって学園に入ってからの事、噂程度は知ってるがお前がどんな感じに過ごしてきたのか聞いておきたくってな」

「別にいいけど面白い話なんざねぇぞ」


黄泉と大鬼に学園に入ってからの出来事を掻い摘んで説明する

初日のブサイク発言や殴り飛ばされて気絶した事

陽門のやつと試合をして呪いを解いたこと

その後の色々も話をした

しばらく俺の話を黙って聞いていたが一通り話し終えたところで黄泉が口を開いた


「私の可愛い那美に向かってブサイクなんて言ったのね?死にたいのかしら」

「その件に関しては俺も悪いと思ってる」

「あら、随分素直なのねまぁ理由は察しが着いてるから私は別に良いわよ、那美は許してるの?」

「うん、私の方は謝ってもらったから良いかな、教えてもらった常識がおかしかったみたいだし」

「なるほどね、那美が許してるならいいんじゃない、深於ちゃんも一発かましてくれてありがとうね」


コイツが殴り飛ばされるところ見たかったわと付け加えてやたらニヤニヤしている

俺がやられるとか滅多に見れないだろうか見たかったと言うのは本心なんだろうが、なんだろう若干含みのある目を向けてくるのは気になるな


「いえいえ、これからもまたなにかあったらキツいのお見舞いしてやりますよ」

「ええ、全力でお願いするわ」

「そうならないよう気を付けるよ」

「それでお前らこれからどうするんだ。俺としちゃあ力人の話が聞けたから満足だし、ノーデンスのやつから許可は降りたというか力人に至っては自由にしていいって話だぞ」

手元にある端末をたまに確認していると思ったらジジイと連絡を取っていたのか

皆のクラブ活動としての登録ができたのは何よりだがそれよりも


「俺何も聞いてないんだが」

この一言尽きる

ギルドに来る前にじじいのところに行ったのも支部長がどんな人物なのか確認したかったのと、ここにある塔について事前の知識が欲しかったから話を聞きに行ったのだが

「そりゃあお前ノーデンスのやつが自分から何か話すなんてまずないだろう、自分の知識を蓄えることがあっても誰かに提供する事なんてまずねぇんだから」

俺に関わることなんだから話しておいていいだろと思うが確かにそういう奴だったなアレ


「ハァ・・・」

呆れというかなんというか、学園生になって自分の気の緩みを常々自覚することばかりだ

知らないうちに呪われでもしてるんじゃなかろうかと思うくらいだ、自分の中に呪い核は見えていないからそんな事がないのは分かっているがあまりにも不甲斐なく思う


俺が自分に呆れているのを察して否か大鬼から声がかかる

「お前の事だどうせこの後塔に潜るとか言い出すんだろ?ならその前にこいつらにギルドや塔の説明くらいしてやったらどうだ」

「ん、確かにそうだな」

「足りない部分は私たちで補足はするけどあなたの事だもの大丈夫でしょう?」

「あぁ大丈夫だ、伊達に何年も冒険者やってた訳じゃないからな」


そういう訳で置いてけぼりになってしまっていたみんなにギルドや塔についての話をすることになった


「それじゃあまずギルドについての説明からだよね」

「ああ頼む!」

ディルを筆頭に皆興味津々であるようだ

やけに準備が良いな、説明用の魔道ボードまで用意してくれている

・・・見るからに新品なのは用意したけど使う機会がなかったのか?頭に過ぎった余計な考えを振り払い説明に戻る


「まずギルドの役割なんだけど基本的には冒険者の登録と管理。そして依頼を出している、依頼内容は主に塔の中にしか存在しない植物や魔物素材の収集だったり魔石の回収だね」

「その依頼って誰が出しているのかな?」

那美さんからの質問だ


「依頼主は貴族だったり企業だったり色々いるけど素材を求めている人からギルドを通して依頼という形で業務委託してる感じだね」

「なるほど、その依頼の受注だったり報告とかってどうしたらいいのかな」

これは宮本くんからの質問


「依頼の受注に関しては特にないよ、塔の中で集めた素材をギルドの買取カウンターの方に持っていけば自動的に処理してくれるよ」

買取金額に上乗せされる感じだねと付け加える


「依頼に関しては基本的に早い者勝ちだから朝からこもってる冒険者に取られるのはそういうものだと割り切ってもらった方が良いかな」

「依頼は一般人から来ることは無いのか?」

「あるよ、企業や貴族に比べて上乗せされる金額は少ないけどそういうの優先で仕事してる冒険者もいるね」

依頼や買取周りはこの程度だろうか


「ギルドのランクについてだけどこれは到達した層だったり、倒した魔物のランクに応じて少しずつポイントが加算されて一定以上集まったらランク昇格していくよ」

「はいは〜い!ランクってどこまであるの〜?」

「気になるよね、皆は登録したばっかりだから最低ランクのEからスタートになるそこから上がって行って最終的にはSランクに上がるようになるかな」

「ほえ〜そうなんだ」

「一応例外としてEXランクっていうものあるけどこれは特殊な力を持った人が割り当てられるランクで世界に7人しかいないんだ」

「その特殊な力って?」

(ことわり)の力って呼ばれてるよ、その気になれば世界の法則その物を歪めるほど大きな力を持ってるみたい」

「神名とは違うんだな」

「うん、神様の名前から力を引き出す神名解放とは違ってその理ごとに違った力を持ってるよ」

「そんな人がいるのか世界は広いな」


大鬼と黄泉がやけにニヤニヤしながらこちらを見ている・・・鬱陶しいな

大人ふたりの顔がうざったいので別の話題に変える


「倒した魔物についてだけど倒した魔物の一部を提出すれば討伐証明にはなるんだけど、空間魔法か魔道具のアイテムポーチに倒した魔物自体を入れて買取カウンターに持っていけばお金に変えてくれるし、欲しい素材があれば解体屋に持っていくと素材と肉に分けてくれるよ」

「へぇその肉食えるのか」

「魔物の種類にもよるけど食べる事もできるしなんなら皆食べたことあるんじゃないかな」

レストランなどから肉系依頼が来るくらいだから食べた事ある人もそれなりにいる事だろう


「ギルドについて他に気になることとか質問はあるかな?」

「ありがとうだいたい分かった」

「一通りの説明はしてもらったから大丈夫プゴ」

「本当に冒険者だったのね、関心するわ」

「あはは、そんなに冒険者っぽくない?」

「変なところで常識が抜けてるからじゃないかな」

「ちょっと変わった編入生って感じがするかな」

「他の学園生と違うって言うのは冒険者っぽいよね〜」

「それを言われるとなんとも言えない気分になるね」

割と散々な言われ様だが否定できない自分がいるのが辛い所だ


「ギルドについてはこれくらいかな、次に塔についての説明をするね」

「待ってました」

「冒険者って言ったらやっぱり塔だよね」

塔の説明を始めようとするとディルと宮本くんがかなり乗り気だった、説明しがいがあって嬉しい反応だ


「ダンジョンって一般的に呼ばれてるのはみんな知ってるとは思うんだけど、その土地や環境によるものなのか姿形が全然違うんだ」

「塔と呼ばれる事に何か理由があるのかな?」

「それはこの学園島にある一番最初のダンジョンが塔の形をしているからだねある日突然現れたこの塔に呼応するように様々な土地にダンジョンが現れた、そこから(ダンジョン)と呼ばれるようになったのは知ってるね?」

「世界史でも有名な話だよね」

「そう、この塔は基本的に階下に降りていく仕様になってる空間が捻れてるんだろうね、どういう原理かは未だに解明されていないけど多分ここの塔も例外じゃないと思う」

「俺も一回潜ってるが上に伸びてるのに降りる作りになってるな、聞くだけだとおかしな感じに聞こえるだろうが中に入りゃあ気にしなくなるとおもうぞ」

実際今まで俺が潜ったことのある塔も皆階下に降りる仕様になっていたがここもそうなっているようだ


「塔の中についての話で世間的にもよく知られてるのは魔物が出る事だね」

「どんな魔物がいるのかな?」

「一般的なところだとゴブリンやオーク、オーガと言った人型の魔物だねそれ以外だとウルフやドッグ、ボアの四足歩行型の魔物がいるね」

他にもたくさん種類がいるため口頭で説明するには数が多すぎるという点も話しておく


「さっきのギルドの話にもあったみたいに塔の中でしか取れないものとかあるんだよな?」

「うん、特殊な薬草類だったりミスリルと言った鉱石、それ以外だと魔物からしか手に入らない魔石があるね」

「なんで塔の中にしかないのかな〜?」

「それは元々塔が異世界のものだからと言われているよ、この世界になかったものが急に現れた訳だからね」

約1000年前に異世界とこの世界が繋がってしまい以降魔力と呼ばれるものが生まれた塔が現れたのはそれよりも少し後という話は聞いた事はあるものの実際にどのくらいの時期からあるのかは定かではない

まぁ色々な事があっていまに至ると言うのは世界史で習う一般教養の範囲だろう


「外と塔の中の違いってあるのかしら?」

「そうだなぁ、大きく違いがあるとすれば塔の中は完全に別世界になる事と大気中のマナの量かな」

「具体的にはどう違うのかな?」

「塔の中が完全に別世界という話については層によっても変わるから一概にこうとは説明出来ないんだけど基本的に五層ごとに環境が変わるよ草原が広がる層だったり極寒や獄炎の層もあるんだよ」

「なるほどな、マナについてはどうなんだ?」

「マナについては層の環境によってマナの濃度だったり強い属性が変わったりするね、たとえばさっき話した極寒の層なら水と火の属性が強くなるよ」

これはまた実際に潜った時に説明しないと上手いこと理解ができないだろうからその時説明しようか


「はぇ〜色々あるんだねぇ〜」

「やっぱり実際に潜ると違うもんなんだな、教官からたまに聞く話とは深みがなんか違うな」

アンリの説明だとそう思うのがしょうがないところもあるだろう説明下手ところはこういう所でも出てるな


「それとコレが一番大事な話になるんだけど塔の中で死んだ場合について」

「この世界と何か違うのか?」

「うん、この世界で死んだら遺体が残るでしょ?でも塔の中で死んだ場合は違うんだ、塔に取り込まれて遺体すら残らない、もちろん取り込まれる前に担いで逃げれば遺体は回収出来るけど、実際はそんなことしてる余裕なんてまずないからね」


空気が重く沈んでいくのが分かる

それもそうか楽しく話していたのに急に話題が重苦しいものになったのだこうなるのも当然と言える


「あの、神至くん程強くても守りきれない事とかあるのかな?」

那美さんからの質問

この空気の中、口を開いてくれたことをありがたく思える


「ある・・・あったよ。目の前で取り込まれるのを見た事がある、だから皆にはそうなって欲しくない」

「そうなんだ」

今は俺はどんな表情をしているのだろう

話を聞いてくれているみんなが少し心配そうにこちらを見ている

しばらく沈黙が流れるがそれも長くは続かなかった


「でもまぁ大丈夫だろ、俺らだってそんな簡単にやられやしないさ、なぁ!」

「そうだね、あれだけ扱かれてきたんだそう簡単にやられたりはしないよ」

「何があっても那美は守ってみせるわ」

「私も頑張るから」

「プゴ僕がいればみんながやられることはないプゴ」

「私もやるよ〜リキリキに負けないくらい強くなるからね〜」


皆んな思う所はあるのだろうがそれを奮い立たせて声を上げる

本当にこのクラスに入れて良かったと心から思う

今までがどうだったとか俺には分からないがこの場にいるみんなが楽しそうにしてくれるのだ、それに応えられるようになりたいとそう思う

もし何かあれば力を使えば良い。そう心に決めてこの後の事を皆と話し合った




「へぇ、聞いてた感じよりいい感じね」

「そうだなあいつ(ノーデンス)なりに気を回して人を集めてたんだろ、聞いた感じクラスの仲も悪くは無さそうだしこのまま順調に卒業出来れば良いな」

部屋の隅で大人二人が話し合う

子供たちの様子を見る目は優してげで期待を持つような眼差しだ

どのような期待を込めているのかは定かではないものの昔の仲間を思っている事は確かだろう

半年前に心を砕いた少年の新たな仲間との出会いに今はただ安らかで穏やかな時が流れる事を祈るばかりの大人たちであった


─side那美─


「それじゃあそろそろ塔に行こうか、あんまりゆっくりしてると夜になっちゃうからね」

彼の声に皆が賛同し移動を始める


「あ、力人待ちなさい少しだけ話があるの」

「わかった、皆先に塔の入口行ってて」


各々返事をして応接室から出ていく

私も皆について行くがふと気になることがあり扉の前で姉を待つことにした

「那美どうかしたの?」

「うん、ちょっとお姉ちゃんに聞きたいことがあって」

「そうなの?私は先に行っても大丈夫?」

「大丈夫、神至くんと一緒に行くね」

「分かった後でね」

手を振りながら立ち去る深於ちゃんにこちらも手を振る

部屋に戻って姉に話をしようと扉を少し開くと中の会話が少し聞こえて来た

盗み聞きするつもりはなかったが少しどんな話をしているのか気になってそのまま聞き耳を立ててしまう


「それで今のところ力は使ってないみたいだけどどうなの?」

「今んとこ大丈夫だな力使うほどの相手いないし、強いて言うなら頭が少しぼーっとしてるな、いつもより頭回ってない感じがある」

「お前最後に力使ったの何時だ?」

「半年前だな・・・あの一件以降使ってない」

力ってなんの事だろう半年前だと学園に来る前だろうし何かあったのかなと扉の外で静かに話を聞く


「仮に使ってなくても影響は無いと思うけど無理に制限しすぎるのも良くないわね」

「今まで力を使ってブーストすることはあっても制限するなんて事なかったからな、意図的に力を抑えた影響で何かあんのかも」

「力については俺に言えることはねぇが一回思い切り発散してもいいんじゃねぇか?ストレスと一緒で溜め込むと良くないだろ多分」

「かもなぁ」

「まぁあんまり気負うことなく過ごせばいいだろ会話自体は成り立ってんだ問題ないんじゃねぇか?」

「そうね、もし不安があるならノーデンス様に聞いてみてもいいんじゃないかしら」

「だな、治らなそうなら相談してみるわ」

「ガッハハお前がそんな事になるなんて珍しいから俺としちゃあ面白いがな、まぁ頑張れや世界に7人しかいない理の力その内の■の理を持つEXランク冒険者なんだからな」


「えっ」

肝心な所が聞こえなかったがEXランク冒険者というところはしっかりと聞き取れてしまい声を出してしまった

「あら?そこに誰かいるのかしら」

姉に気付かれてしまい扉を開ける

私が応接室に入ると神至くんと姉が驚いた顔をしていて支部長さんはアチャーという感じの顔をしていた


「聞こえてた、かな?」

「ごめんなさい、盗み聞きするつもりはなかったんだけど・・・」

「うん、大丈夫だよ悪いのこのハゲだから」

「おい待て悪いの俺か!?・・・俺だよなぁ」

「変にカッコつけた言い回しで不用意に話すからよハゲ鬼」

「ひでぇなお前ら」

「まぁ聞こえてしまったものはしょうがないよ、俺は別に隠すつもり無かったし」

「まぁ気になるのも無理はないわね、説明してあげたら?」

「そうする、那美さん塔に行きながら話をしようか」

「うん」


唐突に耳に入ったEXランクのせいで姉に聞きたかった事など飛んでしまい申し訳なさと彼のランクの事で頭がいっぱいになってしまった




ギルドから出て夕日に照らされる道をふたりで並んで歩きながら神至くんはゆっくりと口を開く

「俺のランクの事気になるよね」

「うん」

「俺はさっき話をした理の力を持っててねそれでEXランクになったんだ」

「そうなんだ」

「ジジイが言うには生まれつき持った能力らしいけど俺は覚醒が遅いらしいからよく分からないんだよね」

少し困ったように笑いながら話す彼の横顔は、あの時教えてもらった常識がおかしかった話をした時と何も変わらない様に見えた


「どんな力なの?」

「詳細についてはごめん、話せないかな」

「そうなんだ」

そう話す彼の顔は特に何かを考えているような感じではなく、本当に事実を淡々と説明している感じだった


「驚いたよね、急に編入してきたやつがおかしな力持ってるんだから。変だよね」

「驚いたけど、変だとは思わないかな」

「そうかい?」

「うん、ちょっと変わってるなって思う事もあるけど短い期間だけど一緒にいて、とても優しい人なのは知ってるから」

「ありがとう」

話していて私は何を言っているのだろうと思う

私を呪いから解放してくれた、それは事実だ。急に綺麗とか言われてびっくりしたりもしたし、まだなにか隠している事もあるのだろうけど、それでも彼が優しい人だと私は思う


「ランクのこと皆には話さないの?」

「うーんどうしようか、俺としては別に話しても良いとは思うけど」

笑顔だけど少し困ったような顔で話す彼を見る

何度も見ていて思う、どこか懐かしさを感じるその顔に心の底が少し温まる


本人は気付いていないが力人といる時那美は少し表情が柔らかくなる、どこか愛おしそうにする顔は傍から見れば恋する乙女であろう

知らぬは本人ばかりなりというやつだ


「学園長は話す必要ないって言ってたし話さくてもいいんじゃないかな」

「それもそうだね、じゃあふたりの秘密って事で」

自分でも言ったことにびっくりしたが、それ以上に満面の笑みでこちらに笑いかける彼の言葉が私の心に染み渡る

ふたりの秘密という言葉に胸がいっぱいになりとても嬉しく感じた


「ふふっなんかいいね、ふたりの秘密って」

「そうだね、俺もそう思うよ。誰かと秘密を共有するのは初めてだよ」

「私も誰かの秘密を共有するのは初めてだよ」

ふたりだけの秘密という事ではないがクラスメイトには内緒の話。私に取っても初めての事でそれはとても気分が良かった




今はまだ自分の想いに気付くことはない

いつかこの気持ちに名前を付けて理解する時が来るとすればそれは彼女に取ってとても心躍る暖かなものだろう、想われる側に取って辛い過去を引き出す物だとしても


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