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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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 ワクワクしているジェットと、退屈そうなモアレ。対照的な2匹に肩をすくめると、ジャスパーは首を振って考えを振り払う。



「これからスコーチアに精霊として必要なことを教える。ジェットとモアレも手伝ってくれ」


「ピピッ!」


「きゅあ?」



 ジェットのやる気満々すぎる勢いと、モアレの気の抜けた声。若干の心配を抱えながらもジャスパーは早速蹄に魔力を溜める。



「ジェット、【魔力阻害ボックス】を開けてくれ。我も入る。我が入ったら、ジェットの糸でぐるぐる巻きにしてくれ。それからモアレは糸ごと我らを食べろ」


「きゅ? きゅ!」


「馬鹿。消化して良いわけがないだろ。ジェマが悲しむ。お前なら、最悪我とスコーチアの魔力が暴走しても魔力を吸収できるだろ」


「きゅー」



 つまらなそうにぺちゃぁっと床に伸びるモアレ。ジャスパーはしれっと無視してジェットに視線を送る。ジェットは頑丈に固めていた糸を解いて、【魔力阻害ボックス】を解放する。



「よし。入るぞ」



 スコーチアが一瞬動こうとしたものの、ジャスパーは素早く中に入って腕を振り下ろす。その合図にジェットが再び強固な糸でぐるぐる巻きにしてしまうと、それをぽいっとモアレに向かって放り投げる。



「おえっ」


「精霊ならこれくらい耐えられるだろ」


「……バケモン」


「あ?」



 ジャスパーの苛立ちに満ちた声はモアレの腹の中に消えていった。



「ピピィ?」


「きゅあー」


「ピッピ!」



 中の会話をモアレがジェットに伝える。ジェットもモアレも、詳しく知っているわけではない精霊のこと。流石にモアレも興味を持った様子でどこにあるか分からない耳を腹に傾ける。



「まず、精霊というのは自然発生するものだ。人造されたものも、まあいるが。そういうのは大抵短命で生きて行くには障害がある」



 人造された精霊といえば、ハーフドリュアスのリアンにジェマとジャスパーは出会っていた。囚われた精霊と狂った魔術師の男の間に生を受け、身体の造りは人間と同じでありながらドリュアスの使命をその身に抱えていた。


 普通は食事をせずに宿った植物の栄養を分けてもらう代わりにその生命を守ることで共存する精霊であるドリュアス。宿主である植物を守る使命を負いながらも、リアンは人間と同じように食事をしなければ生きていけなかった。


 ジェマの道具を受け取って以来、リアンは店にやってくることはなかった。それが元気の知らせなのか、何か起きたのか。それは分からない。リアンには、ドリュアスには。それぞれの生きる姿がある。過干渉をしないことは道具師として守るべき境界線だった。



「精霊は普段、魔力を使って生きている。だが、自分が宿った宿主の危機には自身の魔力を使って宿主を守ろうとする。契約者がいる精霊は、そういうときに契約者の力を借りる。まずは魔力を。足りなければ、生命力をな」



 ジャスパーは思わず自らの蹄に視線を落とす。ジャスパーは、二度ジェマに命を救われた。一度目は、契約をしたとき。遠方の大地震で崩壊し過ぎた大地を守るために魔力を失い、そこをジェマとスレートに救われた。


 二度目はオレゴスで起きた戦争。最初は軽く倒れただけだった。けれど戦況が悪化すると魔力欠乏が悪化してジェマが【スプーフィングサファイア】を外して全魔力を流し込まなければ命が危ういほどの状況になった。そして最悪なことに、ジェマはジャスパーのために戦地へと赴いてしまった。



「お前が本来守るべきは、宿主である魔法剣イグニアだ。だが、魔法剣イグニアにお前が宿ることができたのは、オハイアリィの想いに起因している。契約を持って生まれた精霊は、本能的に契約者を守ることが使命に追加される。それはスコーチアも変わらなかった。が、それを曲がった方向へ考えてしまったことが良くなかった」


「じゃ、じゃあ、俺はこれから、オハイアリィの魔力も生命力も吸わないで、どうにかオハイアリィと魔法剣イグニアを守るってことか?」



 不安げに揺らいだスコーチアの表情に、ジャスパーは真剣な表情で頷く。



「ああ。そうだ。幸いオハイアリィは冒険者を退いている。本来スコーチアはオハイアリィの戦闘中に魔法剣イグニアが破壊されそうになったときにその破壊を防ぐことが使命なはずだからな。今後過剰な力を使う必要はないだろう」


「俺は、使命を間違えた?」


「そうだな。契約者を守るよりも強くしようとした精霊なんてなかなか聞かないぞ」



 スコーチアは少し考え込んで、顔を上げるとニッと笑う。



「つまり、俺は特別?」


「あー、はいはい。そのポジティブさはお前の良さだな。じゃあ、そのポジティブな思考のまま、特訓に入るか。魔力を無駄に使わない戦い方を知れば、オハイアリィを守れる」


「ん? 結局オハイアリィのことは守って良いのか?」


「お前は、話を、きちんと聞け」



 スコーチアの使命は魔法剣イグニアを守ること、そしてオハイアリィを守ること。要約してジェットに伝えるモアレの方が正確に理解していた。ジェットもなるほど、と納得してわくわくしながらモアレの周りをちょこまかと歩き回っていた。



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