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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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 シヴァリーは頭を掻いてカポックに視線を向ける。カポックも眉間に皺を寄せてぷるぷると跳ねているモアレを見つめている。



「グラトニースライム。ハナナから聞いたことがある。一国を滅ぼすだけの力を持つ強力な魔物だと。それが、どうしてジェマの家族に?」



 シヴァリーは剣の柄に手を置いたままモアレを見つめる。モアレは余裕綽々という様子でゆらゆらと揺れている。ジェマはそのぷにぷにした身体をつついて微笑む。



「襲われたときに、魔力を吸われそうになって。対抗して魔力をぶつけていたら、契約成功したんです」



 かいつまみ過ぎた回答に、シヴァリーはポカンと口を開いたままカポックを見る。カポックはゆっくりと首を横に振った。



「ジェマのことを理解することができないだろ」


「まあ、それもそうか」


「ええ、私は普通ですよ?」



 拗ねたように頬を膨らませるジェマに、シヴァリーは頭を掻く。



「魔力を食らって自分のものにする伝説の魔物に魔力量で勝つやつは普通じゃないと思うが」


「それは、ほら。父の娘ですから」


「契約者はジェマほど化け物ではなかったぞ」


「ジャスパーも酷い!」



 ぷんすかするジェマに、ジャスパーはそっと頭を撫でる。



「嘘だ。契約者とジェマはよく似ている。殺すより仲間にする、仲間は絶対に守る。そういうところは本当にそっくりだ」



 ジャスパーの優しい手つきに、ジェマの頬が緩んだ。そして満面の笑みで自慢げに胸を張った。



「ふふ、ありがと!」



 その無邪気な表情に空気が緩む。ハリスはその表情から目を逸らすと、窓の外を見つめる。ジェマはその仕草に気が付いてハリスの手を握った。



「どうしたの?」


「ううん。少し、お父さんのことを思い出したの」


「そっか」



 互いに失った、大切な父。父への想いはそれぞれ。けれどもう二度と会うことができないことは同じ。2人は手を握り合い、空を見上げた。



「もし、骨が見つかったら、どうしたい?」


「お墓、作ってあげたい」


「もし良かったら、家の庭の、お父さんのお墓のそばに建ててもいいよ。もう、ハリスのお家だから。ハリスが自分のお家のそばに建てたかったら、一緒に行っても良いし」



 ジェマの言葉に、ハリスは小さく笑う。



「ジェマのお父さんのお墓の隣が良いな。お父さんとお母さんといつでもお話できるし、お父さんとお母さんも、ジェマのお父さんとそばにいたら、寂しくないでしょ?」


「ふふ、そうだね! みんなで家族になりたいね!」



 ジェマの満面の笑みに、ハリスは大きく頷く。2人の嬉しそうな笑顔にシヴァリーはフッと息を漏らしてジャスパーにそっと身を寄せる。



「ジェマ、本当に楽しそうだな」


「ああ。ハリスはジェマにとって2人目の貴重な友達だからな」


「モアレのことは驚いたがな」



 カポックはモアレをつんつんとつつく。モアレはなんだか楽し気に跳ねてカポックの周りを回って遊ぶ。



「カポックは魔物に好かれるなぁ」


「ジェットはまだしも、モアレはそんなに人に懐く魔物じゃないぞ。俺が1000年前に地下深くに封印した魔物だからな」


「え?」



 シヴァリーの喉から漏れた潰れたガマヌラのような声が漏れた。その声にジェマとハリスも顔を見合わせてクスクス笑う。シヴァリーは決まり悪そうに頭を掻くと、肩をすくめた。



「仕方ないだろ。ジャスパーがびっくりさせるんだから」


「ん? 何がだ?」


「いや、だって、1000年前のグラトニースライムによる事件といえば、隣国を荒れ地に変えたと言われている大事件だ。歴史の教科書にも載っているくらいだぞ?」



 教科書、なんて言われても。この場でシヴァリー以外読んだことがある人はいない。互いに顔を見合わせて首を傾げる。シヴァリーはそうだった、と頭を抱える。



「と、とにかく、とんでもない事件で、街の大半の人は知っているような事件だ。そのグラトニースライムを地中に封印したと言えば、その凄さは分かるだろ?」


「それを解決したのがジャスパーなんだ! 凄い!」



 ジェマは目を輝かせ、ジャスパーの声が聞こえていないカポックとハリスも頷く。ジャスパーは照れ臭そうにふんっと鼻を鳴らして前脚を組んだ。



「当たり前だ。我は太古の精霊だ。力も強くなければ世界の均衡を守ることもできない。そうだろ?」



 ジェマはジャスパーの小さくて広い背中を尊敬の眼差しで見つめる。ジャスパーはジェマの視線に、ぽんぽんと頭を撫でる。



「そんな我が封印するしかなかったグラトニースライムを、家族にしてしまったジェマはもっと凄いぞ」


「そう、かなぁ。モアレが良い子なだけだよ」


「いや、一国を壊滅させた魔物が、良い子……」



 カポックの思わずといった呟きにシヴァリーは思わず吹き出した。そしてひとしきり笑うと、カポックのそばにいたモアレをつつく。モアレは大きく口を開けて、その手をかぷっと咥えた。



「なっ!」



 シヴァリーは咄嗟に手を引くと、手がまだくっついていることに安心したように息を吐いた。



「良いなぁ、モアレに甘噛みされるなんて……」


「グラトニースライムの甘噛み……」



 カポックはその単語の強さに天井を見上げて呆然とした。



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