表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/49


 ハリスはそわそわしながらも、嬉しそうにはにかむ。ジェマはその手をギュッと握り直して笑う。



「良かったね! 私からもラルドに頼んでみるよ」


「まあ、ジェマの頼みなら余程のことがない限りラルドが断ることはないだろう」



 査定は別として、だが。シヴァリーは思わず苦笑いを浮かべる。仕事が関わるとテコでも動かないほどの生真面目になるラルドも、ジェマのお願いには弱い。



「ではそちらはシヴァリーとジェマさんが交渉するとして、ハリスさんはこれからジェマさんの家に住むんですか?」


「その予定です。うちならご近所さんもいませんし、万が一誰かにバレるっていうこともないと思いますから」



 ジェマはどこか悲し気に言う。ハナナはそんなジェマの心情を察するようにジェマの頭をそっと撫でた。



「ジェマさんはハリスさんのことが本当に大切なんですね」


「だって、お友達ですから」


「そうですね。ジェマさんのお友達ということは、とっても優しい方なんでしょう。それがいつか、一人でも多くの人に伝わると良いですね」



 ハナナの言葉にジェマは大きく頷いた。無鉄砲にその過去を晒してハリスが傷つくことは嫌でも、ハリスのことを認めてもらえないことや、魔石のことがバレてハリスが害されるようなことになれば。ジェマは守り切れなかった自分のことが許せなくなる。



「一緒に守りましょうね」


「はい! よろしくお願いします!」



 ハナナの穏やかな笑みに、ジェマは安心したように声を弾ませる。シヴァリーはピラッと一枚の書類を持ってくると、それを机に置いてハリスを手招く。ハリスが示された席に座ると、シヴァリーはペンを差し出した。



「これが転入届だ。さっき調べたがコマスで住所登録はされていたから、こっちに転入する手続きだけしておく。で、だが。ハリス。両親も存命ってことになっているが、居場所は分かるか?」



 その質問に、ハリスの表情が曇る。シヴァリーはその様子に眉を顰めると、ガシガシと頭をかいた。



「分かった。頷くだけで良い。ハリスと同じように、研究所に捕らえられたのか?」



 ハリスは、握り締めた拳を震わせながら小さく頷く。



「二人がどうなったか、知っているか?」



 また、頷く。



「生きているか?」



 拳が濡れる。ポタポタと零れ落ちる涙に、シヴァリーは天井を見上げた。



「ハリス、念の為血液の採取をさせてくれ。こちらで持っている研究の犠牲者の情報と照合したい。今後の照合でもし血縁関係が証明されたら、骨の一部だけでも返してやれるかもしれない」



 ハリスは肩を震わせて嗚咽しながら頷く。ジェマはその肩を抱いて背中を擦る。シヴァリーはカポックに視線を向けて頷いた。


 ハリスは涙を拭って転入届を記入すると、ペンを置いた。その間にカポックが用意した血液採取用の魔石付与魔道具。チクリと細い針で腕を刺してハリスの血液を採取すると、カポックはシヴァリーに目配せをした。



「ハナナはその血液を持ってバイオレット男爵邸に向かってくれ。現在集まっている遺体と照合してくれ」


「分かりました」



 ハナナはジェマに視線を向けたものの、血液が入った小瓶を手にすぐに退室した。



「ジェマを家に送りたかった、って顔だな」



 シヴァリーがニヤリと笑うと、ジェマはおっとりと微笑む。



「ハナナさんはいつも優しいです」


「そうだなぁ」



 シヴァリーが堪えきれずにお腹を抱えて笑うと、カポックは額に手を当ててため息を漏らす。その様子を見ていたハリスは、ぽんっと手を叩くと微笑ましそうにジェマを見つめる。



「ハリスはこんなに簡単に気が付くのに、ジェマは全く気が付かないんだからなぁ」



 ジャスパーは静かに独り言つ。その遠い目に、ジェットはピッピッと楽し気に鳴く。



「さあ、俺とカポックで送ろう」



 シヴァリーが立ち上がると、カポックは無表情のまま頭の上でぴょんぴょん跳ねているジェットを撫でる。纏っている空気感がふわふわとしていて、ジェットと一緒にいることが嬉しくて仕方がない様子が見て取れる。



「ほんと、ジェットとカポックさんは仲良しですね。髪がさらさらで心地良いみたいですよ」



 ジェマの言葉に、カポックは思わずといった様子で自分の髪に触れる。さらさらとした黒髪。ジェットがそこに座り込んでしまえばすっかり隠れて見えなくなる。が、嬉しくてぴょんぴょん跳ねるから丸見えだ。



「あ」



 ジェマが声を漏らすと、全員の視線がジェマに集まる。ジェマの影が、うようよと蠢く。シヴァリーとカポックが咄嗟に剣を抜こうとするのを、ジェマは止める。



「驚かせましたね。大丈夫です。私の新しい家族ですよ」



 ジェマの言葉に応えるようにぴょーんと飛び出してきたぷにぷにぷるぷるのモアレ。その真っ黒な身体に、シヴァリーとカポックは開いた口が塞がらない。



「この子はモアレです」


「ス、スライム……」


「グラトニースライムです。周囲の魔力を吸収して、その魔力を私に分けてくれるんです」


「そ、それは心強い、か?」



 グラトニースライムという単語にシヴァリーの頬が引き攣った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ