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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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 ジャスパーはジェマの肩に腰掛けると、ジェマがハリスにジャスパーの言葉を伝えるのをのんびりと待ってから話し始める。



「ハリスが向こうで弱い魔物から強い魔物まで討伐しただろ? そうなると大型で強い魔物はローテンドの周りに逃げ込む。ホールペタリスアのような小型の弱い魔物は、その近くの大型で強い魔物が入れない場所に身を潜めれば安全ってわけだ」


「なるほど」



 再びジェマが通訳すると、ハリスは目を丸くした。そして照れくさそうに笑う。



「そっか。ジェマの役に立てたんだね」


「うん! ハリスのおかげだよ! ありがとう! これが枯れてしまったらいけないね。ジェット、これを冷やすことはできる?」


「ピィ!」



 ジェットは1本の脚を上げる。そしてゲッコウソウが枯れないように糸で包んで冷気を当てる。闇属性魔法を冷蔵庫に使うなんて、普通であればかなり高価なもので平民には手が出せない。それをあっさり作り出すことができるのは、ジェットがいるから。



「ありがとう、ジェット。よし。じゃあ、帰ろうか」


「ピピッ!」


「そうだな。日暮れまでには街に戻りたい」



 昼食を食べてからかなり時間が経った。夕暮れはもうすぐだ。ジェマは帰りは採取を諦めて急ぎ足で森を進む。ジャスパーとジェット、ハリスは周囲を警戒し、モアレはすやすや寝息を立て始めた。



「モアレ、寝ちゃったみたい」



 ジェマが影に視線を落とすと、ハリスも思わずそちらを見る。けれど契約者でなければそこに見えるのはただの影。寝息なんて聞こえない。



「スライムって、寝るんだ」


「スライムも魔物だからね。それに、さっきたくさん食べてくれたし。疲れちゃったのかも」



 ジェマの言葉を聞きながら、ジャスパーは小さくため息を漏らす。



「1000年近く地中に封印されていた存在だ。久しぶりの地上は感覚が掴みにくいんだろうな」


「スライムにも感覚があるんだ。切られても死なないのに」



 今度はジェマが目を丸くすると、ジャスパーは頭をかいた。



「一応魔物だからな。痛覚は鈍くても、感情や思考はある。まあ、それを理解して扱える個体は少なくて、大抵は本能のままに動いているがな」



 ジャスパーはジェマの肩から影を見下ろす。ジェマを通して感じるモアレの寝息があまりにも平穏そのものを表していて、かつて対峙したときとの差が激しい。



「ピッ!」



 不意にジェットが鳴き声を上げた。ジェマがキョロキョロするその視線を追いかけると、どこからかカチャカチャと鎧の音が聞こえる。



「これって」


「こっちだ」



 ジャスパーがふよふよと飛び、音の方へと導く。ジェマたちが追いかけていくと、ジャスパーは思い切り茂みから飛び出してその鎧に飛びつく。



「わっ!?」



 相手が驚いて剣の柄に手を置いて振り向く。その視線の先の茂みから顔を出したのは、ジェマとハリス、ジェットだった。



「ジェマ!」


「シヴァリーさん! どうしてこの森に?」



 ジェマがニコニコと近付くと、ジャスパーはシヴァリーの背後から肩へとよじ登った。



「どうせ、ジェマがここへ来たからだろ。でも、なんで1人なんだ?」


「それは、勅命じゃないからだ。でもあのローテンドを討伐に行くと聞いていてもたってもいられなくて。任務はハナナに任せてこっちに来たんだ。私ならジャスパー相手じゃなければ背後を取られることもないからと」


「なるほどな。でもまあ、丁度良いタイミングだ。これから冒険者ギルドへ行って、終わり次第騎士団に行くつもりだったからな」



 ジャスパーの言葉に眉を顰めたシヴァリー。その目がハリスに向けられると警戒が滲む。



「その子は?」


「ハリスです。その、ジェマのところでお世話になることになって……」


「シヴァリーさん、ハリスはコマスの実験施設から逃げ出してきたんです。まだ命を狙われる可能性もありますし、保護して欲しくて」



 ジェマの必死な眼差しに、シヴァリーは警戒を解いて頷く。ジェマが信頼する相手を警戒することはない。ジェマの審美眼の鋭さは旅の間によく理解した。



「分かった。ハリス、君のことを教えて欲しい。それから君がコマスで見聞きしたものを可能な限り。心が壊れるようなら話さなくて良い。ここまで生き抜いてきた君にこれ以上の苦しみを与えたくはないからね」


「は、はい。分かりました」



 つられて敬語になったハリスのぎこちなさに、ジェマは思わず笑う。そしてそっとハリスの手を握る。



「安心してね。シヴァリーさんたち第8小隊の皆さんは絶対味方になってくれるから!」


「ジェマが信じる人たちなら、信じる。でも、騎士団に行くのは、着いてきて欲しい」


「もちろん。だって、友達だもん」



 ジェマとハリスが嬉しそうに笑い合う姿に、シヴァリーはジャスパーにこっそり耳打ちする。



「良かったですね」


「まぁな。ああ、それと。契約魔獣も増えたぞ」


「……少し目を離した隙に何があったんですか」



 シヴァリーはもはや笑うしかない。どこにその契約魔獣がいるのかと視線を彷徨わせ、ジェマの影が蠢くと悲鳴を上げて飛び退いた。



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