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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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10


 ジェマは嬉しそうに笑ったまま、つるっぱげのローテンドを見る。



「じゃあ、そろそろ」


「ああ。採れるものはすっかり採り終わったってのは見れば分かるからな」



 ジャスパーは苦笑いを浮かべながら、ジェットとモアレに視線を送る。右肩に座るジェットと、影で蠢くモアレ。



「まずジェットにローテンドを糸でぐるぐる巻きにしよう。そこに闇属性魔法を流し込んでもらう。それから私がファイヤーボールを打ち込んで、最後はモアレにぱくっと丸呑みしてもらうっていうのは、どう?」



 ジェマの身振り手振りつきの説明に、ジェットは肩をすくめた。



「それが最善策だろうな。我とハリスは周囲の警戒をしておこう。と、ハリスに伝えてくれ」


「うん、分かった」



 ジェマがハリスに作戦を伝えると、ハリスは頷いて近くの木に飛び移る。ジャスパーも空高く跳び上がった。



「ジェット、お願い!」


「ピピッ!」



 ジェットの糸がお尻から吐き出され、シュルシュルとローテンドに巻き付けられる。揺れるものも何もないまま、太い幹がジェットの糸に包まれて消えていく。そしてすっかり姿が見えなくなると、緑色の魔力が糸に流れ込む。そして同時に、闇属性魔法が発動。静かに、チーズが切れるように切れ目が入っていく。



「火よ、我が呼び声に応え、具現化せよ!」



 そこに合わせてジェマが【マジックステッキ】に魔力を流し込んでファイヤーボールを生成する。幹を覆い尽くすほどの火力で叩きつけられたファイヤーボールは、ジェットが作った切れ目から木の中に侵入して、生命に溢れたはずの幹を炎で包んで燃え上がらせる。



「くっ」



 ジェマは集中して何発もファイヤーボールをぶつける。けれど生命樹の中に満ちた生命力と水分がファイヤーボールを飲み込もうとする。



「もっと、もっと!」



 ジェマの気迫に満ちた声とともに、ファイヤーボールは激しさを増してぶつけられる。ローテンドは次第にその火力に水分と生命力を奪われていく。



「モアレ! お願い!」


「きゅうう!」



 大きな叫び声と共に、ジェマの影から飛び出したモアレがむくむくと巨大化する。周囲にばら撒かれたローテンドの魔力を食べ尽くし、もっともっと大きくなる。そして周囲の魔力濃度が薄まった頃。モアレは大きな口で本体にかぶりつく。



「ぎゅうう!」



 モアレの低く響く声が森に反響する。その声に驚いたように鳥型の魔物が逃げだしていく。近くに残っていたリザード種たちも魔力の減少に後ろ盾を失くして元の住処へと引き下がる。



「す、凄い」



 ハリスは木の上からその様子を見守っていた。この森の異様な空気が、モアレがゴキュリゴキュリとローテンドを飲み込んでいくにつれて晴れていく。森の中に本来の薄暗さと陰りが戻る。



「ゲプ」



 ジェマの五倍近くまで巨大化したモアレの大きなげっぷ。根っこからすっかり食べつくされたローテンドが生えていたであろう大穴だけがその場に残され、森は静かなそよめきを取り戻した。



「よし。ローテンド討伐完了だ」


「よ、良かった」


「ぎゅうう!」



 ジャスパーの言葉に、ジェマはへたり込む。思っていたよりは魔力を使ってしまった。そんなジェマを見て、モアレは慌ててジェマの影に飛び込む。が。



「……お尻、かな。出てるね」


「デカすぎて影に入るのも一苦労みたいね」



 影の入り口が狭い、とでも言いたげに、もにょりもにょりと身体を蠢かして影の中に潜ろうとするモアレ。ハリスがジェマを支えて立ち上がらせると、少し入り口が広がって、飲み込まれるように影の中に入っていった。



「食いすぎだな」



 ジャスパーがやれやれと首を横に振る。ジェットは楽し気にぴょんぴょんと跳ねてその様子を見ていたが、いきなりその動きが止まった。慌てたようにジェマの肩に飛び乗ろうとしたジェットを、ジャスパーが浮遊魔法で慌てて止めた。



「ダメだ!」


「ぎゅううう」



 ジェマの影からモアレの呻き声が響く。その瞬間、ジェマの影から緑色の魔力がゆらゆらと溢れ出す。それがジェマに吸収されるのを、ジェマは目を閉じて受け入れた。



「温かい」



 しばらくしてその魔力が落ち着くと、ジェマはすくっと立ち上がった。魔力が満ちた身体は軽い。跳ねてみたり、少し走ってみたり。



「モアレ、ありがとう。すっかり回復したよ」


「きゅう!」



 影の向こうからはモアレも小さく戻ることができたであろうと推測できる高い声が聞こえた。ジェマはホッと息を吐いて、ぷかぷかと宙に浮いたままのジェットを抱き寄せた。



「ごめんね。モアレが魔力共有をしてくれているとき、ジェットが傍にいると魔力が多くなりすぎてジェットが苦しくなってしまうから」



 ジェットはその言葉にかつてオレゴスで経験したことを思い出したのか、何度も頷く。



「よっぽどトラウマらしいな」


「魔力暴走は魔力欠乏以上に苦しいもんね」


「ジェマはなったことないだろ」


「ジャスパーだって」



 魔力量が化け物じみているジェマと、そもそも精霊魔法を扱うジャスパー。唯一あの苦しみを知るジェットは拗ねたように丸くなった。



「ふわふわ、可愛い」



 その姿にハリスがぼそっと呟くと、ジェットはすっかり機嫌を直してハリスの手に飛び乗った。



「ごめんって、ジェット」


「悪かったよ」



 ジェットは2本の脚で丸を作って許してあげる。ジェマはその可愛らしい機嫌の直り方に、ついニコニコ。ジャスパーは咳払いをしてさらに森の奥を指さした。



「ほら、ジェマ、依頼はもう一つ残っているだろ」


「あ、そうだったね。さあ、行こう!」



 ジェマの肩に、ジャスパーとジェットが飛び移る。次の目標は、万病を癒す花、ゲッコウソウだ。



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