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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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 ぴょーんと空を飛んだジェットに、闇が一瞬そちらを追いかけて動きが鈍る。



「ピピィッ!」



 ジェットの慌てたような声にジャスパーが慌ててその身体に浮遊魔法をかけて受け止めると、ジェットはジャスパーの背中にしがみついた。



「ジェマ! 何を……」


「ジャスパー、ジェットとハリスをお願い」



 ジェマは両手を広げると、目を閉じて蠢く闇へと意識を集中させた。



「ダメだ! ジェマ!」



 ハッとしたジャスパーの制止より先に、ジェマが力強く目を見開いた。その刹那、ジェマを中心に地面に闇が円形に這っていく。その強力な闇に吸い寄せられた闇は、あっという間にジェマが作った闇に飲み込まれていった。



「ジェマ!」


「平気……うっ……」



 ジェマは突然の頭痛に膝をつく。足元の闇は紫色の鈍い光を散らしてせめぎ合うように蠢く。ジェマの魔法をあの闇が飲み込もうとしているような、そんな衝突。ジェマは必死に地面に手をついて魔力を注ぎ込む。



「はぁぁぁっ!」


「ジェマ! それ以上は!」



 ジャスパーの声に小さく笑ったジェマは、そのまま魔力を強めると一気に闇を闇で飲み込んだ。



「……ふう」



 短く息を吐いたジェマ。ジャスパーはすぐにジェマの元へ跳んでいく。ハリスは目の前で起きた訳の分からない闇のせめぎ合いに、腰が抜けてその場にへたり込んでしまった。



「ジェマ! 魔力は!」


「まだ平気。寧ろ、なんかいつもより元気な気がするんだよね」



 ジェマが不思議そうに首を傾げると、突然ジェマの影がもにょもにょと動き出した。その様子にジャスパーは真っ黒な毛で覆われた顔を分かりにくく真っ青にした。



「ジェマ、あれはグラトニースライムだ。全てを飲み込む者。我が地中に封印したものが、ローテンドの発現で封印が解かれたらしい。こいつがは立ちどころに全てを飲み込み、全てを無にする。人間も精霊も魔獣も関係なくだ。元々厄介な魔物だが、風属性だったはず。それがなんの影響か闇属性魔法を得てしまった……から、良かったのか?」



 ジェマの魔力に抑え込まれて何もできないままジェマの影を蠢かせることしかできていないグラトニースライム。ジャスパーは白い目でその姿を見下ろした。



「ジェマ、魔力が吸い取られる感覚は?」


「最初はあったけど、寧ろ今はこの子から魔力を貰ってる、気がする?」


「ジェマの魔力の方が強いんだろうな。魔力の差があり過ぎてこいつも魔力を吸うことができない。が、逃げようにもジェマの闇属性魔法でジェマの影に囚われて動けない、と……仮定するしかないな」



 ジャスパーにも理解できない事態に、ジャスパーは口数が多くなりながらも頭を抱える。その声が聞こえていないハリスは、ただ蠢く影に怯え、それでもジェマに手を伸ばした。



「ジェマ、今、何がどうなって……」


「んー……私の魔力がこの魔獣を食べちゃった感覚に近いの、かな。よく分からないけど、暴走を抑えようと思ったら、影に封じ込めちゃったみたい」


「ええ……」



 ハリスは得体の知れないものを見るような目でジェマを見る。けれどすぐにその視線は蠢く影に戻された。



「大丈夫なの? 身体に影響は?」


「うーん。魔力を分けてもらえて、いつもより元気かも。身体が軽いような気がする」


「元気なら、良かった」



 ジェマの朗らかな笑顔に、ハリスはわけも分からないまま頷くしかなかった。周りの心配をよそに、ジェマはその身体を包む妙な感覚に笑っていた。



「凄い、ジェットの感情が伝わってくるときに似ているかも」


「……あ」



 ジャスパーはジェマの言葉に頭を抱えた。何が起きたのか、ようやく理解ができた。



「そうだ……ジェマはこいつに魔力を流し込んだんだよな?」


「うん……あ」



 ジェマも何が起きたのか気が付いて、ジャスパーを見上げた。



「魔獣契約?」


「正解だ。魔獣契約は魔力を流し込むことによって成立する。ジェットのときと同じだ」


「それにしては強い魔力を流し込んじゃったけど」


「ああ。その影響だろうな。グラトニースライムは本来の魔力を奪う力を失って、ジェマに力を与える存在になった……いや、ジェマ以外から魔力を吸っているのか。ジェマの影の周りだけ異様に魔力が少ない」



 ジャスパーは冷製に分析を進める。その間にも、ジェマにひしひしと伝わってくるのはグラトニースライムの不安に怯える感情だった。



「大丈夫。一緒に生きていこうね」



 ジェマはそう言うと、ハリスに目を向けた。



「ねえ、ハリス。コマスの人っぽい名前をこの子につけてあげたいんだけど、何が良いかな?」



 突飛すぎる言葉に、ハリスは口をあんぐりと開いた。そもそもここに何がいて、どうしてこうなっていて。その全てが分からないというのに、何を答えろと言うのか。



 ハリスの様子にため息を吐いたジャスパーは、こちらもおろおろしているジェットの頭を撫でた。



「ジェット、お前の弟分だ。まあ、年齢はかなり上だろうがな」


「ピピィ……」



 ジェットはジッと影を見つめると、恐る恐る近付いてつんつんとつついてみる。グラトニースライムは驚いて逃げようとしたが、ジェマの温かな感情が伝わってくると、影からぴょこりと手のような黒いものを出して握手をした。



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