空の鞄と空の霧散
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【 キャラクター・ステータス 】
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名前: 葉月
職業: ■●▼★
合計レベル: 2001 (メイン:1 / サブ:2000)
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HP: 20100 / 20100
MP: 20100 / 20100
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【 能力値 】
▶ STR(筋力): 2187
▶ DEX(器用): 2179
▶ VIT(耐久): 2054
▶ AGI(敏捷): 2150
▶ INT(知力): 2102
▶ MND(精神): 2089
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真っ先に目に飛び込んでくるのは先ずジョブに関する部分だろう。現状のジョブを表示する箇所が文字化けしており、よくわからない状態になっている。
「わざわざメインジョブとして表示されてるんだから、何かしらのジョブには就いてるってことなんだろうけど……」
流石にバグ解析なんてスキルは無いので、ここに関してはお手上げだ。
「まぁ今の所調子が悪いとかは無いし……問題は寧ろこっちかな」
自分が今どんな状態なのか分からないという気持ち悪さはあるものの、体調に関しては現状問題は無い為、改めてステータスの数値に視線を向ける。
そこには軒並み二千以上の数値が並んでおり、AGOでは見たこともない領域に達していた。
全ジョブを育て切り全ジョブをレベル百にした以前の自分でも、合算のステータスは三百程度だった。それを考えると今のステータスがどれほど異常なのかは、推して知るべし。
この異常なステータスは恐らく、反映される能力は一割までという本来のサブジョブにおける仕様制限が、何らかの理由で外れているためだ。
例えば戦士でも格闘家でも、どのジョブもレベル百到達時のステータスは凡そ百前後になる。
現時点でAGOに実装されていたジョブの数が二十であったことを考えれば辻褄は合う。
辻褄は合うのだが……。
「流石に馬鹿げた数字だなぁ……」
文字通り桁違いの能力過ぎて現実味が薄い。とはいえ軽く振るっただけの拳であの大山羊に風穴を開け、一撃で絶命に至らせしめたという事実が数値に偽りがないという何よりの証左だ。
「ゲームと同じかは分からないけど、仮にカプラのレベルが同じく七十くらいだとしたら……」
二千と七十。相手とのレベル差を考慮しても、得心の行く結果ではあるが、それと同時に、一つの恐ろしい考えが頭をよぎる。
「今回はモンスターが相手だったから良かったけど、もし知らずに人でも殴ってたら……」
勿論、問答無用で人に殴りかかるような趣味は無い。ただ、殴るとまでは行かずとも軽いスキンシップで肩でも叩こうものなら、相手の肩が粉々に砕け散る事か、或いは肩から先が消し飛ぶ事になるだろう事は容易に想像できた。
そのゾッとしない想像を頭を振る事で消し去る。
「まぁ、殺人事件を起こす前に気が付いて良かったとして、あと気になるのは……」
凡そ能力に関しては確認できたため、もう一点気になっていた事を確かめようと中空に浮かぶステータスウィンドウに指を這わせる。
そしてアイテム欄の項目に差し掛かったところでその動きを止め、押し込むようにそこに触れた。
「さてさて、ストレージの中身は…」
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【 アイテム・ストレージ 】 容量: 0 / 9999
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[ 現在の装備 ]
▶ 右手 : なし
▶ 左手 : なし
▶ 頭部 : なし
▶ 腕部 : なし
▶ 胴部 : 布の服
▶ 手部 : なし
▶ 脚部 : 布のスカート
▶ 足部 : なし
▶ 装飾 : なし
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[ 所持アイテム ]
▶ なし
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[ 資産 ]
▶ 所持金: 0 G
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──空っぽだ。
装備や他のアイテムも、一切合切何も無い。さらには、お金も無くなっている。
作成にリアルで数ヶ月はかかる武器や、超レアドロップのアクセサリー、貴重な素材の数々。
お金に至っては所持上限MAXのカンスト額だったのだが……。
「何にも無し……か。まぁ、ステータス的に装備は無くても全然平気そうだけど」
膨大な時間を注ぎ込み入手したアイテムの数々だ。それらが全て無くなっているという事実にショックを受けていないと言えば噓になる。嘘にはなるが、だ。
「AGOと全部同じなのかもよく分からないし、無かったものと思うしかないかぁ」
そもそも本当にこの世界がAGOとそっくりそのままだという保証がないのだ、前提が定まっていない以上初めから無かったと思う方が自分のメンタルにも一番優しいだろう。
寧ろ、現在の状況を考えると装備よりも食料の類が何も無い事の方が問題な気もしてくる。
「最悪食料は現地調達かな…」
モンスターを倒して肉を得るか…いや、でも、食べるなら血抜きとか必要だろうし、そんなのやったことないのだが。それに調味料の一つも無いので味付けも出来ないし、そもそもこの世界のモンスターって食べられるのか?
モンスターを食べられる保証が無いとなると、現状自生している果物類を取る位しか無さそうな気もするが…流石に果物食べられるだろう。
幸いこの辺にはリンゴの木が生っていた気がするし、後で確認してみよう。
「というか、そもそも、人の居る所に行ければ食料は何とかなるのか。となると、後は魔法かな」
AGOは正しくファンタジーの世界であり、勿論魔法も存在していた。しかし、ここでも同じ様に魔法が使えるのかは分からない。何が出来て、何が出来ないのかは把握しておかなければならないだろう。
「とはいえ、下手な事するとまたトンデモナイ事になりかねないし、どうしようかな」
軽いジャブであれ程の威力だったのだ、もし魔法が使えるとすれば今の魔力だと凄まじい威力になっている可能性がある。
そう考えると安易に使用する魔法を選択することも躊躇われ、暫し何の魔法を使うか思案した結果、風魔法に決めた。
どの魔法も危険度は高そうだが、空中に向けてから撃ちするなら一番影響が少なそうだと考えたからだ。
息を整え、その小さな腕を天にかざし、意を決して最下級魔法を唱える。
「エア・スラスト!」
その薄紅の唇が言の葉を紡ぐと同時に、かざした手の先から可視化された緑の魔力が巨大な風の刃となり、凄まじい速度で次々と空に放たれる。
「出た!」
本物の魔法が使えたという感慨もひとしおに喜んだのも束の間、放たれた風の刃が空中で結合し、混ざり合い、一つの生物のように蠢きだした。そうして次の瞬間、荒れ狂う巨大な竜巻を生み出す。
「え、あ、ちょっと待って、嘘でしょ!?」
風に意思が宿ったかのようなその竜巻は空中に巻き上がりながらそのまま空の彼方へと飛んで行く。
その姿は正しく荒れ狂う竜の如き力を示し、周囲の雲を霧散させ尽くすと同時に、フッとその姿を消した。
「…………」
暫しの沈黙。
あまりの威力に思わず眩暈を感じながらしゃがみ込み、顎先まで川に沈めながら一人頭を抱える。
あるいはその行動は、自身の過剰な力に対する、本能的な恐怖だったのかもしれない。
「これが本当の雲散霧消ってやつかな……ふふ、駄目だこりゃ……」
その渇いた笑いと虚しいつぶやきは、高原に吹く風にさらわれながら彼方へ消え去っていったのであった。
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