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見た目だけは良い主人公(尚中身)

なんかいっぱいコンテスト?的なのやってますね。

1個ぐらい応募してみっか(安直)


シリアス終わったし、やっと遊べる

 身体強化。ゲームは勿論、様々なファンタジーに登場する魔法。この世界もその例には漏れない。例えば足を速くしたり、腕の力を強めたり。

 少ない消耗で大きく強くなることができるこの魔法は、国の兵士達は勿論、学生ですら知り得るような優秀な魔法であった。

 しかし、それが使われる機会は稀だ。

 使わなければ死ぬような、絶対に負けてはならぬような、戦でのみ、この魔法は使用される。普段使いの魔法ではないのだ。


 それは何故か。

 ここは現実であり、ゲームの世界ではないのだ。一種のドーピングである強化魔法だが、“強制的に”肉体の“限界を突破させる”というのが、その効果である。

 必然的に反動は大きく、筋肉痛では済まないような痛みが駆け巡ることとなる。


 効率や効果は魔法として非常に優秀なのだが、人間が貧弱過ぎるせいで、微妙な扱いになってしまっているのだ。

 効果を強くする程、発動時間を長くする程反動は大きくなり、終いには反動で死ぬこともある。


 え?リール?彼女の強化は限界突破ではなく、限界そのものを拡張しているのだ。深く考えない方がいい。


 しかし現在、戦闘中の人間。特にリールのクラスメイトと言った、まだ子供の戦闘員は、身体強化の使用を余儀なくされていた。


「魔獣は!?まだ来てる!?」

「来てな···いや来てる!めっちゃ来てる!」

「なんだってこんな雑魚を追いかけ回すんだよ!?」

「へへ、私帰ったらリールちゃん殴りに行くんだぁ····」

「やめろ!そのセリフはなんか危ない気がする!」

「殴るのには同意だけど」

「テメェら実は結構余裕だろぉ!!!」


 リールが焼き払った森の更に奥に位置する森林。『魔の森』と安易に名づけられたそこは、戦闘まっただ中だった。


「ここも焼いて貰った方が良かったんじゃない?」

「環境破壊しすぎるのもどうかと思うけど··」

「お前ら死の間際だって分かってる?」

「何言ってんの?分かってるに決まってんじゃん」

「馬鹿なの?馬鹿だったわ」

「生贄にしてやろうか?」


 軽口を叩き合いながら逃走中の彼ら。魔獣から何故逃げられているのかと言えば、それは当然身体強化を全開で使用しているから。

 反動で死なないように調整して使用しているが、それでもギリギリ追いつかれないでいられている。

 ひとえに彼らの魔法の実力、そして筋トレの賜物である。リールはもっと見習って。


「疲れたんだけど」

「そらお前、かれこれ3時間は走ってんだぞ?疲れなかったら化け物だぞ?」

「え、じゃあ魔獣は化け物?」

「ば獣なんだよなあ」

「は?」

「は?」

「ダメだこいつら疲れが頭に来てやがる」


 実際の所、彼らは6時間ぶっ通しで全力疾走している。魔法による強化具合は30倍という恐ろしい数値であるが、それでも体力は尽きるものだ。

 フルマラソンの2倍位の距離を既に走破しているが、流石に体力の限界が来てしまうだろう。


「はあ、やっばいな、マジでそろそろ限界だわ」

「奇遇だな、俺もだ」

「カッコつけるとこじゃないよね?」

「話してる暇があるなら走れよ!」

「だれかぁ、たふけてぇ」


 彼らはリールという規格外(ほぼ人外)のお陰で、他の同年代と比べれば相当の実力がある。

 それでも魔獣は倒せないし、攻撃面で拮抗させる事は困難だ。


 1人がふにゃふにゃの声で助けを呼ぶが、彼らが居るのは後方、そう都合良く人がいるはずもない。そもそも居たとしても勝てる保証は0に等しい。


 しかし安心して欲しい。


「なんかあいつ、速くなってない?」

「マジ?あれで力抑えてたの?」

「やっぱ戦うもんじゃねぇな」

「戦ってないけどね、逃げてるんだけどね」

「どうする?自爆とかしてみる?」

「やめろお前!自棄になるな!」

「それやるなら全員でやるよ?」

「当たり前だよなあ?」

「死なば諸共」

「なんか違くない?」


 ヒーローというのは、遅れてやってくるものだ。


「ああクソ、やっぱ無理そうか?」

「まあかなり戦場からは離れてるし、ここで死んでも被害が直ぐに広がる事はないでしょ」

「出来ればもっと時間稼ぎたかったけど、ダメっぽいね」

「全員最大火力用意しろ、1発ぶち込む」

「へいへい」

「やっと攻撃出来るのか」

「もう術式作ってあるから、合図してね」

「首席様が居ないけど、あの子ならだいじょぶでしょうね」

「何が良い?火?水?」

「じゃあ光で」

「こんな時に張り合うな馬鹿」


 そんなご都合主義満載の人間が、この世界には居る。


「こんな魔獣がうじゃうじゃ居るんでしょ?人類大丈夫?」

「ほんまそれ」

「【虎】だから良かったよね。【鳥】だったらもう死んでた」

「まあ森だし、鳥だとデカすぎるでしょ」

「虎も十分デカいんですがそれは」

「あー!ほら、目が赤くなってる!なんか来るって!」

「よし、3·2·1で行くぞ」

「「りょーかい!」」

「「「おう!」」」


 ピンチとは、覆すものなのだ。


「そんな気合い入れなくても大丈夫だから」


 突如として響いた声は、今聞こえる筈がないもので、しかし、これ以上ない安心を彼らに与える物だった。


「リールちゃんめっちゃ喋るじゃん!」

「饒舌だね」

「あっちから来てくれるとは思わなかった」

「拳を作るな拳を作るな」

「やっと休めるー···」


 魔獣が迫っているのにも関わらず、座り込むクラスメイト達。えぐい反動がくるため、1度座ればもう一度立つことはできない。


「魔獣なら、全部私が殺すから、大丈夫」


 ヒーローの如く転移してきたリールは、そう言って笑うのだった。


(その声に怒りが含まれていることに気づき、クラスメイト達は身震いした)

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