表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天井からトラックが降ってきたので、100円ショップスキルで異世界を生き延びます  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
97/103

EP 17

紅黒の龍、英雄の激怒

地下空間に、デーモンロードの耳を劈くような罵声が響き渡る。

「下等生物どもが! 我が神聖なる儀式の邪魔をした罪、万死に値するぞ! その魂、永遠に苦痛の炎の中でのたうち回らせてくれるわ!!」

唾を飛ばし、膨大な魔力を周囲に撒き散らしながら喚き散らす異形の怪物。

だが、太郎にとって、そんな安い三流悪役の台詞はどうでも良かった。

太郎は弓を下ろしたまま、デーモンロードから視線を外し、鉄格子の奥をじっと見つめていた。

そこには、ボロボロの衣服を纏い、痩せこけたエルフの若者たちがいる。

美しいはずの頬には無惨に殴られた痕、細い腕には重い鎖で擦れた赤黒い傷、そして目には、深い絶望と恐怖の色がこびりついている。

理不尽に攫われ、自由を奪われ、ただ儀式のために消費される家畜のように扱われた彼らの痛み。

そして、彼らの帰りを待つ、あの平和で暖かい里の家族たちの悲しみ。

(…………)

太郎の心臓が、ドクンと冷たく脈打った。

かつて魔神王と戦った時は「みんなを守るため」という使命感からの戦いだった。

だが今は違う。

これは純粋な「怒り」だ。

平和に暮らしていた人々の日常を土足で踏みにじり、それを愉悦とし、さらなる犠牲を産もうとする絶対悪への、底知れぬ憎悪。

「無視をするなァァァ!!」

デーモンロードが激昂し、両手の間に巨大な闇の球体を生成した。

空間が歪むほどの、高密度の破壊エネルギーだ。

「許さないぞ! 貴様ら! 塵一つ残さず消し去ってやる!!」

「……許さない、か」

太郎がポツリと、氷のように冷たい声で呟いた。

ゆっくりと『雷霆』を構える。

主の異常な心拍と魔力に呼応するように、伝説の弓がギリギリと悲鳴のような軋みを上げた。

『……警告……主の感情値、限界突破……セーフティー、強制解除』

雷霆の神聖な装飾が変形し、普段の清浄な青白い光ではなく、禍々しいほどの赤黒いスパークを放ち始める。

つがえられた矢に、太郎の激情が濁流となって注ぎ込まれる。

矢は赤熱し、やがてドス黒いオーラを纏って紅黒こうこくに輝き始めた。

「死ねぇぇぇぇぇッ!!」

デーモンロードが腕を振り抜く。

巨大な闇のエネルギー波が、全てを飲み込む濁流となって太郎とヒブネに迫る。

ヒブネが絶望の悲鳴を上げかけた、その時。

「許さないのは……こっちだッ!!」

太郎の咆哮と共に、弦が放たれた。

ズガァァァァァァァンッ!!

放たれた矢は、もはや矢の形をしていなかった。

それは、主の怒りを具現化した、巨大な紅黒い龍へと姿を変えた。

そのあぎとは、悪を完全に食らい尽くす絶望の形。

紅黒の龍は、迫りくる闇のエネルギー波に正面から突っ込んだ。

衝突の衝撃すら起きなかった。

龍はデーモンロードの渾身の魔法ごと、その巨大な口で飲み込み、咀嚼し、さらに魔力を増幅させて加速した。

「な、なにッ……!?」

デーモンロードが、今日一番の大きさで目を見開く。

自らの最強の攻撃が一瞬で食い破られ、目の前に紅黒い絶望が迫っている。

防ぐことも、逃げることも不可能。

「バ、バカナァァァァァァ!!」

紅黒の龍はデーモンロードの巨体を頭から一呑みに貫き、その背後にある地下空間の分厚い岩盤ごと深く穿った。

一瞬、完全な静寂が訪れる。

そして――。

ドゴォォォォォォォォォォォンッッ!!!

地下要塞全体、いや、地上の街までを激しく揺るがす大爆発が起きた。

デーモンロードの体は細胞の一片すら残らず完全に消滅し、業火の爆炎の中に消えた。

あまりの威力に天井の岩盤が崩れかけ、パラパラと瓦礫が落ちてくる。

爆風と土煙がゆっくりと収まると、そこには深く抉れた黒焦げのクレーターと、弓を下ろして静かに息を吐く太郎の姿だけがあった。

圧倒的な暴力。

慈悲なき鉄槌。

それが、普段は温厚なパパを本気で怒らせてはいけない男、佐藤太郎の真の力だった。

「た、太郎様……」

腰を抜かしていたヒブネが、震える声で彼を見る。

太郎はゆっくりと振り返り、いつもの優しく、少し間抜けな笑顔に戻って言った。

「お待たせ、ヒブネ。さぁ、皆を助けて、早く家に帰ろう。陽奈と月丸が起きる前にね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ