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天井からトラックが降ってきたので、100円ショップスキルで異世界を生き延びます  作者: 月神世一


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第三章 新たな旅立ち

英雄、逃亡するも顔バレする

太郎国タロウ・キングダム」の玉座を、半ば夜逃げ同然に放棄してから数週間。

元国王であり、人類の救世主である佐藤太郎と、その最強の妻たちは、自由気ままな冒険の旅を満喫している――はずだった。

「……はぁ」

とある宿場町の、少し年季の入った食堂。

僕は周囲を警戒しながら、深く溜息をついた。

現在の僕の顔には、100円ショップスキルで取り出した**『パーティー用・鼻メガネ(ヒゲ付き)』**が装着されている。変装のつもりだ。

「……太郎様、流石にそれは無理があるかと」

「えぇ、逆に目立っていますわよ。それに、私達がそのままでは意味がありませんし……」

隣で呆れたように呟くのは、白ビキニの上に薄手のローブを羽織ったサリーと、黒ビキニにパレオを巻いたライザだ。二人とも、相変わらずバカンス気分のままの超絶美女である。

「いいんだよ! 僕はとにかく、ただの『佐藤太郎』として普通にご飯が食べたいだけなんだ!」

僕は鼻メガネをズレないように直しながら、やってきた店員に声をかけた。

「すみません、このBランチを一つ」

「はいよ、Bランチ……って、そのお声! まさかッ!!」

店員の顔色が劇的に変わり、持っていたお盆をガシャンと落とした。

食堂中の冒険者や客たちの視線が一斉にこちらに集まる。

「そ、その妙なメガネ! そして両脇に控える、世界一美しい絶世の美女二人! 間違いねぇ! 伝説の英雄、初代国王・太郎陛下だああああ!!」

「うわあああ! 本物だぁぁ!」

「太郎様! 太郎様じゃないか! 握手してください!」

「俺の代わりに会計を払ってくれ!(?) 太郎様バンザイ!!」

「ひ、ひぃぃぃ! 違うんです! 僕はただの鼻メガネなんですー!」

食堂は一瞬にして「太郎様ファン感謝祭」へと変貌した。

揉みくちゃにされ、サインを求められ、無理やり高級酒を奢られそうになった僕たちは、ほうほうの体で裏口から街を逃げ出した。

――街外れの静かな森の中。

僕は地面に鼻メガネを叩きつけた。

「駄目だ……! どこに行ってもこれだ! 歓迎されすぎて冒険どころじゃないよ!」

マンルシア大陸では、僕の顔は既に「平和の象徴」として神格化されていた。

街の広場には僕の銅像が建ち、店で買い物をしようとすれば「英雄様から金など取れるか!」とタダになり、ギルドに行けば「陛下に頼めるような汚い仕事(ドブさらい等)はありません!」と門前払いされる。

これでは冒険者ではなく、ただの「名誉市民」だ。

「有名人はつらいですね、太郎様」

ライザが苦笑いしながら、100均の冷たい天然水を差し出してくれた。

「貴方の横顔が刻印された金貨が大陸中に流通していますから。今やマンルシアで貴方の顔を知らないのは、目をつむっている人くらいでしょう」

「うぅ……。僕はただ、無名の新人として『薬草採取』をして、稼いだ銅貨で安い串焼きを食べて、『あぁ、今日も働いたなぁ』って言いたいだけなのに……」

膝を抱えて落ち込む僕に、サリーがポンと手を叩いた。

「それでしたら、太郎様! 『別の大陸』へ行くのはいかがですか?」

「別の大陸?」

「はい! ここから海を渡った西の果て、遥か遠くに『サバラー大陸』という広大な大地があるそうです。そこなら、私達の名前もまだ知られていませんよ!」

サリーはワクワクした顔で、僕のスキルから出した『世界地図帳』の端を指差した。

「サバラー大陸……!」

その響きに、僕の冒険者魂(と食欲)が激しく反応した。

情報が極端に少ない未開の地。そこには見たこともない魔物、そして未知の食材が待っているに違いない。何より、僕が「ただの太郎」に戻れる場所だ。

「よし! 行こう、サリー、ライザ! 目指すは新天地、サバラー大陸だ! そこで今度こそ、理想のスローライフを送るんだ!」

善は急げと、僕たちは港町へと向かった。

もちろん、正規の定期船に乗ればまた大騒ぎになる。僕はコソコソと、夜の港の片隅へ移動した。

「船はどうします? 買うにしても目立ちますが」

ライザが心配そうに言うが、僕はニヤリと笑ってウィンドウを開いた。

「大丈夫。こういう時のために、とっておきのレジャー用品があるんだ。……召喚!」

僕が取り出したのは、『インフレータブルボート(6人乗り』。

100円(100ポイント)とは思えない、軍事用にも使われる強靭な強化ゴムボートだ。

「これなら魔法袋インベントリにしまえるし、誰にもバレずに出航できる!」

「さすが太郎様! 用意周到ですわ!」

僕たちは夜陰に乗じてボートを海に浮かべ、サリーの風魔法とエンジンのハイブリッド加速で、真っ暗な海へと滑り出した。

「さらば、マンルシア大陸! さらば、国王の地位とサイン攻めの日々!」

遠ざかる大陸の灯りを見ながら、僕は叫んだ。

「待ってろよ、サバラー大陸! 新たな食材と、自由な日々よー!」

ボートは白波を立て、未知なる大陸へと舵を切った。

しかし、この時の僕たちはまだ知らなかった。

サバラー大陸が、過酷な自然と、筋肉と魔法が支配する「修羅の国」であることを――。

新章、開幕。

新たな大地で、100円グッズは通用するのか!?

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