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天井からトラックが降ってきたので、100円ショップスキルで異世界を生き延びます  作者: 月神世一


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EP 44

蹂躙、そしておにぎり

アルクス領の境界線。

そこには、地平線を埋め尽くすように、デルン王国の旗印を掲げた3万の大軍が展開していた。

王立騎士団、正規歩兵、そして宮廷魔導師団。国が動員できる最大級の戦力だ。

「フン、冒険者上がりの成金領主め……。数で押し潰して、その鼻っ柱を折ってくれるわ」

王国軍の将軍は、遠くに見えるアルクスの城壁を馬上で見据え、鼻で笑った。

しかし、彼らは知らなかった。自分たちが踏み入れた場所が、既に「現代兵器」と「魔法科学」によって計算し尽くされた絶対的なキルゾーン(殺戮地帯)であることを。

城壁の上から、僕は眼下の軍勢を静かに見下ろした。

「本当に……来たんだね」

その声に恐怖はない。ただ、圧倒的な文明の差を知る者としての、淡い哀れみだけがあった。

「総員、戦闘配置!」

隣に立つライザが、凛とした声で号令を発した。

彼女は今、エプロン姿の可愛い妻ではない。戦場を支配する冷徹な将軍――『閃光の剣姫』の顔だ。

「ガンダフ製・長距離魔導カノン砲、一番から十番まで、照準合わせ! 装弾筒には『特大必殺弾』を装填!」

「「「装填完了!!」」」

「目標、敵本陣。……慈悲はいりません。放てッ!!」

ライザが指揮刀を振り下ろすと同時に、10門の大砲が火を噴いた。

ズドォォォォォォォォォォォォン!!!

腹の底を揺らす轟音と共に撃ち出されたのは、僕の『必殺の矢』の技術を応用した、ナパームと爆裂魔法石の複合榴弾だ。

砲弾は美しい放物線を描き、密集する王国軍の中央へと正確に吸い込まれていった。

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォン!!

「なっ……!?」

将軍が何かを叫ぶ暇もなかった。

大地が激しく揺れ、紅蓮の炎が巨大なきのこ雲を作って舞い上がった。着弾地点にいた数百の兵が一瞬で消し飛び、猛烈な爆風が周囲の数千人を紙屑のように吹き飛ばす。

王国軍は、開戦からわずか数秒で、その中枢を半壊させられた。

「ひ、退くな! 立て直せぇぇ!! 魔法障壁を展開しろ!!」

「無駄ですよ。次弾装填、急ぎなさい。敵に息つく暇など与えません」

ライザの指示は精密で、そして無慈悲だった。

「対空、対地バリスタ部隊! 『必殺のバリスタ矢』、水平射撃開始!」

バシュッ! バシュッ! バシュッ!

槍のように太く巨大な矢が、空気を切り裂いて敵陣を襲う。

着弾するたびに小規模な爆発が起き、盾を構えた重装歩兵たちが、まるでおもちゃの兵隊のように宙を舞った。

「バ、バカな……! 魔法使いの射程外だぞ!? どんな大魔法を使っているんだ!」

「これは魔法じゃありません。……ただの『科学』の応用ですわ」

城壁の先端に立つサリーが、魔法兵団に合図を送る。

「魔法兵団、殲滅魔法詠唱開始! 酸素濃度固定、燃焼効率最大! 『プロミネンス・シュート(紅蓮殲滅砲)』!!」

「「「イエッサー!!」」」

サリーの「科学魔法講座」を受けた精鋭たちが、一斉に杖を掲げた。

空が真っ赤に染まり、太陽の欠片のような熱線が敵陣へと降り注ぐ。それは「焼く」のではなく、対象を瞬時に「蒸発」させるほどの熱量だった。

「ぎゃああああああ!!」

「あ、熱い! 鎧が溶ける! 助けてくれぇぇ!!」

逃げ惑う王国軍。だが、そこにライザの放った爆発矢の雨が降り注ぐ。

地面に刺さるたびに地雷原のように爆裂し、前進しようとする兵士を情け容赦なく粉砕していく。

一方的。あまりにも一方的な、圧倒的蹂躙だった。

そんな地獄絵図のような光景を見下ろす城壁のテラスに、場違いなほど穏やかな声が響いた。

「お疲れ様です、太郎様」

「ん? あぁ、サクヤ」

エプロン姿の料理長、エルフのサクヤが、お盆を持って現れた。

そこには温かいお茶と、竹皮に包まれた「おにぎり」、そして自家製のお新香が乗っていた。

「少し小腹が空いたかと思いまして。具は鮭と昆布をご用意しましたわ」

「ありがとう、サクヤ。……いただきます」

僕は轟音と閃光が響き渡る中で、握りたてのおにぎりを一口食べた。

ふっくらとしたお米の甘味と、適度な塩気が五臓六腑に染み渡る。

「……分かっていたんだ。こうなるのは」

僕はおにぎりを咀嚼し、眼下の焼野原を見つめながら呟いた。

ライザによる地獄の特訓でS級並みに強化された騎士団。

サリーによる科学的アプローチで威力が倍増した魔法兵団。

ガンダフが作り上げた、この世界の常識を超えた大砲。

そして、僕のスキルによる、無尽蔵の高品質な弾薬と食料。

腹を空かせ、旧式の装備で進軍してきた王国軍と。

毎日サウナで整い、栄養満点の食事を摂り、最新兵器で武装したアルクス軍。

「最初から……デルン王国軍に勝ち目なんて、万に一つも無かったんだ」

僕はお茶をズズッと啜り、ホッと一息ついた。

その背中には、国一つを相手にしても微塵も揺るがない、圧倒的な「強者の余裕」が漂っていた。

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