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天井からトラックが降ってきたので、100円ショップスキルで異世界を生き延びます  作者: 月神世一


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EP 42

漁夫の利と、絶品! 巨大屋台グルメ

「あぁ……僕のイカ焼き……香ばしいお醤油の匂いが……」

討伐の歓喜に沸く軍船の甲板で、僕は一人、四つん這いになって虚しく海面を見つめていた。

「太郎様!? 大丈夫ですか! 魔力の使いすぎですか!?」

「きっと、伝説の海魔と対峙した凄まじいプレッシャーから解放されて、反動が来たのですね……!」

サリーとライザが慌てて駆け寄り、僕の背中をさすってくれる。

(違うんだ。ただ猛烈にお腹が空いていて、イカが食べられなかったショックで膝から崩れ落ちただけなんだ……)

僕が情けない理由を口にできず、深い絶望の淵に沈んでいた、その時だった。

ヒュルルルルルル……ッ!!

上空から、空気を切り裂くような奇妙な風切り音が聞こえてきた。

見上げると、太陽を遮るような「巨大な影」が、僕たちの頭上に猛スピードで迫ってきている。

「危ないッ!!」

ライザが僕とサリーを抱えて大きく後方に跳躍した直後。

ズッッッドォォォォォォォォン!!!

船がへし折れるかと思うほどの凄まじい衝撃と共に、甲板に巨大な物体が墜落した。

舞い上がった土砂降りのような水しぶきが晴れた後、そこにあったのは――。

大木のように太く、しかし一切の傷がない、瑞々しく吸盤のついた綺麗な「クラーケンの触手(一本)」だった。

おそらく、僕の『雷霆龍の一矢』が中心部で炸裂した直前、衝撃波によって根元から切り飛ばされた触手が、はるか上空へと打ち上げられ、時間差で落ちてきたのだ。

「こ、これは……」

ライザが剣の柄に手をかける。

しかし、僕の瞳には再び、強烈な光が宿っていた。

「神は……神は僕を見捨てていなかった!!」

僕はガバッと立ち上がり、空に向かって両手を突き上げた。

「いくぞ二人とも! 勝利の宴の準備だ!」

僕はすかさずウィンドウを開き、100均スキルをフル稼働させた。

『極厚アウトドア用鉄板』『大型カセットコンロ極(極太バーナー)』『屋台のイカ焼きのタレ(甘辛醤油)』そして『ハケ』と『万能包丁』だ。

僕は名刀を振るう剣豪の如き手つきで(100均の包丁だが、僕のステータスが高いのでスパスパ切れる)、巨大な触手を分厚い輪切りにしていく。

コンロに火を点け、鉄板を限界まで熱し、油を引く。

そこへ、ステーキのように分厚いクラーケンの切り身を豪快に乗せた。

ジューーーーーーーーーッ!!!

暴力的なまでに食欲をそそる音が響き、白い煙が上がる。

新鮮な海魔の肉は、熱を通されることで美しい白と赤のコントラストに縮んでいく。

「今だ!」

僕はタレの容器にハケを突っ込み、熱々のイカの表面に、たっぷりと甘辛い醤油ダレを塗りたくった。

ジュワァァァァァッ!!

醤油が熱した鉄板に落ちて焦げる、あの「お祭り」の屋台特有の、強烈でジャンキーな匂いが甲板を完全に支配した。

「な、なんて暴力的な香り……!」

ライザが喉をゴクリと鳴らす。

「お腹が……ぐぅって鳴っちゃいます!」

サリーがよだれを拭いながら、鉄板に釘付けになっている。

クラーケンの恐怖に震えていた船の乗組員たちも、いつの間にか匂いに釣られて、ゾンビのように鉄板の周りに集まってきていた。

「さぁ、出来上がりだ! 熱いうちに食べて!」

僕は100均の竹串に刺した巨大なイカ焼きを、二人に手渡した。

「い、頂きます!」

「頂戴いたしますわ!」

二人が大きな口を開け、ガブリとイカにかぶりつく。

「んんんっ!!」

サリーの目がパァァッと輝いた。

「柔らかい! なのに絶妙な弾力があって、噛むたびに口の中に海鮮の旨味がドバーッと溢れてきますわ!」

「それに、この甘辛いお醤油のタレが、イカの味を極限まで引き上げています……! 美味しい、美味しすぎます、太郎様!」

ライザも剣姫の矜持を忘れ、夢中でイカを頬張っている。

僕も自分で焼いたイカをかじる。

「うまっ! 最高だ!」

クラーケンの肉は、アミノ酸の塊だった。普通のイカの何倍もの旨味がありながら、全く大味ではない。これに冷えたビールがあれば完璧だが、バカンス中とはいえ帰りの船上なので、今は冷たいお茶で我慢する。

「よし、この最高のお土産を持って、港に帰ろう!」

「はいっ!」

――数時間後。

ポートセーリの港は、お祭り騒ぎとなっていた。

クラーケン討伐の報せと、船に積まれた巨大な触手(の残り)を見て、町民たちは大歓喜したのだ。

僕は港の広場にさらに巨大な鉄板を用意し、余ったクラーケンの肉を全て使って、町民全員に「屋台のイカ焼き」を振る舞った。

「うおおお! なんだこの美味い食べ物は!」

「伯爵様バンザイ! イカ焼きバンザイ!!」

ギルドマスターも、港の平和が守られたことと、未知の極上グルメの味に、涙と鼻水を流しながらイカ焼きを貪っていた。

夕暮れ時。

オレンジ色に染まる海を見つめながら、僕たちは砂浜に並んで座っていた。

「太郎様、今回は本当に最高のバカンスになりましたね」

ライザが、満足そうに僕の肩に寄りかかる。

「ええ。綺麗な海で遊んで、美味しいものをたくさん食べて……幸せですわ」

サリーも、僕の手をギュッと握りしめる。

「うん。また来ようね、三人で」

僕は二人の肩を優しく抱き寄せた。

アルクス領の英雄は、港町に「屋台のイカ焼き」という新たな、そして強烈な食文化を刻み込み、大満足で帰路につくのだった。

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