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天井からトラックが降ってきたので、100円ショップスキルで異世界を生き延びます  作者: 月神世一


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EP 22

意思を持つ武器、白銀の弓『雷霆らいてい

ベヒーモスとの死闘を終え、破壊の爪痕が残るボス部屋には、静寂が戻っていた。

巨大な魔獣の死骸からは希少な素材や高価な魔石が取れるはずだが、今はそれどころではない。

なぜなら、部屋の最奥に、怪しく輝く豪奢な扉――ダンジョンの覇者のみが立ち入ることを許される「宝物庫」への入り口が現れていたからだ。

「……ベヒーモスの素材回収は後回しにしてさ。先に『お宝』を拝もうよ」

「大賛成です! ダンジョン攻略の最大の醍醐味ですもの!」

僕の提案に、サリーが痛みを忘れたように目を輝かせた。

僕たちは高鳴る胸を抑えながら、重厚な扉をゆっくりと押し開け、宝物庫へと足を踏み入れた。

中は外の荒々しさとは打って変わって、静謐せいひつな空気が流れていた。

部屋の中央にある大理石の台座の上に、厳重な装飾が施された「黄金の宝箱」が一つだけ、神々しく安置されている。

「ゴクリ……」

僕は思わず唾を飲み込んだ。

「お待ちください、太郎さん。私が確認します」

僕が不用意に近づこうとすると、ライザがスッと前に進み出た。

「これほどの宝物庫です。不用意に開けて爆発や即死のトラップが発動でもしたら、元も子もありませんから」

ライザは長剣の切っ先で慎重に宝箱の隙間を探り、魔力の流れや極細のワイヤーの有無を丹念に確認していく。

数分間の張り詰めた緊張の後、彼女は剣を鞘に納めた。

「……罠は無いようですね。鍵も掛かっていません。さぁ、どうぞ」

「よし、開けるぞ」

僕は深呼吸をして、宝箱の蓋に手を掛けた。

ギギギギ……。

重い音と共に蓋が開く。中から眩い黄金の光が溢れる――かと思いきや。

そこに入っていたのは金銀財宝ではなく、「奇妙な物体」だった。

白銀色に輝く、液体金属のような不定形の塊。

武器のようにも見えるが、持ち手も刃もなく、ただスライムのようにゆっくりと脈動している。

「なんだこれ……? スライムの親玉?」

「太郎さん、蓋の裏に古代語で何か刻まれています」

ライザが宝箱の蓋の内側にある刻印を指でなぞり、翻訳して読み上げた。

「何々……『我は無垢なる力。我はあるじの魂を映す鏡。この武器は意思を持ち、使用者に相応しい形へと変化する』」

「凄い! 伝説の武器よ! 生きたアーティファクトだわ!」

サリーが興奮してピョンピョンと跳ねる。

使用者に合わせて形を変える、意思を持った武器。神話やファンタジーRPGの終盤でしかお目にかかれないような超絶レアアイテムだ。

「さぁ、太郎さん。触って下さい。このダンジョンを制覇した、真の覇者として」

「僕がか? ……わかった」

ライザに促され、僕は恐る恐る手を伸ばした。

僕の指先が、白銀の塊に触れる。

ひやりとした金属の感触。

だが、次の瞬間、ドクンッ! と脈打つような強い熱が、掌から全身へと流れ込んできた。

『……契約……承認……』

頭の中に直接、性別も年齢もわからない無機質な声が響いた。

直後、白銀の塊がフワリと宙に浮き上がり、生き物のように激しくうねり始めた。

光の粒子を撒き散らしながら、塊は僕の手のひらへと収束し、長く、鋭く、優美な曲線を描いて伸びていく。

「おぉ……!」

まばゆい光が収まった時。

僕の手には、一振りの美しい「弓」が握られていた。

全体は艶やかな白銀色の金属(ミスリルのような質感)で構成されているが、つるの部分には実体がなく、青白い光のエネルギー(プラズマ)で形成されている。

メカニカルでありながら神秘的な装飾が施された、この世界には存在しないような近未来的なデザインの弓だ。

「そうか……僕の魂が『弓』を求めたから、この形になったのか」

僕が試しに光の弦を引いてみると、矢をつがえていないにも関わらず、自動的に青白い「魔力の矢」が生成された。

もちろん、100円ショップの鉄の矢をつがえることもできる。通常物理攻撃と魔法攻撃のハイブリッド仕様だ。

手に吸い付くような、完璧なフィット感。まるで自分の体の一部が拡張されたようだ。

「……名前を、付けろと言っている気がする」

僕は白銀の弓を優しく撫でた。

指先からバチッ、と心地よい静電気が走る。その青い輝きと力強い脈動を見て、僕の脳裏に一つの言葉が浮かんだ。

「そうだな……雷の如き一撃を放ち、悪を討つ弓。『雷霆らいてい』……今日からお前の名は雷霆だ」

ブォン……!

弓――雷霆は、その名を受け入れたとでも言うように低く唸り、青い光を一度だけ強く明滅させた。

『ピカリ知ってる! これ、すっごく強いやつ! ビリビリしてる!』

ピカリも雷霆の周りを飛び回り、その強大なエネルギーに驚きつつも嬉しそうにしている。

「雷霆……とても良い名です。ベヒーモスを討ち果たした太郎さんに相応しい、最強の相棒になりそうですね」

「ええ! これで太郎さんの火力がさらに跳ね上がるわね!」

「ああ。これがあれば、もっと色んなことが出来そうだ」

僕は新しい相棒を、背中へと力強く背負った。

ただのフリーターだった僕が手にした、伝説の魔獣の討伐と、神話級のアーティファクト。

僕たち「チーム・タロウ」の冒険は、この白銀の弓『雷霆』と共に、さらに高いステージへと駆け上がっていくのだった。

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