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天井からトラックが降ってきたので、100円ショップスキルで異世界を生き延びます  作者: 月神世一


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EP 17

甘い魔力水と、魔法の灯り

ダンジョン攻略の準備期間。

アルクスの丘の上に建つ僕たちのマイホーム、その広々としたキッチンは、さながら小さな町工場のようになっていた。

「よし、どんどん作るぞー」

僕は空中のウィンドウから『食品・飲料』カテゴリを開き、大量に取り出した赤い缶――【 お汁粉(粒あん・190g):100P 】を大鍋で湯煎し、異世界の携帯用水筒や、100円ショップの【 耐熱クリアボトル(500ml):100P 】に次々と移し替えていく。

「絶対にこれは売れるわよ! 魔法使いにとって糖分は魔力回復に直結するし、何より市場に出回っている『魔力回復薬マナ・ポーション』より断然安いもの!」

サリーがボトル詰めを手伝いながら、鼻息を荒くしている。

この世界のポーションは、薬草を煮詰めた泥水のように苦くて不味い上に、一本で銀貨数枚もする高価な品だ。それに比べて、このお汁粉は甘くて美味しく、即効性のエネルギー(ブドウ糖)補給になる。

「ふふっ、そうですね。あのドラゴンスレイヤーのパーティーが愛飲している『秘薬』と言えば、皆飛びつきますわ」

ライザも手際よく、ボトルに手書きのラベルを貼っていく。

『ピカリ、お味見する~!』

作業中、ピカリが鍋に残ったお汁粉に顔を突っ込んだ。

『ん~っ! 甘~い! 美味しーい! まりょくが満ち溢れるー!』

「コラぁ! ピカリ! 盗み食いしない! それは大事な商品よ!」

「あはは、まぁまぁ。ピカリの分も後で別にとってあげるから」

僕は微笑ましく見守りながら、着々と「ビジネス」の準備を進めていった。

翌日。

冒険者ギルドのダンジョン攻略特設カウンターのすぐ横に、僕たちの特設ブースが設けられた。

立て掛けた看板には、デカデカとこう書かれている。

『ドラゴンスレイヤー御用達! 太郎印のダンジョン攻略グッズ!』

「はいはい! いらっしゃいませー! ダンジョンに潜るお兄さんたち! 太郎印の防寒グッズはいかがですかぁ!」

サリーが愛嬌たっぷりに声を張り上げると、むさ苦しい冒険者たちが釣られるようにワラワラと集まってきた。

「荷物にならなくて、軽くて温かい寝具も有りますよ」

ライザが実演販売を行う。彼女が手にしているのは、銀色の薄いシート――**【 アルミブランケット 】と、コンパクトに畳まれた【 封筒型寝袋 】**だ。

「見てください。こんなに薄く折り畳めますが、体に巻けば極寒の山でも凍えない温かさを保ちます。ダンジョンの冷たい岩場で、重くて嵩張る毛布を持ち歩く時代は終わりました」

さらに、僕がカチッと音を立てて【 LEDヘッドライト 】と【 ハンディライト 】を点灯させた。

ギルドの薄暗いホールを、真昼のような直線的な光が貫く。

「そしてこれ! 松明たいまつ要らずの『魔法の灯り』です! 煙も出ないし、風が吹いても絶対に消えない! これさえあれば、両手を空けたままダンジョンの闇を安全に進めますよ!」

道標みちしるべには、この折るだけで光る『サイリウム』もオススメですよ!」

『オシルコ、すっごく美味しいよ~! サリーのまりょくがドカーンってなったんだよー!』

ピカリも空中で赤いボトルを抱えて元気いっぱいに宣伝する。

英雄たちの直接販売と、見たこともない圧倒的に便利な品々に、ダンジョンへ向かう冒険者たちの目の色が変わった。

「おぉ! ドラゴンスレイヤーが勧める品か!」

「あの光る筒と、頭につける灯り、すげぇ! 煙が出ないなんて、地下の探索じゃ神の道具じゃねぇか!」

「それにこの『オシルコ』とかいう黒い飲み物……サリー嬢ちゃんがドラゴン戦で飲んで、魔力を全回復させたっていう伝説の『黒い秘薬』か!?」

尾ひれがついた噂は、既にギルド中に広まっていたらしい。

「買う買う! 俺にもその『灯り』をくれ!」

「その銀色の布、5枚だ! パーティー全員分くれ!」

「オシルコ10本! 銀貨1枚で足りるか!?」

そこからは、まさに怒涛の勢いだった。

飛ぶように、というより、奪い合うように商品が売れていく。

「まいどあり~! 順番に並んでねー!」

「はい、お汁粉3本ですね! ありがとうございますわ!」

チャリン、チャリンと、僕の前に置かれた革袋に無数の銀貨が放り込まれていく。

原価100ポイント(約100円)の商品が、銀貨1枚(数千円相当)でポンポン売れるのだ。

利益率は驚異の数千パーセント。ボロ儲けもいいところである。現代日本の大量生産の凄まじさを、異世界の経済に叩きつけた瞬間だった。

「太郎さん、こっちのライト完売したわ!」

「追加補充します! どんどん出して!」

結局、持ち込んだ商品は瞬く間に売り切れとなった。

冒険者たちはホクホク顔で「太郎印」のグッズをリュックに詰め込み、ダンジョンへと意気揚々と向かっていく。

「ふぅ……儲かったぁ……」

完全に空になった在庫と、銀貨でパンパンに膨れ上がって自立している革袋を見て、僕たちは顔を見合わせた。

「これ、ダンジョンに潜る前にもう家一軒分くらい稼いじゃったんじゃない?」

「太郎さんの商才には驚かされますわ……。商人になっても大成功しますよ、絶対」

「えへへ、僕の旦那様はすごいのよ!」

ダンジョン特需と『100円ショップ』スキルの相性は、想像を絶するほど抜群だった。

懐も圧倒的に豊かになり、僕たち自身の探索用装備も完全な状態に仕上がっている。

「よし! ビジネスはこれくらいにして、本業の冒険者に戻ろうか!」

銀袋をアイテムボックスにしまい込み、僕は二人の妻と、肩に乗った妖精に笑いかけた。

いよいよ僕たち「チーム・タロウ」自身も、未知のダンジョン攻略へと乗り出す準備が完璧に整ったのだ。

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