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天井からトラックが降ってきたので、100円ショップスキルで異世界を生き延びます  作者: 月神世一


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EP 4

飛竜の群れ、アルクス防衛戦の幕開け

王宮でのカレー騒動から数日が経った。

僕の肩には、新しい相棒である光の妖精ピカリがすっかり定位置を確保していた。

王様から「冒険の役に立つ」と譲り受けた由緒正しい守護精霊なのだが……今のところ、彼女の主な関心は僕が出す「異世界のジャンクフード」に集中していた。

『ねぇねぇタロウ! これはなに!?』

「これは『ポテトチップス(うすしお味)』だよ」

僕が100円ショップのスキルで購入した銀色の袋を開けると、ピカリは目をキラキラさせて飛び込んだ。そして、自分の顔より大きなポテトチップスを抱え込み、小さな歯で齧り付く。

『パリパリしてて、お塩が効いてて、すっごく美味しい! なにこれ止まらないのね! じゃあこっちの黒い水は!?』

「それは『コーラ』。シュワシュワする炭酸飲料さ」

ピカリが紙コップの縁に止まり、ストローの先から一滴ペロリと舐める。

『ひゃんっ!? お口の中でパチパチ弾ける! シュワシュワの魔法の水だわ!』

「あはは、魔法じゃないけどね」

ピカリは元気いっぱい、何にでも興味津々だ。

僕が空中のウィンドウから取り出す現代のお菓子や便利な日用品に目を輝かせ、小さな体を弾ませて飛び回っている。

そんなピカリの無邪気な姿に、サリーもライザもすっかり骨抜きにされ、目を細めていた。

「ふふ、ピカリちゃんが来てから、本当に賑やかになりましたね」

「本当。ただでさえ太郎さんの不思議な道具で毎日驚かされているのに、ピカリちゃんがいるとこっちまで元気が出るわ」

アルクスの街の、平和で穏やかな昼下がり。

僕たちは冗談を言い合い、楽しくお喋りしながら大通りを歩いていた。

この穏やかな時間が、これからもずっと続く――僕も含めて、誰もがそう思っていた。

その時だった。

カンカンカンカンカンカンカンッ!!!

けたたましい鐘の音が、アルクスの街中に響き渡った。

正午を知らせるような穏やかな時報ではない。耳をつんざくような、不吉で切迫した連打音。

「……これは!」

ライザの顔色が一変し、周囲の空気を探るように鋭い視線を巡らせた。

「非常事態の鐘!? どこかで火事でも……」

「いいえ、ただ事ではありません。この鐘の鳴り方は、街の存亡に関わる『最高レベルの警報』です!」

「冒険者ギルドに行きましょう! 急いで!」

「分かった!」

僕たち三人と一匹は、人々の悲鳴と怒号が飛び交い始めた大通りを、全力で駆け抜けた。

冒険者ギルドの重い扉を開けると、そこはすでに戦場のような騒ぎになっていた。

完全武装した冒険者たちが殺気立ち、ギルド職員たちが顔を青ざめさせながら矢継ぎ早に指示を飛ばしている。

「お父様! 何があったんですか!?」

ライザが人波をかき分け、指揮台に立っているギルド長・ヴォルフの元へ駆け寄った。

ヴォルフは巨大な周辺地図を広げ、険しい表情でアルクスの「西の上空」を指差した。

「おぉ、ライザか! 『チーム・タロウ』も揃っているな」

ヴォルフは血走った隻眼で僕たちを見据え、重苦しい声で告げた。

斥候せっこうから報告が入った。ワイバーンの群れが、一直線にこのアルクスに向かってきている」

「ワ、ワイバーン……!?」

ワイバーン――飛竜。

ルルカ村で戦ったグリフィンと並ぶ、空の脅威だ。知能こそ低いが、その凶暴性と繁殖力、そして口から吐く火炎のブレスは厄介極まりない。

しかも、ヴォルフの口ぶりは「単体」の話ではなかった。

「数は……およそ100体。西の山脈から溢れ出したスタンピード(魔物の大暴走)だ」

「ひゃ、ひゃくたい!? 100体って……!」

僕の声が情けなく裏返った。

空を飛ぶ巨大な竜が100体。

そんなものが一斉に空から襲来すれば、都市防衛用のバリスタ(巨大弩弓)や弓兵の矢だけでは到底迎撃しきれない。城壁を軽々と越えられ、街は一瞬にして火の海になる。

「そうだ。デルン国王軍に救援要請は出したが、王都から軍が到着するまでにはどう足掻いても間に合わん。俺の権限でアルクスに非常事態宣言を発令した。我々冒険者ギルドと、街の自警団だけで、この群れを迎え討つしかない」

ヴォルフは拳を握りしめ、ギルド全体に響き渡る声で叫んだ。

「野郎共! 相手は空を飛ぶデカい蜥蜴トカゲ共だ! 楽な戦いじゃねぇ! だが、俺たちの背後には家族や恋人、帰るべきこの街がある! 一匹たりとも、城壁の内側に入れるな!!」

その激烈なげきに、冒険者たちが武器を高く掲げて応えた。

「よっしゃあ! 俺達の街は俺達で守るんだ!」

「飛竜の焼き鳥にしてやるぜ!」

「稼ぎ時だオラァァァ!!」

恐怖よりも闘志。

彼らは血気盛んにギルドを飛び出し、迎撃地点である西の城壁へと走っていく。

その背中を見て、僕は大きく深呼吸をした。

かつて、ポポロ村の森でゴブリン一匹に震え上がり、逃げ惑っていただけの自分はもういない。

今の僕はA級冒険者であり、この街を守る力を持っている。

そして何より、僕の背中の矢筒には、ガンダフと作り上げた『必殺の矢』(残弾:3発)がある。

「よし! 僕達も行くぞ!」

僕が声を上げると、仲間たちが力強く応えた。

「えぇ! 魔法で一匹残らず焼き尽くしてやるわ!」

サリーが杖を握りしめる。

「承知! 私の剣で空を斬り裂きましょう!」

ライザが長剣を抜く。

『ピカリも! ピカリも一緒に戦うもん!』

妖精のピカリが、僕の肩の上で小さな拳を突き上げた。

「ありがとう、みんな。絶対に生き残ろう!」

最強のパーティー「チーム・タロウ」、出撃。

空を黒く覆い尽くさんとする絶望の群れに対し、僕たちは街を、そして日常を守るために走り出した。

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