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天井からトラックが降ってきたので、100円ショップスキルで異世界を生き延びます  作者: 月神世一


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EP 30

英雄の凱旋、そしてA級への特進

ルルカ村での激闘と事後処理を終え、僕たち「チーム・タロウ」がアルクスの街の冒険者ギルドへと帰り着いたのは、深夜近くになってからだった。

普段なら酔っ払いが数人転がっているだけの時間帯だが、今日のギルドは違った。

窓からは煌々と灯りが漏れ、重厚な扉の向こうからは、蜂の巣をつついたような怒号と歓声が入り混じった異様な騒ぎが聞こえてくる。先行して街へ戻った冒険者たちによって、ルルカ村での戦果が既に報告されていたのだ。

僕たちが扉を開けると、一瞬だけホールが静まり返り、次いで爆発的な歓声が上がった。

その人波をかき分け、僕たちは2階の執務室へと通された。

「何だとォ!? グリフィンを倒しただとォ!?」

執務室に入るなり、ギルド長のヴォルフが椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がり、両手を机にバンッ!と叩きつけた。

その隻眼は限界まで見開かれ、驚愕に染まっている。

「えぇ、まぁ……。なんとか運良く」

僕は頬をかきながら答えた。

激戦の疲労で服も顔も泥とすすにまみれていたが、恐怖に怯えていた以前の僕とは違う。確かな自信が胸の奥に宿っていた。

「運良く、でSランク魔獣が倒せるかッ!」

ヴォルフは天を仰いで呆れたように息を吐いた。

グリフィンといえば、熟練の騎士団が小隊を組んで、ようやく被害覚悟で討伐に挑むような空の脅威だ。それを、たった三人のパーティーが、しかもオーク50体の防衛戦の最中に討ち取ったなど、冒険者の常識を根底から覆す偉業だった。

「……全く。とんでもない奴らだ」

ヴォルフはドカッと椅子に座り直すと、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。

「よおし! ギルドマスターの権限において宣言する! 貴様ら『チーム・タロウ』は、今日この瞬間をもって『A級冒険者』とする! 規定のランクアップ試験や面倒な手続きは、俺の特例で全て免除だ!」

「「「ええええっ!?」」」

僕とサリー、そしてライザの声が見事にハモった。

Fランクから一気にA級への、なんと5階級特進。冒険者ギルドの歴史上でも前代未聞の昇格人事だ。

「そしてこれが、今回の緊急依頼の達成報酬、およびグリフィン討伐の特別報奨金だ。受け取れ!」

ドサッ!!!

重厚な革袋が二つ、机の上に置かれた。中からジャラジャラと美しい金属音が鳴る。

「合わせて、金貨100枚だ。持っていけ」

「き、金貨100枚!?」

日本円にして、およそ100万円。たった数週間前、ゴブリンを倒して銀貨5枚(5000円)で喜んでいた僕たちにとっては、文字通り世界がひっくり返るような大金だ。

「う、嘘でしょ……? 夢じゃないわよね?」

サリーが震える手で自分の頬を思い切りつねっている。

「やりましたね、サリー、太郎殿。これでもう、ギルドの誰からも初心者扱いされることはありませんわ」

ライザが誇らしげに微笑む。彼女にとっても、自分の護衛対象がこれほどの成果を挙げたことは、騎士として鼻が高いのだろう。

「僕たちが、A級冒険者……」

僕は呆然と呟いた。

数週間前まで、現代の日本で廃棄弁当の処理をしていただけのフリーター。そんな自分が、異世界でトップクラスの冒険者になり、大金を手にしたのだ。

背中のリュックに詰まった現代の知識(100均グッズ)と、この世界で出会ったかけがえのない仲間たちとの絆が、僕をここまで連れてきてくれた。

「流石、俺が見込んだ男だわい! ガハハハ!」

ヴォルフが豪快に笑い、僕の背中をバシバシと叩いた。

そして、僕の耳元に顔を寄せ、誰にも聞こえないような小声で耳打ちした。

「(……あの矢を使ったな?)」

「(……っ!)」

僕は息を呑み、ヴォルフの隻眼を見つめ返した。「街では使うな」という命令を破った僕を、彼が咎めることはなかった。

ヴォルフは優しく目を細め、静かに言葉を続けた。

「(まぁ、オークの密集陣形やグリフィン相手じゃ仕方あるまい。……よく村を、俺たちの民を守ってくれた。ギルド長として礼を言うぞ、英雄)」

「(……はい。ありがとうございます)」

僕とヴォルフは視線を交わし、深く頷き合った。

ヴォルフは執務室の扉を開け放ち、階下のホールに向かって腹の底から響く声で叫んだ。

「野郎共! 聞けぇ! ここにいる『チーム・タロウ』が、ルルカ村を救い、空の王者グリフィンの首を取った俺たちの英雄だ!!」

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!

ギルドの建物全体が震えるような、割れんばかりの歓声が爆発した。

冒険者たちが木製のジョッキを高く掲げ、口笛を吹き鳴らし、足を踏み鳴らして僕たちを讃える。

「すげぇぞ! 新人!」

「馬鹿野郎、A級の兄ちゃんだろ!」

「ルルカ村は俺の故郷なんだ! 俺たちの命の恩人だ! 乾杯!!」

そこにはもう、僕の珍妙な服装や、武器を持たない戦い方を馬鹿にする者は一人もいなかった。

あるのは、死線を越えた強者に対する「純粋な敬意」と「称賛」のみ。

「ありがとうございます!」

僕は照れくさそうに、しかし胸を張って、堂々と一階の冒険者たちに向かって手を振って応えた。

佐藤太郎の異世界での名は、この夜、アルクスの街に深く、そして力強く刻まれたのだった。

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