第240話「学び舎、十周年」
学び舎が開講してから、ちょうど十年の節目を迎えた。
「盛大な式典を開くことになりました」
王都から届いた知らせに、私は感慨深い気持ちになった。
式典の日、会場には、これまで関わってきた多くの人々が集まっていた。
「エリーゼ様……! お久しぶりです!」
真っ先に駆け寄ってきたのは、グレタだった。
「グレタさん、立派に学び舎を導いてくださって、ありがとうございます」
私がそう言うと、グレタは涙ぐみながら頭を下げた。
少し離れた場所には、リナとガレス夫妻、そしてすっかり成長した子どもたちの姿もあった。
「エリーゼ様、ご無沙汰しております」
リナが、微笑みながら挨拶に来た。
「こちらも、賑やかになりましたね」
私がそう言うと、リナは幸せそうに頷いた。
会場の中央には、アルヴィン様とフィオナ様、そして立派に成長したレイン王子の姿もあった。
「エリーゼ殿、この十年、お前たちの功績には、感謝してもしきれない」
アルヴィン様が、深く頭を下げた。
「殿下のご支援があってこそです」
私がそう答えると、アルヴィン様は静かに微笑んだ。
式典の壇上に、成長したソフィとエリナが並んで立った。
「この十年で、学び舎は五つの国に広がりました」
ソフィが、誇らしげに報告した。
「そして、多くの命が救われ、多くの学びが受け継がれてきました」
エリナが、そう続けた。
その光景に、私は胸が熱くなった。
崩れかけた温室から始まった、小さな願い。
それが今、こんなにも大きな輪となって広がっている。
「見事なものだな」
隣に立つカイルが、静かに呟いた。
「はい。……本当に」
少し離れた場所で、フェンが静かにその様子を見守っていた。
「お前が蒔いた種は、もう森になったな」
フェンの言葉に、私は静かに頷いた。
「みんなが、育ててくれたのです」
夕暮れ、会場に響く歓声を聞きながら、私は静かな幸福感に包まれていた。
この繋がりが、これからも、さらに遠くまで広がっていくことを、私は心から願った。
(第241話へ続く)




