第239話「里帰り」
認定式から数ヶ月後、エリナが久しぶりに薬草園へ帰ってきた。
「ただいま帰りました!」
馬車から降りたエリナは、以前よりもさらに凛とした佇まいになっていた。
「おかえりなさい、エリナ」
私が抱きしめると、エリナは嬉しそうに頬を寄せた。
「お母様、少し痩せましたか」
「エリナこそ、随分と逞しくなりましたね」
その言葉に、私たちは互いに笑い合った。
カイルも、静かにエリナを迎えた。
「立派になったな」
「はい、お父様。……たくさんのことを学びました」
その様子を、少し離れた場所からフェンが見つめていた。
「フェン……!」
エリナが駆け寄ると、フェンは嬉しそうに尻尾を揺らした。
「随分と、大人びた匂いになったものだ」
「フェンは、変わりませんね」
エリナがそう言って、その毛並みに顔を埋めた。
夕食の席で、エリナは学び舎での日々を、生き生きと語ってくれた。
「今は、湿地熱の研究をしているんです。……あの、レイアードで学んだ知識が、とても役に立っています」
「そうなのですね。……あなたの活躍が、誇らしいです」
私がそう言うと、エリナは少し照れくさそうに微笑んだ。
「実は、もう一つ、ご報告があります」
エリナが、改まった様子で切り出した。
「私、来年から、レイアード王国の湿地帯に、新しい分校を作る計画に関わることになりました」
その報告に、私は思わず息を呑んだ。
「まあ……! あの村に」
「はい。……お母様たちが救った、あの村です。……今度は、私が恩返しをする番だと思っています」
その言葉に、私は胸がいっぱいになった。
「エリナ、あなたは本当に、私たちの誇りです」
私がそう言うと、エリナは涙ぐみながら頷いた。
夜、静かになった薬草園で、私はカイルと並んで星空を見上げた。
「あの子は、俺たちよりも遠くまで、行くのかもしれないな」
カイルが、静かに呟いた。
「はい。……でも、それこそが、私たちの望んだことです」
私がそう答えると、カイルは静かに頷いた。
娘が紡いでいく、新しい物語。
その行く先を、私は心から楽しみに思っていた。
(第240話へ続く)




