第237話「娘からの手紙」
エリナが旅立って、一月が過ぎた頃。
「エリーゼ様、お手紙です」
ナーシャが、見覚えのある筆跡の封筒を届けてくれた。
「エリナからですね」
私は急いで、その封を開けた。
『お母様、お父様。……学び舎での暮らしにも、少しずつ慣れてきました』
『最初は緊張ばかりでしたが、ソフィ先生をはじめ、優しい方々に囲まれて、毎日充実しています』
その文面から、エリナの前向きな様子が伝わってきた。
『先日は、初めて実際の患者さんの治療に立ち会いました。……お母様の教えのおかげで、落ち着いて対応できました』
「本当に、頑張っているのですね」
私が思わず呟くと、隣で読んでいたカイルも、静かに頷いた。
手紙の最後には、こう綴られていた。
『いつか、お母様のように、誰かの支えになれる人になりたいです。……その日まで、精一杯学び続けます』
『薬草園のみんなに、よろしくお伝えください』
その一文一文に、私は目頭が熱くなった。
「立派になりましたね」
私がそう言うと、カイルは静かに微笑んだ。
「お前の背中を、しっかりと見て育ったんだろう」
その言葉に、私は静かに首を振った。
「あなたの背中もです。……二人で、育てましたから」
その返しに、カイルは少し照れくさそうに目をそらした。
少し離れた場所で、フェンが手紙の内容を聞いていた。
「随分と、しっかりした文章を書くようになったな」
「はい。……フェンも、嬉しいですか」
私が尋ねると、フェンは静かに頷いた。
「当然だ。……あいつは、俺にとっても大切な子だからな」
その言葉に、私は胸が温かくなった。
その夜、私は返事をしたためた。
『エリナへ。……あなたの成長を、心から誇りに思います』
『これからも、自分の信じる道を、まっすぐに歩んでください』
『いつでも、帰れる場所がここにあることを、忘れないでくださいね』
その一文一文に、母としての想いを込めながら。
窓の外では、穏やかな月明かりが、薬草園を静かに照らしていた。
(第238話へ続く)




