第232話「学び舎への旅」
「お母様、私も、あの学び舎を見てみたいです」
ある朝、エリナがそう切り出した。
「そうですね。……そろそろ、見せてあげる頃かもしれません」
私がそう答えると、エリナは目を輝かせた。
こうして、私たちは久しぶりに王都の学び舎へと向かうことになった。
到着すると、崩れかけていた温室は、見違えるほど立派な建物に生まれ変わっていた。
「これが……」
エリナは、その規模に思わず息を呑んだ。
「はい。……ここから、たくさんの人が薬草の知識を学んでいます」
私がそう説明していると、奥から見覚えのある姿が現れた。
「エリーゼ様……! お久しぶりです!」
ソフィだった。以前よりも、さらに凛とした佇まいになっていた。
「ソフィ、立派になりましたね」
私がそう言うと、ソフィは照れくさそうに笑った。
「この子が、エリナちゃんですか。……こんなに大きくなって」
ソフィが目を細めると、エリナは少し緊張した様子で頭を下げた。
「初めまして。……エリナです」
「まあ、しっかりしていること。……お母様に似ていますね」
その言葉に、エリナは嬉しそうに微笑んだ。
校舎の中を案内してもらうと、多くの生徒たちが真剣な顔で学んでいた。
「あの人たちは、みんな薬草のことを勉強しているのですか」
エリナが尋ねると、ソフィは頷いた。
「はい。……身分に関係なく、誰でも学べる場所です」
その説明に、エリナは何かを感じ取ったように、じっと生徒たちを見つめていた。
「私も、いつかここで教えたいです」
その言葉に、私とソフィは、思わず顔を見合わせて微笑んだ。
「エリナちゃんなら、きっと素晴らしい講師になれますよ」
ソフィがそう言うと、エリナは大きく頷いた。
帰り道、馬車に揺られながら、エリナは静かに窓の外を見つめていた。
「お母様。……私、決めました」
「何をですか」
「大きくなったら、この学び舎を、もっと大きくします」
その真剣な瞳に、私は胸が熱くなった。
「楽しみにしていますね」
私がそう答えると、エリナは誇らしげに微笑んだ。
母から娘へ、確かな想いが受け継がれていく瞬間だった。
(第233話へ続く)




