↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
230/240

第231話「五年後の朝」

あれから、五年の月日が流れた。


「お母様、おはようございます」


 朝の光の中、すっかり大きくなったエリナが、元気に居間へ駆けてきた。


「おはようございます、エリナ」


 私は微笑みながら、その成長した姿を見つめた。


 六歳になったエリナは、もう立派に薬草の見分け方を覚え、簡単な調合もこなせるようになっていた。


「今日は、村の見回りに行っていいですか」


 エリナがそう尋ねると、カイルが優しく答えた。


「一人で、大丈夫か」


「大丈夫です! もう、何度も行っていますから」


 その頼もしい返事に、カイルは静かに頷いた。


「気をつけて、行っておいで」


 薬草籠を背負い、エリナは元気よく駆けていった。


 その背中を見送りながら、私は静かな感慨を覚えた。


「随分と、しっかりしましたね」


 私がそう言うと、カイルも頷いた。


「ああ。……もう、俺たちの手を離れつつある」


 その言葉には、少しの寂しさと、それ以上の誇らしさが滲んでいた。


 少し離れた場所で、フェンが穏やかに日向ぼっこをしていた。


「フェンも、随分と落ち着いたものですね」


 私がそう声をかけると、フェンは片目を開けた。


「歳を取ったのだろう。……もっとも、聖獣の時間の流れは、お前たちとは違うがな」


 その飄々とした答えに、私は思わず笑ってしまった。


 昼過ぎ、エリナが村から戻ってきた。


「お母様! 大きな怪我をした人がいて、ちゃんと手当てできました!」


 その誇らしげな報告に、私は心から喜んだ。


「よくやりましたね、エリナ」


「はい! これからも、もっと勉強します」


 その真剣な瞳に、私はかつての自分を重ねた。


 七年前、何も持たずに屋敷を出た私。


 今、私の隣には、愛する家族と、確かな未来を歩む娘がいる。


 夕暮れ、薬草園を照らす橙色の光の中で、私は静かに幸せを噛み締めていた。


 この穏やかな日々が、これからもずっと続いていきますように。


 その願いを胸に、私は今日という一日を、大切に締めくくった。


(第232話へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。