第230話「王家の跡継ぎ」
夏の盛り、王都から早馬が届いた。
「エリーゼ様……! 王妃様が、ご出産されたそうです!」
ナーシャが、息を切らしながら知らせを届けた。
「本当ですか……!」
私は思わず立ち上がった。
「すぐに、お祝いに向かいましょう」
カイルも、すぐに支度を始めた。
王城に到着すると、アルヴィン様が満面の笑みで出迎えてくれた。
「エリーゼ殿、カイル。……よく来てくれた」
その表情には、これまで見たことのないほどの喜びが溢れていた。
「王妃様は、お元気ですか」
私が尋ねると、アルヴィン様は大きく頷いた。
「ああ。……母子ともに健やかだ」
案内された部屋には、フィオナ様が、小さな赤子を抱いて微笑んでいた。
「エリーゼ様、ようこそ」
「おめでとうございます、フィオナ様」
私がそう言うと、フィオナ様は嬉しそうに、赤子を見せてくれた。
「男の子です。……名は、レインと名付けました」
その名を聞いて、私は静かに微笑んだ。
「素敵な名前ですね」
「はい。……未来に、豊かな恵みをもたらすようにと」
フィオナ様の声には、深い愛情がこもっていた。
少し離れた場所で、エリナがその赤子を、興味深そうに覗き込んでいた。
「ちいさい……」
その呟きに、私は思わず笑ってしまった。
「エリナも、こんなに小さかったのですよ」
私がそう言うと、エリナは信じられないという顔をした。
アルヴィン様が、そっとレインの頬に触れた。
「この子には、お前たちのような温かい世界を、見せてやりたい」
その言葉に、私は静かに頷いた。
「きっと、素晴らしい治世になります」
「そう願いたいものだ」
アルヴィン様は、静かに微笑んだ。
夜、王城の窓から見える夜空に、私は静かな感慨を覚えていた。
新しい命が、また一つ、この世界に迎えられた。
その命が、これからどんな未来を紡いでいくのか。
私はその成長を、心から楽しみに思った。
(第231話へ続く)




