第229話「小さな見習い」
新年が明けて、エリナは二歳になろうとしていた。
「エリナ、これは何でしょう」
ある日、私が薬草を差し出すと、エリナは興味深そうにその葉を見つめた。
「はっぱ」
「そうです。……これは、熱を下げる薬草ですよ」
私がそう説明すると、エリナは真剣な顔で、その葉の匂いを嗅いだ。
「におい、する」
その様子に、私は思わず微笑んだ。
「エリナも、いつか薬草のことを勉強したいですか」
私がそう尋ねると、エリナは大きく頷いた。
「する! エリナも、みんなを、たすける!」
その言葉に、私は胸が熱くなった。
カイルが、その様子を静かに見守っていた。
「もう、そんなことを言うのか」
「はい。……あなたの娘は、優しい心を持っています」
私がそう言うと、カイルは静かに目を細めた。
その日から、エリナは薬草園での手伝いを、少しずつ始めるようになった。
「エリナ、この鉢を運んでください」
私が小さな鉢を渡すと、エリナは慎重に、それを運んでいった。
「できました!」
その誇らしげな顔に、周りの大人たちも、温かい拍手を送った。
フェンも、その様子を興味深そうに見つめていた。
「筋がいいな」
フェンがそう呟くと、エリナは嬉しそうに駆け寄った。
「フェン、みてて!」
そう言って、エリナは覚えたばかりの葉の名前を、一つずつ挙げていった。
「よく覚えたものだ」
フェンは、感心したように頷いた。
夕方、疲れて眠ってしまったエリナを見つめながら、私は静かな感慨を覚えていた。
この子もまた、いつか誰かを助ける人になるのかもしれない。
その未来を、私は静かに思い描いた。
「良い後継者になりそうだな」
カイルが、静かに呟いた。
「はい。……でも、まだ二歳です。焦らせないようにしましょう」
私がそう言うと、カイルは小さく笑った。
「お前らしい考えだ」
薬草園に、また一つ、新しい未来の芽が育まれていた。
その成長を見守れることが、私にとって何よりの喜びだった。
(第230話へ続く)




