第227話「エリナの初雪」
冬の訪れとともに、薬草園にも初雪が降った朝。
「エリナ、見てください」
私が窓の外を指差すと、エリナは目を輝かせて駆け寄ってきた。
「わあ……!」
真っ白に染まった庭を見て、エリナは声を上げた。
「あれは、雪というものです」
私がそう説明すると、エリナは不思議そうに窓に手を当てた。
「冷たい、ですよ」
カイルが、そっとエリナの頭を撫でた。
「外に、出てみますか」
私がそう尋ねると、エリナは大きく頷いた。
厚着をさせて外に出ると、エリナは真っ白な庭に、恐る恐る足を踏み入れた。
「つめたい……!」
その声に、私とカイルは思わず笑ってしまった。
少し慣れてくると、エリナは雪を両手ですくって、嬉しそうに掲げた。
「エリナ、こうやって丸めるのですよ」
私が小さな雪玉を作って見せると、エリナも真似をして、不格好な塊を作った。
「できました!」
その誇らしげな顔に、私は胸が温かくなった。
庭の奥から、フェンがゆっくりと近づいてきた。
「賑やかだと思えば」
フェンがそう言うと、エリナは作った雪玉を、その大きな身体に向かって投げつけた。
「エリナ、駄目です!」
私が慌てて止めようとしたが、フェンは動じずに、その雪玉を軽く受け止めた。
「元気なことだ」
フェンの声には、確かな優しさがあった。
その反応に気を良くしたエリナが、また雪をすくおうとしゃがみ込んだ。
「ほどほどにな」
カイルが、苦笑しながらエリナを抱き上げた。
昼下がり、暖炉のそばで温かいスープを飲みながら、エリナは満足げな顔をしていた。
「楽しかったですか」
私が尋ねると、エリナは大きく頷いた。
「また、遊びましょうね」
その言葉に、エリナは嬉しそうに笑った。
窓の外では、雪がしんしんと降り積もっていた。
薬草園に、また一つ、季節の移ろいとともに、あたたかい思い出が刻まれていった。
(第228話へ続く)




