第226話「収穫祭」
秋の訪れとともに、村では毎年恒例の収穫祭が開かれることになった。
「今年は、エリナも一緒に参加できますね」
私がそう言うと、カイルは嬉しそうに頷いた。
「ああ。……去年は、まだ抱っこされているだけだったからな」
当日、薬草園から村の広場まで、私たちは家族揃って歩いた。
広場には、色とりどりの旗が飾られ、収穫された野菜や果物が山のように積まれていた。
「エリーゼ様、こちらへどうぞ!」
村の子どもたちが、私たちを手招きした。
エリナは、その賑やかな光景に、目を輝かせていた。
「たくさんの人ですね」
私がそう言うと、エリナは興奮したように手を振った。
広場の中央では、豊作を祝う踊りが始まっていた。
「エリナも、踊ってみますか」
私がそう尋ねると、エリナは小さな足で、その場でぴょんぴょんと跳ねた。
その様子に、周りの大人たちが微笑ましそうに見守っていた。
「随分と、賑やかな祭りだな」
少し離れた場所から、フェンがのんびりと眺めていた。
「フェンも、参加しませんか」
私が声をかけると、フェンは鼻を鳴らした。
「俺は、見ているだけでいい」
そう言いながらも、村の子どもたちが駆け寄ると、フェンは嫌がる素振りも見せずに、その相手をしていた。
夕方、収穫を祝う焚き火が焚かれ、みんなでご馳走を囲んだ。
「今年も、良い収穫でした」
村長が、感謝の言葉を述べた。
「エリーゼ様の学び舎のおかげで、病に倒れる者も減りました」
その言葉に、私は静かに頭を下げた。
「みなさんの努力の賜物です」
カイルが、そっと私の肩に手を置いた。
「お前が始めたことが、こうして村の暮らしを支えている」
「はい。……とても、嬉しいです」
私はそう答えながら、静かな充実感を覚えていた。
夜が更け、眠くなったエリナを抱きながら、私は星空を見上げた。
豊かな実りと、あたたかい人々の輪。
その両方に恵まれた暮らしに、私は静かな感謝を感じていた。
薬草園に帰る道すがら、エリナはすでに、私の腕の中で穏やかな寝息を立てていた。
(第227話へ続く)




