↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
225/240

第226話「収穫祭」

秋の訪れとともに、村では毎年恒例の収穫祭が開かれることになった。


「今年は、エリナも一緒に参加できますね」


 私がそう言うと、カイルは嬉しそうに頷いた。


「ああ。……去年は、まだ抱っこされているだけだったからな」


 当日、薬草園から村の広場まで、私たちは家族揃って歩いた。


 広場には、色とりどりの旗が飾られ、収穫された野菜や果物が山のように積まれていた。


「エリーゼ様、こちらへどうぞ!」


 村の子どもたちが、私たちを手招きした。


 エリナは、その賑やかな光景に、目を輝かせていた。


「たくさんの人ですね」


 私がそう言うと、エリナは興奮したように手を振った。


 広場の中央では、豊作を祝う踊りが始まっていた。


「エリナも、踊ってみますか」


 私がそう尋ねると、エリナは小さな足で、その場でぴょんぴょんと跳ねた。


 その様子に、周りの大人たちが微笑ましそうに見守っていた。


「随分と、賑やかな祭りだな」


 少し離れた場所から、フェンがのんびりと眺めていた。


「フェンも、参加しませんか」


 私が声をかけると、フェンは鼻を鳴らした。


「俺は、見ているだけでいい」


 そう言いながらも、村の子どもたちが駆け寄ると、フェンは嫌がる素振りも見せずに、その相手をしていた。


 夕方、収穫を祝う焚き火が焚かれ、みんなでご馳走を囲んだ。


「今年も、良い収穫でした」


 村長が、感謝の言葉を述べた。


「エリーゼ様の学び舎のおかげで、病に倒れる者も減りました」


 その言葉に、私は静かに頭を下げた。


「みなさんの努力の賜物です」


 カイルが、そっと私の肩に手を置いた。


「お前が始めたことが、こうして村の暮らしを支えている」


「はい。……とても、嬉しいです」


 私はそう答えながら、静かな充実感を覚えていた。


 夜が更け、眠くなったエリナを抱きながら、私は星空を見上げた。


 豊かな実りと、あたたかい人々の輪。


 その両方に恵まれた暮らしに、私は静かな感謝を感じていた。


 薬草園に帰る道すがら、エリナはすでに、私の腕の中で穏やかな寝息を立てていた。


(第227話へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。