第225話「約束の再会」
エリナの一歳の誕生日から、しばらく経ったある日。
「そろそろ、リヴァとの約束を果たしましょうか」
私がそう切り出すと、カイルは静かに頷いた。
「ああ。……エリナも、もう長旅に耐えられる歳だ」
フェンも、嬉しそうに耳を立てた。
「リヴァも、待ちわびているだろう」
こうして、私たちは久しぶりにレイアード王国へと向かうことになった。
フェンの背に揺られながら、エリナは物珍しそうに、流れる景色を眺めていた。
「エリナ、怖くないですか」
私が尋ねると、エリナは楽しそうに手を叩いた。
「あー、あー!」
その無邪気な反応に、私は思わず笑ってしまった。
森に着くと、以前とはまるで違う、青々とした光景が広がっていた。
「見違えるようですね」
私がそう呟くと、木々の奥から、大きな黒い影が姿を現した。
「よく来たな」
リヴァだった。以前の痛々しい姿とは違い、その毛並みは艶やかに輝いていた。
「リヴァ、お元気そうで何よりです」
私がそう言うと、リヴァは静かに頷いた。
「お前たちのおかげだ」
そして、リヴァの視線が、私の腕の中のエリナに向いた。
「この子が、エリナか」
「はい。……会わせたかったのです」
私がそう答えると、リヴァはゆっくりと近づいてきた。
エリナは、大きな黒い狼を見て、少し驚いたように目を丸くした。
「怖がらせるなよ」
フェンが、心配そうに口を挟んだ。
「わかっている」
リヴァは、そっと鼻先をエリナに近づけた。
エリナは、しばらくじっとその鼻先を見つめて、それから小さな手を伸ばした。
「わんわん」
その言葉に、リヴァは意外そうに目を見開いた。
「随分な呼び方だな」
その様子に、私たちは思わず笑ってしまった。
「エリナなりの、親しみの表現だと思います」
私がそう言うと、リヴァは静かに喉を鳴らした。
「悪くない」
その一言に、森の空気が、あたたかく和んでいくのを感じた。
夕暮れ、緑を取り戻した森を歩きながら、私は静かな喜びを感じていた。
約束を果たせたこと。そして、新しい絆が、また一つ結ばれたこと。
その両方が、私の心を満たしていた。
(第226話へ続く)




