第224話「一歳の誕生日」
エリナが生まれてから、ちょうど一年が経った。
「今日は、特別な日ですね」
朝、私がそう言うと、カイルは静かに頷いた。
「ああ。……あっという間の一年だった」
薬草園には、朝から賑やかな準備の音が響いていた。
「お花、たくさん飾りましょう!」
ナーシャが、庭中の花を集めて回っている。
「ケーキも、腕によりをかけて作りますからね」
マーサさんも、張り切って台所に立っていた。
昼過ぎ、王都からアルヴィン様とフィオナ様が訪れた。
「誕生日、おめでとう」
アルヴィン様が、丁寧に包まれた贈り物を差し出した。
「殿下、わざわざありがとうございます」
私がそう言うと、フィオナ様も優しく微笑んだ。
「小さな靴です。……よければ、使ってあげてください」
「素敵な贈り物ですね。……ありがとうございます」
夕方には、レイアードからハルト殿の使いも、祝いの品を届けてくれた。
「リヴァ様からも、お祝いのお言葉を預かっております」
その伝言に、私は思わず微笑んだ。
薬草園の中庭に、みんなが集まった。
「エリナ、みんなが、あなたの誕生日を祝いに来てくれましたよ」
私がそう言うと、エリナは不思議そうに、周りを見渡した。
「わあ、可愛い」
村の子どもたちも、次々と駆け寄ってきた。
「エリナちゃん、お誕生日おめでとう!」
その賑やかな声に、エリナは嬉しそうに手を叩いた。
ケーキが運ばれてくると、エリナは目を輝かせた。
「エリナ、一つだけですよ」
私がそう言いながら、小さな一切れを差し出した。
エリナは、両手でしっかりとそれを掴み、満足そうに頬張った。
「美味しい、ですか」
私が尋ねると、エリナは大きく頷いた。
その様子を、フェンが少し離れた場所から見守っていた。
「随分と、賑やかな日だな」
「はい。……こんなにも、たくさんの人に祝ってもらえて」
私がそう言うと、フェンは静かに目を細めた。
「これからも、こうして祝える日が、たくさん続くといい」
その言葉に、私は静かに頷いた。
夕暮れの薬草園に、みんなの笑い声が満ちていく。
一年という時間の重みを、私は静かに胸に刻んだ。
(第225話へ続く)




