第223話「学び舎の便り」
ソフィが旅立ってから、半年が過ぎた。
「エリーゼ様、学び舎から手紙です」
ナーシャが、分厚い封筒を届けに来た。
差出人は、ソフィだった。
私は懐かしさを覚えながら、封を開けた。
『エリーゼ様。ご無沙汰しております。……学び舎の講師として、無我夢中で働く毎日です』
『最初は緊張ばかりでしたが、少しずつ、生徒たちとの信頼関係が築けてきました』
その文面から、ソフィの充実した様子が伝わってきた。
『実は、嬉しいご報告があります。……私の教えた生徒が、村で流行した風邪を、見事に治療してみせたそうです』
『エリーゼ様に教わったことを、次の世代へ繋げられていると思うと、胸がいっぱいになります』
私は、思わず目頭が熱くなった。
「良い報告ですね」
隣で読んでいたカイルも、静かに頷いた。
手紙には、もう一枚、追伸が添えられていた。
『それから、グレタさんが、学び舎の運営責任者に正式に就任しました』
『祖母の名を継ぐように、立派に学び舎を導いてくれています』
その一文に、私は静かに微笑んだ。
「グレタさんも、頑張っているのですね」
私がそう言うと、フェンが静かに近づいてきた。
「あの薔薇の一件から、随分と時が経ったな」
フェンの言葉に、私は懐かしい記憶を思い出した。
「本当に。……あの頃は、まさかここまで大きくなるとは思っていませんでした」
崩れかけた温室から始まった、小さな願い。
それが今や、多くの命を救う場所へと成長していた。
夕方、私はエリナを膝に乗せながら、手紙を読み聞かせた。
「エリナ。……あなたが大きくなる頃には、この学び舎は、もっとたくさんの人を助けているでしょうね」
エリナは、まだ言葉の意味はわからないだろうに、じっと私の顔を見つめていた。
「いつか、あなたも見に行きましょう」
私がそう囁くと、エリナは小さく笑った。
薬草園に、また一つ、あたたかい繋がりが確かめられた夜だった。
遠く離れた場所でも、想いは確かに繋がっている。
その事実が、私の心を静かに満たしていた。
(第224話へ続く)




