第218話「リナの選択」
ソフィが旅立ってからしばらく経った頃、王都からリナが訪ねてきた。
「エリーゼ様……! お久しぶりです」
リナは、以前よりも明るい表情をしていた。
「リナ、よく来てくれました」
私は嬉しくなって、彼女を迎え入れた。
「エリナちゃん……! なんて可愛らしい」
リナは、エリナを覗き込んで目を細めた。
「よければ、抱いてみますか」
「よろしいのですか」
私が差し出すと、リナは慎重にエリナを抱いた。
「あたたかい……」
その声には、しみじみとした感慨があった。
お茶を淹れながら、私はリナに近況を尋ねた。
「王城での暮らしは、どうですか」
「実は……」
リナは少し照れくさそうに、頬を赤らめた。
「侍女長への昇進が決まりました」
「まあ……! おめでとうございます」
私は思わず声を上げた。
「あの離縁の朝から、ずっと頑張ってきた甲斐がありましたね」
私がそう言うと、リナは静かに頷いた。
「エリーゼ様のおかげです。……あの時、勇気を出して封筒を渡したことが、私の人生を変えました」
その言葉に、私は胸が熱くなった。
「実は、もう一つ。……ご報告したいことが」
リナが、頬を染めながら続けた。
「王城の護衛騎士の方と、婚約することになりました」
その報告に、私は思わず立ち上がった。
「本当ですか……! おめでとうございます!」
「ありがとうございます。……エリーゼ様の幸せそうな姿を見て、私も、勇気を出そうと思えたんです」
その言葉に、私は静かに微笑んだ。
「あなたも、幸せになる資格が十分にあります」
私がそう言うと、リナは涙ぐみながら頷いた。
夕方、リナを見送りながら、私は静かな感慨を覚えていた。
七年前、あの離縁の朝に震える手で封筒を差し出した侍女。
彼女もまた、自分の人生を歩み始めていた。
「また、遊びに来てください」
私がそう言うと、リナは大きく頷いた。
「はい。……次は、婚約者も連れて参ります」
その笑顔を見送りながら、私は静かに、みんなの幸せを願った。
一人、また一人と、それぞれの人生が花開いていく。
その光景を見守れることが、何よりの喜びだった。
(第219話へ続く)




