第217話「ソフィの決意」
レイアードから戻って、しばらく経ったある日。
ソフィが、いつになく緊張した面持ちで、私のもとを訪れた。
「エリーゼ様。……折り入って、お話ししたいことがあります」
その真剣な様子に、私は手を止めて向き直った。
「どうしましたか」
「私……学び舎の講師として、正式に働きたいと思っています」
その言葉に、私は少し驚いて、それから静かに微笑んだ。
「本気なのですね」
「はい。……エリーゼ様のもとで学んだこの数年間、ずっと考えていました」
ソフィは、まっすぐに私を見つめた。
「困っている人に、直接知識を届けたいんです。……エリーゼ様がそうしてくださったように」
その言葉に、私は胸が熱くなった。
「あなたなら、きっと素晴らしい講師になれます」
私がそう言うと、ソフィの目に涙が滲んだ。
「本当、ですか」
「はい。……これまでの努力を、私は誰よりも見てきましたから」
私の言葉に、ソフィは深く頭を下げた。
「ありがとうございます……!」
その様子を、少し離れた場所からカイルが見守っていた。
「随分と、立派になったな」
カイルが静かに言った。
「はい。……最初は、まだあどけない少女でしたのに」
私はそう答えながら、感慨深い気持ちになった。
夕方、フェンがソフィに声をかけた。
「一人で、王都へ行くのか」
「はい。……不安もありますが、頑張ります」
ソフィがそう答えると、フェンは静かに頷いた。
「困ったことがあれば、いつでも戻ってこい。……ここは、お前の帰る場所でもある」
その言葉に、ソフィは涙をこぼしながら笑った。
「ありがとうございます、フェンさん」
数日後、旅立ちの朝。
薬草園の前で、私たちはソフィを見送った。
「行ってきます!」
ソフィは、晴れやかな笑顔で手を振った。
その背中は、初めて出会った頃とは比べものにならないほど、頼もしく見えた。
私は、エリナを抱きながら、その姿が見えなくなるまで見送り続けた。
——また一人、新しい一歩を踏み出した。
薬草園から、確かな未来が広がっていくのを、私は静かに感じていた。
(第218話へ続く)




