第211話「二度目の訪問」
翌朝、私たちは再び森の奥へと向かった。
昨日と同じ場所に、リヴァは横たわっていた。
「まだ、諦めていなかったのか」
リヴァの声には、かすかな驚きが滲んでいた。
「当然だ」
フェンが、静かに答えた。
私は持ってきた包みを、そっと地面に置いた。
「これは」
「薬草を煮込んだスープです。……よければ」
私がそう言うと、リヴァは疑わしげに鼻を鳴らした。
「食欲などない」
「それでも、少しだけでも」
私は諦めずに、その場に腰を下ろした。
「今日は、帰りません」
その言葉に、リヴァは苛立たしげに唸った。
「うるさい人間だ」
「よく言われます」
私が笑うと、リヴァは意外そうに目を見開いた。
少し離れた場所で、カイルとフェンが静かに座り込んだ。
「私も、待ちます」
カイルがそう言うと、フェンも黙って頷いた。
時間が、静かに過ぎていった。
誰も何も話さない、けれど確かな時間だった。
やがて、日が傾き始めた頃。
「……なぜ、そこまでする」
リヴァが、ぽつりと呟いた。
「見ず知らずの獣のために」
「フェンの友人は、私の友人でもあります」
私は静かに答えた。
「それに」
「それに?」
「悲しみを、独りで抱えるのは辛いことだと知っています。……だから、放っておけません」
私の言葉に、リヴァはしばらく黙り込んだ。
その瞳の奥に、わずかに、以前とは違う何かが揺れているように見えた。
「今日は、これで帰ります」
私はそう言って、静かに立ち上がった。
「また、明日も来ます」
「……好きにしろ」
その素っ気ない返事に、私は少しだけ微笑んだ。
帰り道、カイルが静かに私の隣に並んだ。
「少しずつだが、変化がある気がする」
「はい。……焦らず、続けましょう」
夕暮れの森を歩きながら、私は静かな手応えを感じていた。
小さな一歩が、確かに積み重なっていた。
(第212話へ続く)




