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205/242

第205話「遠方からの便り」

エリナが生まれて、二月が過ぎた。


 寝返りを打てるようになったエリナは、日に日に表情も豊かになっていた。


「今日は、よく笑いますね」


 私がそう言うと、エリナは小さな声で「あー」と応えるように笑った。


「本当だ。……可愛いな」


 カイルも、目を細めてその様子を見守っていた。


 穏やかな昼下がり、ナーシャが一通の手紙を届けに来た。


「エリーゼ様、レイアード王国から届きました」


 差出人は、あのハルト殿だった。


 私は懐かしさを覚えながら、封を開けた。


『エリーゼ様。ご出産、心よりお祝い申し上げます』


『こちらでは、湿地熱の再発もなく、村の人々も元気に過ごしております』


 その一文に、私はほっと胸をなで下ろした。


『ですが、一つ気になる報告がございます』


 その先の文面に、私は思わず眉を寄せた。


『湿地のさらに奥、深い森の周辺で、原因不明の異変が起きているとの噂が届いております』


『動物たちが姿を消し、木々が枯れ始めているとか。……まだ確証はありませんが、念のためお耳に入れておきたく』


 その文章を読み終えて、私はしばらく黙り込んだ。


「どうした」


 カイルが、私の様子に気づいて尋ねた。


「レイアードの、森の奥で。……何か、異変が起きているそうです」


 私はそう説明しながら、手紙をカイルに渡した。


 カイルは真剣な顔で文面に目を通した。


「まだ、確証はないようだな」


「はい。……でも、少し気になります」


 窓の外で、フェンがふと耳を立てた。


「深い森、か」


「フェン、何か知っているのですか」


 私が尋ねると、フェンはしばらく黙って、遠い目をした。


「……いや。まだ、確かなことは言えん」


 その様子に、私はかすかな胸騒ぎを覚えた。


「もし何かあれば、また力になりたいと思います」


 私がそう言うと、カイルは静かに頷いた。


「ああ。……その時は、俺たちも一緒だ」


 その言葉に、私は静かに微笑んだ。


 まだ、何が起きているのかはわからない。


 けれど、遠い森の異変が、静かに私たちの日常に影を落とし始めていた。


 エリナを抱きながら、私はその小さな温もりを、より一層大切に感じていた。


(第206話へ続く)

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