第202話「小さな家族」
エリナが生まれてから、三日が過ぎた。
薬草園には、次々と祝いの声が届いていた。
「エリーゼ様、おめでとうございます!」
ソフィが、花束を抱えて駆けてきた。
「わあ……! 本当に小さいのですね」
ソフィは腕の中のエリナを覗き込んで、目を輝かせた。
「触れても、いいですか」
「そっとであれば」
私がそう言うと、ソフィは慎重に、小さな手に指を添えた。
「あたたかい……」
その声には、感動が滲んでいた。
マーサさんとナーシャも、代わる代わるエリナを覗き込んでは、優しい笑みをこぼしていた。
「本当に、可愛らしい」
マーサさんが、目を細めて言った。
「エリーゼ様に似て、賢そうな顔をしていますね」
ナーシャの言葉に、私は思わず笑ってしまった。
午後、王都からアルヴィン様が急な訪問をしてきた。
「知らせを聞いて、居ても立ってもいられなくて」
彼は珍しく、少し息を切らしていた。
「わざわざ、ありがとうございます」
私がそう言うと、アルヴィン様は恐る恐る、エリナに視線を向けた。
「触れても、大丈夫だろうか」
「はい。……どうぞ」
私が差し出すと、アルヴィン様は緊張した面持ちで、小さな指に触れた。
「……なんと、小さいのだ」
その呟きに、カイルが小さく笑った。
「兄上でも、そういう顔をするんだな」
「馬鹿を言うな。……甥か姪ができれば、誰でもこうなる」
アルヴィン様は、少し照れくさそうに答えた。
その様子を見ていたフェンが、静かに近づいてきた。
「随分と、賑やかだな」
「フェンも、抱いてみますか」
私が尋ねると、フェンは一瞬、驚いた顔をした。
「……俺には、無理だろう」
「大丈夫です。……あなたなら」
私がそう言うと、フェンは慎重に姿勢を低くした。
私はそっと、エリナをフェンの前足の間に預けた。
フェンは、息を止めるように静かに、その小さな命を見守った。
「……壊れそうなほど、儚いな」
その声には、いつにない優しさがあった。
「だが、確かに、強い命だ」
その言葉に、私は静かに頷いた。
薬草園に、家族が一人増えた喜びが、あたたかく満ちていた。
この小さな命を、みんなで大切に見守っていく。
その確かな決意が、静かに胸に根付いていた。
(第203話へ続く)




