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181/182

第181話「二人だけの休日」

「たまには、休みを取ろう」


 ある朝、カイルがそう切り出した。


「ソフィも成長しましたし。……少し、二人で出かけませんか」


 私が答えると、彼は静かに頷いた。



「フェン、留守を頼めますか」


 私が尋ねると、フェンは、ふん、と鼻を鳴らした。


「たまには、二人で行ってこい。……ソフィと村の様子は、俺が見ておく」


 その思いやりに、私は微笑んだ。



 こうして、私とカイルは二人だけで、薬草園から少し離れた丘へと足を運んだ。


「ここは……」


「昔から好きな場所だ」とカイルが答えた。



 丘の頂上からは、薬草園と村の全景が見渡せた。


 緑の畑、小さな家々、そして——遠くに、白いフェンの姿。


「綺麗な景色ですね」


 私が呟くと、カイルは静かに頷いた。



「昔は、ここによく一人で来ていた」


 彼は静かに語り始めた。


「兄上と比べられて。……何もうまくいかなかった頃」


「この景色を見ると、少しだけ心が軽くなった」



「今は?」


 私が尋ねると、カイルは少し考えて。


「今は……お前とこの景色を見られることが。何よりの幸せだ」


 その率直な言葉に、私の頬が思わず熱くなった。



 私たちは丘の上で、持ってきたお弁当を広げた。


 マーサさんが作ってくれた、サンドイッチと果物。


「美味しいですね」


「ああ」



 風がそよぎ、草花の香りが漂う。


 穏やかな時間が、静かに流れていった。


「エリーゼ」


 カイルがふと、私の手をそっと握った。



「これからも。……ずっとこうして、一緒にいたい」


 その素直な言葉に、私は深く頷いた。


「はい。……私も、同じ気持ちです」



 夕暮れが近づく頃。私たちは手を繋いだまま、丘を下りた。


 薬草園が見えてくると、ソフィとフェンがこちらに気づいて、手を振ってくれた。



「おかえりなさい!」


 ソフィの明るい声が響く。


 私たちの日常が、また、いつものように続いていく。


 けれど、今日という特別な一日が、私の胸に確かに刻まれていた。


(第182話へ続く)

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