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第182話「王子の来訪」

ある晴れた日、薬草園の前に豪華な馬車が止まった。


「エリーゼ様、王都からお客様が!」


 ナーシャの慌てた声に、私は驚いて外へ出た。



 馬車から降りてきたのは——アルヴィン様、その人だった。


「突然、すまない。……手紙に書いた通り、遊びに来てしまった」


 その少し悪戯っぽい笑みに、私は思わず笑ってしまった。



「歓迎いたします、殿下」


「堅苦しい挨拶はいらないよ」


 アルヴィン様は周りを見渡しながら、静かに言った。


「噂に聞いていた薬草園。……なるほど、素晴らしい場所だ」



「フェン」


 彼はフェンの姿を見つけると、丁寧に頭を下げた。


「息災そうで何よりだ」


 フェンは少し意外そうな顔をして、それから、ふん、と鼻を鳴らした。



「多少は礼儀を覚えたようだな」


「厳しい聖獣殿だ」


 アルヴィン様が苦笑した。その気安いやり取りに、私は二人の変化を感じた。



 案内された薬草園の見学で、アルヴィン様は興味深そうにあちこちを見て回った。


「これは何の薬草だ?」


「これは高熱を抑える薬草です」


 私が説明すると、彼は真剣な顔でメモを取り始めた。



「実は」


 彼はふと、真面目な表情になった。


「この国に薬草学の学び舎を作りたいと考えている」


 その言葉に、私は目を見開いた。



「エリーゼ殿の知識を。……もっと多くの人に伝えられないかと」


「もし力を貸してくれるなら。……この上ない助けになる」


 その真剣な瞳に、私は静かに頷いた。



「喜んで。……お手伝いさせてください」


 その返事に、アルヴィン様はほっとしたように微笑んだ。


「ありがとう。……頼りにしているよ」



 ソフィもその話を聞いて、目を輝かせた。


「私もいつか、そんな学び舎で教えられるようになりたいです!」


 その意気込みに、アルヴィン様が笑った。



「見どころのある弟子を持ったようだな、エリーゼ殿」


「はい。……私の自慢の弟子です」


 私が答えると、ソフィははにかんで頬を赤らめた。



 夕暮れ、王都へと帰るアルヴィン様を、みんなで見送った。


「また来る。……今度はゆっくり滞在させてくれ」


 その言葉を残して、彼の馬車は夕焼けの道を進んでいった。



「新しい繋がりが、また一つ増えましたね」


 私が呟くと、カイルが静かに頷いた。


「ああ。……この薬草園から、また新しい何かが始まりそうだ」


 薬草園の未来に、新しい光が差し込んでいた。


(第183話へ続く)

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