第177話「ソフィとフェン」
薬草園に来て数日が過ぎたが、ソフィはまだ、フェンに慣れずにいた。
「あ、あの、大きな……聖獣様、ですよね」
フェンの姿を見るたび、ソフィは少し身をこわばらせる。
◆
「そんなに怖がらなくても、大丈夫ですよ」
私が言うと、ソフィは恐る恐る頷いた。
「わかってはいるのですが……。あんなに大きくて」
その声は、まだ震えていた。
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そんな、ある日のこと。
薬草を運ぼうとしたソフィが、足を滑らせた。
「きゃっ……!」
大きな籠を抱えたまま、地面に倒れ込みそうになる。
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その瞬間。
さっと、フェンが身体を滑り込ませた。
ふかふかの毛並みが、ソフィの落下を優しく受け止める。
◆
「……大丈夫か」
フェンの低い声に、ソフィは目を丸くした。
「あ……ありがとう、ございます」
彼女は恐る恐る、その毛並みに触れた。
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「わ……あったかい」
ソフィの声が、思わずこぼれた。
「それに、ふわふわで……」
その素直な感想に、フェンは少し照れくさそうに、目を逸らした。
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「べつに、大したことじゃない」
そう言いながらも、フェンはソフィを立たせるまで、その場を動かなかった。
その様子を見ていた私は、思わず微笑んだ。
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それから、ソフィは少しずつ、フェンに慣れていった。
休憩の時間には、その大きな身体に寄りかかって、休むようになった。
「フェン様、今日もお疲れ様です」
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「様、はいらん」
フェンがぶっきらぼうに答える。
「フェンさん、では?」
「フェンでいい」
そのやり取りに、私は思わず笑ってしまった。
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ある夕暮れ、ソフィがフェンの毛並みに顔を埋めながら呟いた。
「フェン様……フェンは。すごく優しいですね」
「……別に」
フェンはそっぽを向きながらも、その身体を引かなかった。
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「最初は怖かったけれど。……今は、大好きです」
ソフィの素直な言葉に、フェンの尻尾が、わずかに揺れた。
「……調子のいいやつだ」
その声は、まんざらでもなさそうだった。
◆
薬草園の夕暮れに、もふもふの聖獣と、その新しい友人の姿があった。
私はその微笑ましい光景を、静かに見守った。
——こうして、家族の輪が、また一つ広がっていく。
(第178話へ続く)




