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第175話「弟子入りの願い」

ある朝、薬草園の門の前に、一人の少女が立っていた。


 粗末な旅装に、大きな背嚢。年の頃は、十五、六歳だろうか。その瞳には、強い意志の光が宿っていた。



「あの……!」


 少女は私を見つけると、勢いよく頭を下げた。


「私を、弟子にしてください!」


 その突然の申し出に、私は思わず目を丸くした。



「弟子、ですか」


「はい! エリーゼ様の噂を聞きました。……あの辺境の村の病を治した、薬師様だと」


 少女はまっすぐに私を見つめた。


「私も、薬草の力で人を救いたいのです」



「お名前は?」


 私が尋ねると、少女は少しはにかんで答えた。


「ソフィと申します。……隣の領地から、歩いて参りました」


 その言葉に、私は少し驚いた。



「歩いて? ……随分、遠かったでしょう」


「はい。……でも、どうしても諦めきれなくて」


 ソフィの声が震えた。


「私の村でも。昔、病が流行ったことがあるんです。……そのとき、私は何もできませんでした」



 その言葉に、私の胸がじんと締めつけられた。


 かつての自分と重なるものを、感じたのだ。


 ——何もできない無力さ。それを変えたいという、強い願い。



「フェン、カイル」


 私は二人を振り返った。


「どう思いますか」


 フェンはしばらく、ソフィを見つめて。


「……悪くない目をしている」



「エリーゼが決めることだ」とカイルも静かに頷いた。


「お前が育てたいと思うなら」


 二人の言葉に、私は微笑んだ。



「ソフィさん」


 私は彼女の前にしゃがんで、目線を合わせた。


「薬草学は、簡単な道ではありません。……覚えることも多いですし、時には危険も伴います」



「それでも」


 私は続けた。


「本気で学びたいと思うなら。……私が教えます」


 その言葉に、ソフィの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。



「ありがとう、ございます……!」


 彼女は何度も頭を下げた。


「精一杯、頑張ります! どうか、よろしくお願いします!」


 その姿に、私は七年前の自分を思い出していた。



 こうして、薬草園に新しい住人が加わることになった。


 ナーシャたちも、ソフィを温かく迎え入れてくれた。


 賑やかな声が、また一つ薬草園に増えていく。



「よろしくお願いします、みなさん!」


 ソフィの元気な声が、薬草園に響いた。


 その様子を見ながら、私は静かに思った。


 ——この場所は、こうして少しずつ、大きな家族になっていくのだ。


 新しい日々の始まりだった。


(第176話へ続く)

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