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第174話「土産話とあたたかい家」

薬草園に帰り着いたのは、夕暮れ時だった。


「エリーゼ様、お帰りなさい!」


 ナーシャが真っ先に駆け寄ってきた。マーサさんとミラさんも、安堵の表情で出迎えてくれた。



「みなさん、大丈夫だったのですか?」とマーサさんが心配そうに尋ねた。


「はい。おかげさまで、全員無事です」


 私が答えると、みんながほっと胸を撫で下ろした。



「詳しい話は、夕食のときに聞かせてください」


 ミラさんがそう言って、台所へと駆けていった。


 その後ろ姿を見送りながら、私はようやく、家に帰ってきた実感が湧いてきた。



 夕食の席で、私は辺境の村での出来事を、一つ一つ語った。


 湿地の毒草。高熱にうなされる子どもたち。そして——朝、熱が下がった瞬間の、あの安堵の声。



「よく頑張りましたね」


 マーサさんが涙ぐみながら、私の手を握った。


「エリーゼ様も、カイル様も、フェンも。……本当に立派です」


 その言葉に、私は少し照れくさくなった。



「俺は、ただ飛んだだけだ」


 フェンがぶっきらぼうに言った。


「働いたのは、エリーゼとカイルだ」


「またそんな、謙遜を」


 私は思わず笑った。



 食事のあと、私は久しぶりに湯浴みを済ませた。


 温かい湯に、身体を沈める。長旅の疲れが、じんわりと溶けていくようだった。


 ——やっぱり、我が家が一番、落ち着く。



 湯浴みを終えて部屋に戻ると、カイルが窓辺で私を待っていた。


「お疲れ様」


 彼は静かに微笑んだ。


「ありがとうございます、カイル。……あなたがいてくれて、心強かったです」



「当然だ」


 カイルは私の隣に腰を下ろした。


「お前が行くところなら、どこへでもついていく。……それが、俺の役目だ」


 その言葉に、私の胸がじんわりと温かくなった。



 窓の外、月が静かに薬草園を照らしていた。


 フェンが庭で、大きな身体を丸めて眠っている。


 その姿を見て、私は思わず微笑んだ。



「明日から、またいつもの日々ですね」


 私が言うと、カイルは静かに頷いた。


「ああ。……それが一番、幸せなことだ」


 彼の言葉に、私は深く頷いた。



 長い一日が、終わろうとしていた。


 けれど、私の心には、確かな満足感があった。


 ——誰かの役に立てた。大切な人たちと、共にいられた。


 それだけで、こんなにも満たされる。


 明日も、穏やかな朝が待っている。


(第175話へ続く)

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