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第171話「遠方からの依頼」

収穫祭から数日後、薬草園に一通の手紙が届いた。


 差出人は、遠く離れた東の辺境の村。震えるような拙い文字で綴られていた。



「エリーゼ様に、お願いがございます」


 私はその手紙を、声に出して読んだ。


「私たちの村では、原因不明の病が広がっています。……どうか、お力をお貸しください」



「原因不明、ですか」


 カイルが眉を寄せた。


「症状は、何と?」


 私は手紙の続きに、目を通した。


「高熱と発疹。……薬師たちも匙を投げているようです」



「東の辺境、というと」


 カイルは地図を思い浮かべるように、目を細めた。


「ここから馬で、四日ほどの距離だ。……簡単には行けない」


 その言葉に、私は少し考え込んだ。



「フェン。あなたなら」


 私が尋ねると、フェンは当然のように頷いた。


「一日で着く。……お前が行きたいなら、俺が連れて行く」


 その即答に、私は思わず微笑んだ。



「ですが」とカイルが口を挟んだ。「原因がわからない病だ。……エリーゼにうつる危険もある」


 彼の声には、隠しきれない心配が滲んでいた。


「対策を考えてから、行きましょう」



 私はすぐに、薬草図鑑を開いた。


 高熱と発疹。……その組み合わせに、心当たりがあった。


「もしかしたら」


 私はある薬草のページを、指し示した。



「これは湿地に多く育つ薬草です。……もし、辺境の村が湿地に近いなら」


「その薬草に含まれる毒素が、原因かもしれません」


 私の言葉に、カイルがはっとした。



「対処法は、あるのか」


「はい。……解毒の薬を調合できます。ただ、材料を集める時間が必要です」


 私はすぐに薬棚を開けて、必要な薬草を選び始めた。



「手伝おう」


 カイルが静かに、隣に立った。


 二人で黙々と、薬草を選別していく。その手つきに、迷いはなかった。



 夕方までに、解毒薬の材料が揃った。


「明日の朝、発ちましょう」


 私が言うと、フェンが頷いた。


「俺とカイルで、お前を守る。……心配するな」



 窓の外、夕焼けが薬草園を赤く染めていた。


 新しい旅の予感に、私の胸は静かに高鳴っていた。


 ——困っている人を助けたい。その気持ちは、七年前から変わっていない。


 明日、東の辺境へ。新しい物語が、始まろうとしていた。


(第172話へ続く)

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