第170話「収穫祭の夜」
王都から帰って、半月が過ぎた。
薬草園には、すっかりいつもの穏やかな時間が戻っていた。今日は村の収穫祭。畑の実りを、みんなで祝う日だった。
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「エリーゼ様、これ、見てください!」
ナーシャが大きなかぼちゃを抱えて、駆けてきた。
「今年一番の出来です!」
「まあ、立派ですね」
私は思わず拍手した。
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広場には、色とりどりの野菜や果物が、山と積まれていた。
村人たちが忙しそうに料理を運び、机を並べていく。子どもたちははしゃぎながら、その周りを駆け回っていた。
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「フェンは、どこですか」
私が尋ねると、マーサさんがくすくすと笑った。
「あちらですよ。……見てごらんなさい」
指さされた方を見て、私も思わず笑ってしまった。
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フェンは山積みの果物の傍らで、子どもたちに囲まれて、りんごを次々と口に運ばれていた。
「フェン、あーん!」
「……もう、いい。腹がいっぱいだ」
そう言いながらも、フェンは断りきれずにいる様子だった。
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「情けない姿ですね」
私が近づいてからかうと、フェンはじろりとこちらを睨んだ。
「お前が助けに来ないから、悪い」
「ふふ、すみません」
私は笑いながら、その隣に腰を下ろした。
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夕暮れ、収穫祭の宴が始まった。
長い机に、料理が所狭しと並ぶ。村人たちの笑い声と、乾杯の声。楽師の奏でる、素朴な調べ。
カイルが私の隣に、そっと座った。
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「今年も、良い実りだった」
彼は静かに言った。
「お前が来てから。……薬草園も村も、豊かになった気がする」
「私一人の力ではありません。みんなが頑張ったからです」
私はそう答えたけれど、内心、少し誇らしかった。
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「エリーゼ様!」とルカが駆け寄ってきた。「一緒に踊りましょう!」
「え、私が、ですか」
戸惑う私の手を、ルカは構わず引いた。
村の広場に、輪ができていく。
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見よう見まねで、私も輪に加わった。
素朴な音楽に合わせて、みんなで手をつなぎ、くるくると回る。足がもつれて、笑いが起きる。
そんな他愛のない時間が、こんなにも幸せだとは。
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輪の外から、カイルがその様子を、静かに見つめていた。
その視線に気づいて、私は手招きをした。
「カイルも、来てください!」
彼は少し驚いた顔をして。それから、苦笑しながら輪に加わった。
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夜が更けていく。
満天の星の下、村人たちの笑い声が、いつまでも続いていた。
フェンが私たちのそばに、大きな身体を丸めて寝そべる。
「良い祭りだったな」
「はい」
私は静かに頷いた。
——穏やかな、幸せな日々が、これからも続いていく。
(第171話へ続く)




