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第169話「終わりと始まり」

モルデカイが連行されていくのを、私たちは静かに見送った。


 地下室に、朝の気配が忍び込み始めていた。長い夜が、ようやく終わろうとしていた。



「モルデカイは、どうなるのですか」


 私が尋ねると、アルヴィン様は静かに答えた。


「厳正に裁く。……だが、彼一人の罪ではない。この国が長年抱えてきた、歪みだ」


 その言葉には、重い責任の色が滲んでいた。



「これからは」


 アルヴィン様は続けた。


「聖獣の力に頼るのではなく。……この国自身が強くなる道を、探そうと思う」


 その瞳に、迷いはなかった。



「それは……」


 私は思わず微笑んだ。


「素晴らしい決意だと思います」


 アルヴィン様は少しだけ照れたように、目を伏せた。



「フェン」


 彼は静かに、フェンに向き直った。


「今回のこと、心から感謝する。……そして、すまなかった。この国の恥を見せてしまった」


 フェンはしばらく、その顔を見つめて。



「謝ることはない」


 フェンは静かに言った。


「お前は逃げずに。……自分の城の膿を、自分で切り取った」


「それだけで、十分だ」


 その言葉に、アルヴィン様の瞳が、わずかに潤んだ。



 数日後、後始末を終えて、私たちはようやく、薬草園へと帰る準備を整えた。


 見送りに来たアルヴィン様が、静かに言った。


「また、文通を続けさせてくれ。……今度は、政のことだけでなく」



「もちろんです」


 私が答えると、彼は小さく笑った。


「グレタにも、よろしく伝えてくれ。……娘のことは、私が責任をもって弔おう」


 その言葉に、私は深く頭を下げた。



 フェンの背に乗り、私たちは王都を後にした。


 来た時とは違う。今度は確かな決着とともに、帰る旅だった。


「疲れたな」とカイルが静かに笑った。


「はい……。でも、良い疲れです」



 薬草園に帰り着いたとき。夕暮れの光が、いつものように私たちを迎えてくれた。


 ナーシャたちが駆け寄ってくる。ルカがフェンに抱きつく。


 いつものあたたかい日常が、そこにあった。



「ただいま、帰りました」


 私は静かに呟いた。


 長かった王城編の物語は、こうして幕を閉じた。


 けれど、私たちの日々は、これからも続いていく。


 新しい穏やかな始まりが、静かに訪れていた。


(第170話へ続く)

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