第165話「王子への密書」
グレタを見送ったあと、私たちはすぐに行動を起こした。
「アルヴィン様に、知らせなければ」
私が言うと、カイルが頷いた。
「ああ。だが……悠長に手紙を送っている時間はない」
◆
「俺が飛ぶ」
フェンが静かに言った。
「今夜のうちに、王都まで。……手紙より、俺の言葉のほうが信じてもらえるだろう」
その提案に、私は少し迷った。
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「フェン、一人で大丈夫ですか」
「案ずるな」
フェンは金色の瞳を細めた。
「モルデカイとやらが動く前に。……先手を打つ」
その声には、揺るぎない決意がこもっていた。
◆
その夜、私は急いで手紙をしたためた。
『殿下へ。宮廷魔導士長モルデカイ様が、フェンを封じる術式を密かに準備しているとの、確かな情報を得ました。次の満月までに、必ずお耳に入れたく』
震える手で、封をする。
◆
「頼みます、フェン」
私が手紙を託すと、フェンはそれを、そっと口にくわえた。
「すぐに戻る。……お前たちは、ここで待っていろ」
そう言い残して、フェンは夜空へと駆け出していった。
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その背中が闇に溶けていくのを、私はじっと見送った。
カイルがそっと、私の肩を抱いた。
「大丈夫だ。フェンは強い」
「わかっています。……でも、心配なものは心配です」
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一晩、私たちは眠れずに、フェンの帰りを待った。
夜明け前、遠くの空に、白い影が見えた。
「フェン!」
私が駆け寄ると、フェンは疲れた様子で、地面に身を伏せた。
◆
「……伝えたぞ」
フェンは息を整えながら言った。
「アルヴィンは驚いていた。……モルデカイの動きは、まったく察知していなかったようだ」
「殿下は、なんと」
◆
「すぐに調査させると。……そして」
フェンは少し間を置いて、続けた。
「満月の夜、王城で対策を講じる。……お前たちにも来てほしいと」
その言葉に、私とカイルは顔を見合わせた。
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「また、王都に行くのですね」
私が呟くと、カイルが静かに頷いた。
「今度は……守るための戦いだ」
その声には、これまでとは違う、静かな覚悟が宿っていた。
◆
満月まで、あと六日。
私はフェンの疲れた身体を、そっと撫でた。
「ゆっくり休んでください。……ここからは、みんなで立ち向かいましょう」
新しい戦いへの道が、静かに開かれていた。
(第166話へ続く)




