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焦げた菓子

 次に、墓地でアルヴィン殿下に会ったとき。


 私は小さな包みを持っていった。


「……それは?」と彼が聞いた。


「お菓子です」と私は言った。「アンナさんにお供えしようと思って。——焼いてきました」


 アルヴィン殿下がわずかに目を見開いた。



 包みを開くと——少し焦げた、素朴な焼き菓子が入っていた。


 わざとではない。でも——上手には焼けなかった。


「……焦げていますね」とアルヴィン殿下が言った。


「ええ。私、お菓子作りは得意ではないので」と私は言った。「薬の調合は得意なのですが。——火加減が同じようにはいかなくて」



 アルヴィン殿下がその焦げた菓子をじっと見ていた。


 その目が——少しずつ潤んでいった。


「……アンナの菓子と同じだ」と、彼は小さく言った。


「そうですか」


「ええ。——いつも、こうやって少し焦げていた」



 私は菓子を一つ、墓石に供えた。


 そして、もう一つをアルヴィン殿下に差し出した。


「召し上がりますか」


 アルヴィン殿下がしばらくためらった。


 それから受け取って、一口食べた。



 彼は長い間、何も言わなかった。


 ただ、ゆっくりとその焦げた菓子を噛みしめていた。


 やがて——また、その目から涙がこぼれた。


「……懐かしい」と彼は言った。「この焦げた味が。——こんなに懐かしいとは」



「アンナさんは」と私は言った。「きっと、あなたに温かいものを食べさせたかったのですね。上手でなくても、完璧でなくても。——ただ、温かいものを」


「……ええ」とアルヴィン殿下は言った。「アンナはいつも言っていました。『坊ちゃま、味より心です』と」


「いい言葉ですね」


「ええ。——でも、わたしはその言葉を忘れていました」



 アルヴィン殿下が菓子の最後の一口を食べた。


「わたしは」と、彼はぽつりと言った。「ずっと完璧であろうとしてきました。味も、形も、何もかも完璧に。——でも、それは心を置き去りにすることでした」


「気づいたのですね」


「あなたの焦げた菓子のおかげで」と彼は少し笑った。「完璧でないものに心が宿る。——アンナが教えてくれたことを、今思い出しました」



 春の風が墓地に吹いていた。


「エリーゼ妃」とアルヴィン殿下が言った。


「はい」


「一つ、聞いてもいいですか」


「どうぞ」


「あなたは——なぜここまでしてくれるのです。わたしは、あなたにひどいことをしようとしていた。宴で、あなたを見世物にしようとした。——なのに、なぜ」



 私はしばらく考えてから答えた。


「……あなたが放っておけなかったからです」


「放っておけない?」


「あなたを見たとき、私は昔の自分を見た気がしました」と私は言った。「心を凍らせて、完璧なふりをして。——でも、本当は泣いている。そういう人を、私は放っておけません」



「それに」と私は続けた。「カイルが、あなたを諦めていなかった。——だから、私も諦めたくなかったのです」


 アルヴィン殿下がカイルの名前に反応した。


「……カイルは本当に、わたしのことを」


「ええ。今でも、昔のお兄様が戻ってくるのを待っています」



 アルヴィン殿下が墓石を見つめた。


 長い沈黙があった。


「……わたしは」と、彼はようやく言った。「カイルに、ひどいことをしてきました。あの子の妃である、あなたを陥れようとした。——合わせる顔がありません」


「カイルは」と私は言った。「あなたを責めたりはしません。ただ——もう一度、お兄様と話がしたいだけです」



「……話」


「ええ。昔のように」と私は言った。「花の名前を教えてくれた頃のように。転んだ弟をおんぶしてくれた頃のように。——ただ、兄弟として話がしたいのです」


 アルヴィン殿下の目が、また潤んだ。


「あの頃のことを——カイルは覚えているのですか」


「覚えています」と私は言った。「『大丈夫、僕がいる』と。あなたが言ってくれたことも」



 アルヴィン殿下が両手で顔を覆った。


 肩が震えていた。


「……わたしは、なんてことを」と、彼は絞り出すように言った。「あの温かかった日々を。あの子との絆を。——わたしは自分から捨ててしまった」



「捨てたのではありません」と私は優しく言った。「しまい込んだだけです。——失う痛みから逃げるために」


「同じことです」


「違います」と私は言った。「捨てたものは戻りません。でも、しまい込んだものは——また取り出せます。今からでも」



 アルヴィン殿下が顔を上げた。


 涙に濡れたその顔は——もう完璧な仮面とは程遠かった。


 でも、その分だけ——本物の人間の顔だった。


「……取り出せるでしょうか。今からでも」


「取り出せます」と私は、はっきりと言った。「あなたが、その気になれば。——私が手伝います。カイルも、きっと」



 春の日差しが墓地の花を照らしていた。


 アルヴィン殿下が墓石に向かって、静かに頭を下げた。


「……アンナ。わたしは間違っていたよ。——でも、まだやり直せるかもしれない」


 その横顔は——もう空っぽではなかった。


 しまい込んだ心が、今、確かに戻り始めていた。


 焦げた菓子の温かさとともに。


(第114話へ続く)

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