転生記録8
「おやおや、そこに居るのは落ちこぼれのマーリじゃないか?」
剣人達がウルフを倒していると、後ろから声をかけられる。
「あなたは確か、クイン?」
マーリは声を掛けてきた女性にそう聞き返した。
「マーリの知り合いなのか?」
マーリは静かに頷く。
「クイン・アクリス。冒険者育成学校・魔術科のクラスメイトだった人。」
「おやおや、忘れたのかな?マーリ。私のことはクイン"様"と呼べと言ったはずなんだけどなぁ。」
剣人は静かにそいつの方を見た。そこにいるのはクイン・アクリスとかいった女とパーティメンバーだろうか、男が二人後ろで待機している。
「食材の相場が上がったから久々にここに来てみれば。そこには落ちこぼれで仲間ができないマーリ君が居るとは。あー、ほんっとに哀れねぇ。」
あのクイン・アクリスとか言う奴はそうとう嫌味な奴らしい。マーリと再開した途端にいきなりマーリのことを小馬鹿にしてきやがる。
「それで、あんたの後ろにいるのは誰かな?落ちこぼれのマーリ君を助けてくれる優しい優しい冒険者様でも見つけたのかなぁ?」
クインの煽りは止まらない。馬鹿にできそうなことを何かしら見つけては嫌味を言ってくる。
「こ、この人は・・・・私のパーティメンバーよパーティメンバー。」
「へー、落ちこぼれのマーリ君とパーティ組んでくれる人がいるんだ?。あっ、それとも拾ってもらったって言ったほうが正しい?。ごめんねぇ、私、人を拾う立場だからぁ。」
「いよっ、アクリス様ばんざい!!!」
「アクリスばんざい!!!」
後ろの男二人はクインの嫌味を後押しするように三唱してくる。
「ちょっと待て。拾ってもらったのは俺の方だ。マーリは決して落ちこぼれじゃないし仲間ができないこともない。マーリに謝ってくれ。」
剣人は痺れを切らしてクインに話しかけた。
「ふーん。マーリ程度に拾われるようなよわーい冒険者なわけか。つまりマーリと同程度の実力しかないってことだろう。くだらない。そもそもランク2になることは冒険者育成学校の進級において必修なものなのに卒業してもランク2止まりとはねぇ」
「俺は確かに冒険者になりたてで実力不足なんだろうがマーリは俺に冒険者のことを色々教えてくれた。さっきお前がマーリに言ったことを訂正して謝罪しろ!!」
「ケント・・・・」
剣人がここまで庇ってくれたことにマーリは涙腺を緩める。
一方、剣人の要求に対し、クインは強気な発言をする。
「ふーん、なら私と一騎打ちをして冒険者としての力を証明してみてよ。あんたが私に勝てたらお望み通りに謝ってあげる。」
俺は冒険者になったばかりだし、この世界のことは何一つと言っていいほど知らない。
・・・・でも、冒険者としてこの戦いが避けて通れないと言うのなら、その条件、飲んでやる。
「・・・・分かった。その戦い、受けてやる。」
クインは剣人の答えを聞くと、武器を生成し構えてくる。
「・・・・そうそう。一ついい忘れてたんだけど。」
クインがうっすらと笑う。
「・・・・死んでも知らないからね!!!」
クインが剣人に杖を振りかざしてくる。剣人はその攻撃を剣で受け止めるが、魔術師の杖は打撃力が強化されるだけでなく、ランク1の剣人は能力の基準値が低めなため、弾き飛ばされてしまう。
「ぐう。・・・・はああああ!!!」
剣人は思い切り地面を踏み、体制を整え直すと、剣を構えてクインに剣を振りかざしていく。
クインはそれを杖で弾く。剣人の攻撃は簡単には通りそうにもない。
「くっ!!!」
「なんだ。戦いに応じたからどんな実力を見せてくれるのかと思ったら何のスキルも使わない。あんた、もしかしてランク1だね。」
クインは剣人の攻撃を分析してランクを言い当ててきた。
「そうだ。俺は冒険者になったばっかりの・・・・ランク1だ。」
「あはははは。ランク1の癖に私に挑んでくるとか馬鹿としか思えない。いいわ、見せてあげる。ランク1のあんたに、ランク3の私の力をね!! スキルー」
ー{水属性魔術}ー
クインが杖を振り上げると周囲から水のようなものが吹き出してくる。
吹き出してきたかと思うとそれは剣人の方に向かっていき、攻撃を仕掛けてきた。
「うわ、のわああ。」
剣人はなんとかそれを回避するが、水の魔術はまるで生きているかのように剣人を追いかけてくる。
「あはははは。どう、これがそこの落ちこぼれとは違うランク3の魔術の力。そこの落ちこぼれとは違う本当の魔術だ!!!」
クインの魔術が剣人に襲いかかる。剣人はそれを剣で受け止めるが弾き飛ばされてしまう。
「ぐわああああ!!!」
「あははは。雑魚はそうやって地面を転がりまわっているのがお似合いねぇ。」
マーリはその様子を心配そうに見ている。
ー今ケントはピンチに追い込まれているけどこれは一騎打ちだから援護ができないー
剣人は起き上がり、クインに対抗する方法を考える。
ーあの水が攻撃できるように形ある物になっているのならば、剣で切り裂くことができるはずだー
剣人は覚悟を決めると剣を持ち直す。通常、右利きの人は右手が上になるように剣を持つが、剣人は左手が上になるように剣を構える。
「剣を左に持ち直した?」
「何度起き上がろうが私のこの魔術で散れ!!!」
マーリが驚く中、クインは剣人に容赦なく魔術を打ち込んでくる。が、剣人はその魔術を切り裂き、攻撃を防いだ。
「何?!」
「はああああああ!!!」
剣人はクインに向かって走り出す。クインは魔術を無数に剣人に打ち出すが、剣人はその攻撃を切り裂きながら前に突き進んでくる。
「何故だ、さっきまでとは動きが違う!!」
剣人には全力を出すときに剣を左に持つ癖があった。それにより剣道の大会などでは逆手持ちの剣士なんて呼ばれていたりもした。ちなみにこの癖は父親譲りである。
剣人は魔術を切り裂き、遂にクインの目の前まで来た。
「舐めるなよ!!ランク1の癖に!!!」
クインは杖を振り上げ剣人に向かって振り下ろした。それを、剣人は杖に向かって剣を振り上げ、杖を弾き飛ばした。
「なっ!!!」
「はああああ!!!」
剣人はクインの首に剣先を向ける。
「俺の勝ちだな。約束通りマーリに謝ってもらうぞ。」
「く、くっそーーー」
クインはそう叫ぶと一目散に逃げ出して行った。
「おい待て、まだ謝ってないだろ!!」
「もういいよ、ケント。」
マーリが後ろから声を掛ける。
「クインには散々言われちゃったけど、私はケントが一生懸命庇ってくれただけで嬉しかったから。」
「そ、そう?」
剣人は照れながら答える。
「まあ、次会ったときに謝らせるか。」




