転生記録4
「私とパーティを組んでほしいの」
「え、パーティ?」
剣人は戸惑った。パーティを組むということは、マーリと冒険者としてのチームになるということだろう。ゲームはよくやるのでそのくらいは理解できる。
「つまり一緒に冒険者になれってことだよね?」
「うん。実は恥ずかしながら冒険者育成学校を卒業してから今まで仲間ができたことがなくて。」
冒険者育成学校なんてあるのか。剣人はそう思った。
マーリの誘いに剣人は悩んだ。なにせ先程、空斬狼・ウルフとかいうのに襲われて死にかけたばかりなのだ。パーティを組めと言われて即答ではい分かりましたなんて言えるはずもない。
「ほら、剣人この世界に迷い込んで知識も無いって話だったじゃん?私とパーティを組んだらこの世界のことも教えてあげられるし生計を立てることだってできるし。」
確かに今ここで一人になってこの世界を彷徨っても野垂れ死んでしまうだけだろう。
なら、ここで冒険者としてパーティを組み、マーリと共に行動した方が生計も立てられるし、元の世界に帰る方法も見つかるかもしれない。
そう言った意味では冒険者という立場は意外と都合が良い。
「分かった。じゃあマーリとパーティを組むよ。」
「本当?!!やったー!!」
マーリは喜んでいる。本当に今まで仲間がいなかったらしい。ランク1でしかもこの世界の知識すら欠けている人ですら仲間になって嬉しいらしい。
「じゃあ、ギルドに登録しに行こっか。ケントの冒険者登録と私達のパーティ登録。」
「ギルド?登録?そんなきっちりしているのか。」
うう。いままで王様に呼ばれてなけなしの金で魔王を倒しにいけみたいなものぐらいしかRPGはやってないから考えてもなかった。
「ギルドは町の中にあるから行こっか。」
「う、うん。」
そうしてマーリと一緒に町の中へ入ろうとした時。
「階級変更」
と呟いたかと思うとマーリの服装が変わった。外見も少し変わった気がする。
「え?今のは?」
「ん?ああ、今のは階級変更って言ってランクを任意的に下げることが出来るんだよ。」
「ランクを下げる?」
てっきりランクは上げっぱなしかと思っていたが、どうやらランクは下げることも可能らしい。
「冒険者とかでも町中ではランク1で過ごしていることも多いね。ランクの高い人が町の中に居たらみんなが怯えたり目立ったりするからね。」
「なるほど・・・・」
この世界では日常では低いランクで過ごすことが多いらしい。こっちの世界で考えると警察や自衛隊の人が仕事以外では銃を所持していない考え方で良いだろうか。
「あとモンスターも階級変更使うから注意ね。巣に帰る時とかでランク1になるから低ランクだと思って近づいたモンスターが高ランクだったってこともあるからね。」
どうやらゲームほど単純ではないらしいが、やってることは難しいことではないようだ。冒険ではランクを上げ、日常ではランクを下げる。それをしているだけだ。
「あと階級変更はランクの上げ下げ以外にも姿を変えるときに使うよ。」
「どういうこと?」
「例えば私が今なれるのは初級回復魔術師の姿なんだけど、階級変更を使って初級火属性魔術師になったりね。」
「・・・・マーリって火属性の魔法も使えるの?」
「いや、今のは例えで上げただけ。」
「そっか・・・・」
そう言えばこの話をしていて気づいたが、今自分が着ている服が学生服ではなかった。
本当ならばもっと速く気付くべきだったのかもしれないが、異世界に転移させられていきなり草原に送られ、狼に襲われて戦うなんてことをしていて、服にまで注意がいってなかったようだ。
「・・・・そう言えば俺着ている服が変わっているんだけど」
「服?もしかしてケントの世界って着ても服の見た目変わらないの?」
今の発言で分かった。この世界では着る人によって服の見た目が変わるらしい。ってことは脱いだらこの服は学生服に戻るのだろうか。
「あ、着いたよ。冒険者ギルド。」
そんな話をしている間に冒険者ギルドに到着したらしい。マーリは手慣れた様子でドアを開ける。
「すみませーん。冒険者の新規登録者を連れてきたんですけど。」
マーリはギルドの受付の人に声をかけた。
「はい。そこの男の人ですね?それではこの用紙にお名前をご記入いただけますか?」
受付の人は一枚の紙を机の上に置いた。内容はシンプルでこの枠に名前を書けばいいらしい。
枠が二つあり、それぞれ「名」と「姓」と書かれてある。見たところ、この世界では日本と同じひらがな、カタカナ、漢字が使われているが、人の名前はカタカナで書かれているので、剣人は金打 剣人ではなくケント カネウチと記入した。
「ケント・カネウチ様ですね。識別IDはこちらで作成しますので少々お待ちください。」
識別ID・・・・。個人証明が無くてもそのIDで何かしら個人の識別ができるのだろうか。
「識別IDってどんな仕組みなんだろう?」
「えっと、識別IDは魔素石に刻まれて個人を識別するんだよ。」
魔素石・・・・。よく魔法石みたいな言葉は聞くけどこの世界には魔素石と言うものがあるらしい。一体どういうものなのだろうか。
「お待たせしました。無事登録が完了しましたのでカネウチ様は今から冒険者となります。」
「やったねケント。さて、パーティ登録をしたいんですけど・・・・。」
「パーティ登録ですね。それではこの書類にパーティの名前をご記入してください。」
こんどはパーティ名と書かれた紙を渡された。
「うーん、パーティ名かぁ。ケント、どんな名前にする。」
「えっと、そうだな・・・・。」
剣人は今までのことを振り返る。空斬狼・ウルフに殺されかけた時、マーリの回復術がまるで天使の力に包まれたかのような感じを思い出す。そして、今の自分に、戦いに使えそうなものは、剣道しかない。
「じゃあ、・・・・天使と剣術者、なんて名前はどうかな?」
「天使と剣術者?」
「いや、ごめん自分で言っといてセンス無かったわ。何か他の名前・・・・。」
「天使ってもしかして私の事?」
「あ、ごめん、治療してくれたあの時にまるで天使の力のようだなって感じちゃって。」
「天使・・・・か、うふふ。」
マーリは微笑むと登録用紙に天使と剣術者と書き込んだ。
「じゃあパーティ名は天使と剣術者に決定!!それじゃ登録お願いします。」
マジか、本当にその名前で登録しちゃったのか。
・・・・まあ本人が気に入ってくれたのならいっか。
「それではパーティに入る方はそこの魔素石にタッチしてください。」
マーリと剣人は魔素石にタッチし、無事パーティ登録が完了した。
「それじゃあ、早速パーティで冒険に行こう。」
「・・・・今日は疲れたからもう休みたいんだけどな・・・・。」
「それもそうだね。じゃあ・・・・」
マーリが微笑んで言った。
「私の家に行こっか。」




