転生記録14
「誰だ!私のデストロイ・ウィップに攻撃したのは!」
その時、漆黒の精霊神・ドリアードの動きが止まる。
ー{絡定束縛}ー
「なっ!」
「目標の行動阻害、クリア。」
一人の女性がドリアードの後ろから言った。彼女がスキルでドリアードの動きを止めたらしい。
「なっ、貴様・・・・。」
「負傷者を回復します!」
ー{フル・キュア}ー
彼女がドリアードの動きを止めている間にもう一人の女性が剣人たちを回復する。呼吸も困難になっていた剣人たちの体が嘘のように軽くなった。
「あ、体が動く・・・・。」
「大丈夫だった?あなたたち。」
「あなたは・・・・。」
そして一人の男が木の上から弓を構えている。
「くらえ・・・・」
ー{ビッグバン・ブラスト}ー
彼の弓から放たれた矢はドリアードに直撃し彼女の体を大きく吹き飛ばす。
「ガアッ!」
「今だ!思いっきりやれ、ティア。」
彼がそう言うとティアは大きく空中に飛び上がる。
剣人はその様子を呆然と眺めていた。
ーティア・・・・ってことはこの人たちは・・・・、マルチドラゴンズの・・・・ー
ドリアードは苛立っている様子で叫ぶ。
「くそっ、人間ごときが調子にのってんじゃねえぞ!」
ー{デストロイ・ウィップ}ー
漆黒の精霊神・ドリアードのスキル、デストロイ・ウィップがティアに襲いかかる。が、ティアはその攻撃を軽々と槍で弾き、身軽に回避する。
「・・・・なっ!」
「・・・・いくよ。」
ー{レクイエム・デスティング}ー
ティアの放ったスキル、レクイエム・デスティングがドリアードの体を貫く。
「ガハッ!・・・・」
ドリアードの目から光が消え去りそのまま地面へと倒れ込んだ。
剣人とマーリはその様子をただ見ることしかできなかった。
一人の男が剣人たちに近づき話しかけてきた。
「大丈夫だったか?二人とも。」
「あ、あなたはマルチドラゴンズのリーダー、エリエト・ドライ・・・・」
マーリはその男を見たときにそう呟いた。
「結構酷い怪我だったからね。私のスキルで回復はしたけどしばらくは休んでおいた方がいいよ。」
「・・・・マルチドラゴンズの回復役、ナリス・エクスト・・・・」
「私のスキルであいつの動き止めたから勝てたんだからそこちゃんと評価してよね。」
「・・・・マルチドラゴンズの束縛師、リア・バイル・・・・」
マルチドラゴンズに話しかけられているマーリたちはもはやまともに返答もできずマーリは人物の名前などを呟くことしかできてなかった。・・・・剣人に至っては一言も発せなかった。
ティアはモンスターの素材回収を終え、こちらに近づいてきた。その時に剣人はハッと我にかえりマルチドラゴンズの人たちにお礼を言う。
「あ、あの、助けてくれてありがとうございます。」
ティアは自然に、かつ冷静な声色で剣人に言った。
「冒険者はいつどんなモンスターと戦っていつ死にさらされるか分からない・・・・。気をつけてね。」
「あっ・・・・。」
その言葉を聞いて剣人は唖然とする。
「それじゃあ俺たちはこのことを上に報告するからお前らも気をつけて帰れよ。」
エリエトはそう言うと何処かへ行ってしまった。
気がついたら剣人とマーリは家にいたが、剣人はあれからどうやって帰ったか全く覚えていなかった。
「・・・・今回のクエスト、大変だったね。・・・・明日はどうしよっか。」
「・・・・ごめん。」
「えっ?」
「・・・・俺、冒険者、辞めるよ。」
剣人は突如、マーリにそう言った。
「ケ、ケント?」
「俺、いつの間にか本当に冒険者になっているような気になってて、・・・・気がついたらモンスターと戦うのも当たり前のようになってた。・・・・でも俺は、・・・・いきなりこの世界に来た・・・・ただの一般人だから・・・・あの時、ドリアードに殺されかけて分かったよ。・・・・冒険者を続けることはそんな楽なことじゃないって。」
剣人はボソボソと今まで考えていたことを話した、
「ケント・・・・」
「ごめん・・・・マーリに助けられて・・・・冒険者やろうってお願いされたのに・・・・こんな形で辞めちゃって・・・・。」
マーリは少し考えたあと言った。
「そ・・・・っか。ごめんね、私ケントに自分のワガママ押し付けちゃってたんだ・・・・。ケントは別に冒険者を目指していたわけじゃないもんね・・・・。ごめんね。」
この言葉を聞いたとき剣人の目から涙が溢れた。
「・・・・謝らないでくれ。」
「・・・・えっ。」
「頼む!謝らないでくれぇ!」
剣人はそう叫ぶと家を飛び出した。剣人が冒険者をしていたのはマーリへの恩返しもあるが、自分が元の世界に帰る方法を見つけるためでもあった。
それをこのような形で辞めることはマーリへの裏切りみたいな罪悪感が残りすごく悲しくなってしまう。
しかし、あのドリアードとの戦いを思い出し冒険者を続ける勇気はもう無くなっていた。
気がついたら剣人は街の外れまで来ていた。
「・・・・明日から生活する方法、探さないとな・・・・。」
剣人はぼそりと呟いた。




