9 ぶっ潰そう
私たちが抱きしめ合ってると…
「ルリカッ、敵が現れたっ」
ハンゾウが急に来た。
「あ…」
「…察して?ハンゾウ」
「あ、うん。ごめん」
ダーク・ロウはここにいる。
ってことは、きっと失敗作の怪獣が世に放たれたんだろう。
「…でも…今動ける魔法少女はルリカしかいないんだ。みんな期末テストの勉強してて…」
そう言われて、私は仕方なくコンパクトを手に取り胸に当てた。
「ティンクルプリズム、ラリルリカッ」
私はそう言って変身をした。
「うわぁ…すげぇ…」
「この世の平和はティンクルにおまかせ。愛と勇気がいっぱい、ティンクル・ルリカッ」
ポーズを決めながら、私はセイくんに向かってそう言った。
するとセイくんは笑っていた。
「ははっ。そうそうっ。それそれっ」
恥ずかしいけど…嬉しい…
セイくんがこんなに笑ってくれるなら、私はいくらでもピエロになるよ。
そう思ったけど…
「あーはははっ。きっつ。今のセリフと決めポーズ、きっつ」
そんな風に言うセイくんに腹が立った。
「自分だって似たようなもんじゃん…」
「あ…」
するとセイくんは急に真面目な顔になった。
「そうでした。ごめんなさい」
「言わされてるんでしょ?」
「はい」
「私もそうだから」
「はい。すみませんでした」
セイくんは正座をしながら謝っていた。
私はそんな姿のセイくんを見て満足したから、窓から外に出て、ハンゾウと一緒に現場へと向かった。
さっくりと怪獣を倒すと、帰りながらダーク・ロウのことを話した。
「えっ?悪の組織を襲うの?」
「そう。たった10人しかいないんだよ?魔法少女を集結させれば、簡単に潰せるっしょ」
「……確かに…」
ハンゾウはそう言うと、何か考え込んでいた。
「うん。いけるかも。ルリカの作戦でいけるかもしれない」
ハンゾウもそう言ってくれた。
「ただ…ダーク・ロウが言っていることが、全て本当だった場合ね」
私は…本当だと思うけどな。
「このあとダーク・ロウに酒を飲ませて、本音を聞き出そう?」
それもいいかも。
「わかった。じゃあいつものあそこで、大量にお酒を買おう」
「よっし。これは経費で落とせる案件だから、いつもより豪華なおつまみと、上等な酒を買おう」
ハンゾウもノリノリだった。
私は魔法を解き、ハンゾウは人間に変身した。
私たちはいつものディスカウントショップに向かうと、カゴに次々と欲しいものをぶっ込んでいった。
ハンゾウは普段絶対買わないビーフジャーキーを真っ先にカゴへ入れた。
家に帰ると、買ってきたものと、セイくんが作ってくれた料理をテーブルに並べ、私たちは飲み食いをした。
「あ、この人ハンゾウっていうの。今は人間の姿をしてるけど、妖精みたいなもん。さっきいきなり現れた猫みたいなヤツと、同一人物だよ」
「あ…そうだったんだ。急に男の人と帰ってきたから、驚いたよ」
それから私たちは当たり障りのない話をしながらも、セイくんに…ダーク・ロウに酒を飲ませた。
なんだか部屋が暑くなり、私は途中で窓を開けた。
風なんて…ちっとも入ってこなかった。抜けるところがないからだ。
私は押し入れから扇風機を取り出すと、コードをコンセントに指し、稼働させた。
「…で…、セイくんは悪の組織を恨んでいると…」
ハンゾウはそう切り出した。
「もちろんっ。俺の人生を台無しにしたんだっ」
セイくんはもう、酔っ払っていた。
「俺はね?もっとふつーに生きたいのっ」
それはセイくんの本音のように感じた。
魂の叫びのように感じた。
私だってそうだ。
魔法少女なんてもう辞めたい。
「私もだよ」
「…本当に…柚ちゃんは悪の組織を潰せると思う?」
「思うよ。ただ私たちだけでは難しい。さっきも言った通り、他の魔法少女と、ダーク・ロウが持っている、その怪獣が必要になる。その子たちは協力してくれるかな?」
するとセイくんは、小瓶を手に取り、次々と怪獣を解放していた。もちろんミニチュアサイズで。
その怪獣たちはテーブルの上で追いかけっこをしたり、私に擦り寄って来たりした。
こんな子たちが裏切るはずがない。
私はハンゾウを見てみた。
……。
は?
私よりもミニチュア怪獣にメロメロになっていた。
「僕閃いたっ」
急にハンゾウがそう言った。
なんとなくつけていたテレビからは、バラエティー番組が流れていた。
「…なに?」
「これがもし全部解決したら、怪獣カフェを開こう」
は?
「この子たち人懐っこいし優しい子たちじゃん。瓶の中に閉じ込めておくだなんて可哀想だよ」
まぁ…確かに…
ってことは、ハンゾウもセイくんの言うことを信じたってことなのかな…?
それとも酔ってるだけ?
「あっ、それいいねぇ」
セイくんもそんなことを言い出した。
この後2人は本気なのかどうかわからないことに花を咲かせ、楽しそうに話していた。




