8 真実
私の告白に対して、彼からの返事は何もない。
その代わり、火を止める音が聞こえてきた。
それからセイくんはキッチンからこちらの部屋に来ると…
「…今の…本気?俺の聞き間違いじゃ無い?」
「私と付き合わない?」
するとセイくんは困惑した顔をした。
「…さっきも話したけど、俺…借金があるし、貧乏。それに俺はダーク・ロウだ」
真剣にそう話すセイくんに対して私は…
「ぷっ…っ…」
やっぱり笑ってしまった。
今この人、真剣な顔して自分のこと“ダーク・ロウ”って言った。
「あははっ」
もう勘弁してよ。
するとセイくんも笑いだした。
「今俺が“ダーク・ロウって言ったから笑ってんでしょ」
「ははっ。そうそう。ごめんっ。おもしろくってつい…」
私がそう言うと、セイくんはまた真面目な顔をした。
「そうさ。俺がこの世界を脅かす、あのダーク・ロウだ」
演技じみた感じで、セイくんがまたそんなことを言うもんだから、私はお腹を抱え、畳を叩きながら大爆笑していた。
「もっ…もうやめてっ…お腹っ、お腹痛いからっ」
はぁー、おかしっ。
私は目尻に溜まった涙を、指で拭った。
「ねぇ聞いて?柚ちゃん」
「はい」
私はなんとか笑いを落ち着かせた。
「俺には借金がある」
「いくら?」
「あと500万くらい」
500万か…
「最初はいくらあったの?」
「700万」
9年も働いて、たったの200万しか返せてないの?
「なんでまだそんなに残ってるの?」
「利子が高くて、それを払うのにいっぱいいっぱいなんだ」
そんなの闇金じゃん。
それからもセイくんから詳しく話を聞いてみた。
「返さなくていい」
「え?」
「そんな法外な利子、闇金と同じだよ。払わなくていい」
「でも…」
「悪の組織は大きいの?何人いるの?」
「…10人…くらい?」
は?たったそれだけ?
こっちなんて全国各地に魔法少女がいるってのに。
「…ぶっ飛ばそう」
「え?」
「私たちと他の魔法少女を集めて、みんなで悪の組織に乗り込むの」
「そんなこと、できるのかな?」
「今までどんだけの数の怪獣を倒してきたと思ってるの?」
本当にこの10年間、たくさんの怪獣を私は倒してきた。
するとセイくんはバツの悪い顔をした。
…なに…?
やっぱりそんなこと…無理なの?それほど強いの?悪の組織って。
「あれ…実は倒されたふうを演出してたんだ」
は?
セイくんは説明してくれた。
内容はこんな感じだった。
それは私にとっては衝撃的だった。
なんと…
今まで倒していたと思っていた怪獣は、セイくんが回収していただけのようだった。
どうやら悪の組織によって作り出された怪獣は、なぜかみんな心が優しいものが多かったらしい。それでもボスからは街を破壊し、人を襲うように日々躾けられていたようだった。
「それで?」
「うん。ある時、1体の怪獣に聞いてみたんだ」
意思疎通ができるのか…
「なんて?」
「本当に人を襲いたい?って」
「そしたら?」
「その怪獣は悲しそうな顔をしながら首を横に振ったんだ」
なにそれかわいい。
そう思ったと同時に、悪の組織を憎くも思った。
だから魔法少女に倒された体で、怪獣をいいタイミングで小瓶に戻していたと。
…小瓶?
「なに?小瓶って」
「あ、これ」
そう言って、ズボンのポケットからいくつかの小瓶を私に見せてくれた。
「この小瓶に怪獣は入ってる。蓋を開けると出てくるよ。大きさは俺が操作できる」
セイくんは小瓶の蓋を開けると、目の前にいつか戦った怪獣が出てきた。片手に乗るほどの小さいサイズで。
するとその怪獣は、私の手に乗り、頬擦りをするようにスリスリとしてきた。
かわいい…
「そんで、瓶の蓋を一度閉め、また開けると…」
怪獣は瓶に吸い込まれるようにしていなくなった。
ああ…
あれだ。
モンスターをカプセルでゲットする…みたいな?
「こいつら、根は優しいんだよ。本当は戦いたくないんだ」
「…でも…ダーク・ロウがいない時の怪獣は大暴れだったよ?」
「あれは、失敗作の怪獣を世に放ってただけ。意思疎通も取れない、未完成な怪獣たちなんだ。心も持っていない」
だから弱かったんだ。
だったら…この子たちも一緒に戦えるんじゃ…
私はそのことをセイくんに提案してみた。最初はポカンとした様子だったけど、私の話を聞いているうちに、セイくんの目がキラキラと輝きだした。
「できるかな?」
「きっとできる」
セイくんの言葉に、私ははっきりとそう答えた。
するとセイくんはいきなり私のことを抱きしめた。
「…ありがとうっ」
「…それはわかったけど…」
「…なに?」
「私と付き合うの?付き合わないの?別に振られても、ちゃんと今言ったことは実行するから、正直に答えて?」
セイくんはさっきよりも私のことを抱きしめた。
「俺も…柚ちゃんのこと好きだよ」
ズキュンッ…
「好きじゃなかったら、ドライブデートに誘ってないよ」
私はもう、マシンガンにでも撃ち抜かれたかのように、鼓動が大暴れしていた。
セイくんの匂い…
私は甘えるようにセイくんに寄り添った。
「じゃあ…ティンクル・ルリカとダーク・ロウが手を組むってことでいい?」
「あははっ。それやめてっ。恥ずかしいっ」
セイくんが耳元で笑う声が、とても心地よかった。




